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第421話(sideアゼル)

 鈍感なシャルが俺でもよくわからない変化に気付いたことにテンションが上がり、ついドヤ顔をする。  早くも効果があったみたいだな。  ククク……シャルが俺にもっとメロメロになる日も近いぜ……! 「まおちゃんみて〜。しゃるがかいてくれたにゃんこ!」 「あぁ? なんでこんな猫ばっかり、しかもなんで若干しょげてんだ?」  ニマニマとニヤけていると腕の中のタローが、猫のイラストが一面に描かれた画用紙を見せてきた。  しかしシャルが描いたらしいその猫が、なぜかみんなしょげている。  笑ってるんだが、耳がこう、やや倒れていた。  なんだってこんな猫を描いたんだ?  この画用紙は貰おう。  しょげ猫にご機嫌なタローを覚束なくあやしてやって、そーっと腕の中からおろした。  猫がたくさんで、俺は打って変わって若干不満だ。  だって俺は分類するとイヌ科だからな。  さり気なく画用紙を召喚魔法域にしまいながら、シャルに本当は猫派なのか問い詰めてやろうと、仏頂面で向き直る。  すると俺が機嫌を悪くしているからか、シャルは少し面白くないように、スネているような気がした。  ──ハッ! 駄目だ。  せっかく些細なことで妬かないよう、広い心で自分磨きをすると決めたのに、ここで猫にすら嫉妬するなんてバレたらコトじゃねぇか。  危ねえ、間一髪だ。  俺はフイッと顔をそらし「猫より俺のほうが可愛いだろうが、なんなら俺の毛皮で寝ろよ馬鹿野郎」と言うセリフをなんとか飲み込んだ。  大人だ。  俺は成長してるぜ……! 「う、」 「明日も早いからな。お前ら寝るぞ。さっさとベッドに上がりやがれ」 「はぁい〜」  大人対応をしてタローをせっつき、ベッドへ向かう。  その後ろで無言で顔を逸らされたシャルが、ガーンとショックを受けているとは、全く気が付かない俺だった。  明かりを消すと、いつも通りの三身一体スタイルでベッドに潜り込む。  川の字だぜ。  近頃暖かくなってきたので大きなタオルケットを被り、寝付きのいいタローはおやすみ三秒だ。  本当はシャルの言う川の字は、タローを真ん中にして眠るらしい。  でも俺はいつもシャルを抱きしめて眠っていたから、こうじゃないと違和感がある。  なので真ん中をシャルにするのは、仕方がないのだ。 「アゼル」  タローが眠ってから、不意に腹部に回る腕に手が触れ、静かに呼びかけられた。  不意打ちの接触に胸が高鳴る。  すぐに返事代わりに後頭部に擦りついた。  これはなんだ。ゴーサインか?  ゴーサインなのか?  タローがいるのにしてもいいのか。  うおぅ、効果がすげぇな。美容グッズ万歳だぜ……!  子供の情操教育の為にと禁欲生活を余儀なくされている俺は、当人に誘われては拒否できないし俺は悪くないので、内心ウキウキと抱きしめる。  だが、シャルは予想外の言葉を紡ぎ、俺の手に指を絡めて、指輪を指先で擦ってきた。 「俺はお前がなにか隠し事をしているんじゃないかと思うんだが、どうだ?」 「ンッ!?」  まさかなことを聞かれ、俺は喉の奥から変な声が出てしまう。  それは図星だったからだ。  ──ど、どこでバレたんだ!?  俺が〝来たれ魔界の女装っこ! 魔界一可愛い男は誰だ!? チキチキ☆女装男子グループ対決コンテスト! 〜ポロリもあるよ〜〟に出場するってことが……ッ!

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