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第428話
「それより、報告帰りに勝手に寄り道していることはわかったが……目的はなんなんだ?」
ここにいる理由と、記憶喪失事件の知られざる天界その後がわかって納得はしたが、なにがしたいのかわからず尋ねる。
「あぁそうだ、そうだね。いやたまたまタイムリーな話が聞こえたので、最後まで聞いていたのだが。君たち、女装コンテストに潜り込むんだろう? 私も混ぜてくれないかな。すこぶる愉快だ」
「いや女装して乗り込むのはシャルだけだっつだよッ! この俺がンな気色悪ィことするかよ! ふざけんな!」
「落ち着け、俺もしない」
するとそんな馬鹿げた答えが返ってきた。
リューオの不機嫌そうな返事にツッコミを入れるのは、忘れないぞ。
アゼルに清き一票を投じたいのと女装をしたいは、イコールではないのだ。
そこに行くのに必要なら辞さない構えだが、できれば避けたい。
グウェンちゃんはリューオに断固拒否されているというのに、なんのそのだ。
のんびりと微笑み、最早拒否しているのを聞いているのかいないのか、ジッと俺を見つめて話を続ける。
「妃よ……私の情報によると、コンテストはかわいさ審査と言うものと、バラエティと観客の煽りを兼ねた様々な催し物があるみたいだよ」
新情報を与えるグウェンちゃんは、いいのかい? とでも続きそうな語気だ。
俺はキョトンと首を傾げる。
催し物があるのは知らなかったが、なにが駄目なんだ?
「コンテストが盛り上がるのはいいことじゃないか。民衆が各々で企画し楽しむのは、魔界が平和な証だ。アゼルがあぁ見えて適当だとかどうでもいいだとか言いつつ、うまく国を治めているからな」
「あは! そうだとも。しかしその催し物はいわゆるポロリを狙った際どいものだとしたら……どうかな?」
「!」
「チーム対抗戦の競技は、綱渡りなんかもあるんだよ。ナイルゴウンの生足が下から丸見え、もっと言えば下着もチラリではないかな」
「!!」
「……嫌な予感がすンな、この展開」
「それに三人一組のコンテストだから、君の友人の陸軍長補佐官と空軍長補佐官もついて行ったらしくてね……。三人とも随分愛らしくなったとか。コンテスト会場には、男とその中間しかいない。当然下卑た目で見られると思うよ?」
「いけない、守ろう。女装してでも乗り込んで見張らなければ、アゼルとゼオとキャットが危ないぞっ」
「ほれ見たことかッ! ゼッテェそういうフザケた流れになると思ったわッ! なんで天王とコンテストに乗り込まなきゃなんねぇんだよアホがッ!」
リューオが自分の膝をペシンッと叩いて叫んだが、俺はそれどころじゃない。
なんてことだ、気が付かなかったぞ。
アゼルは女性ならちょっと困るくらいの長身で、着痩せするが引き締まった筋肉もある男らしさを損なわない美形だ。
そんなアゼルの女装では、男感を消し去ることはできないだろう。
だがしかし。
──何事もやるからには本気を出す負けず嫌いな性格から、魔王クオリティを発揮しているに決まっているじゃないか……!
「だから俺の期待通り生足で殺してくるなんて、ドヤ顔をしていたんだな……!」
俺はワナワナと震えて情けなく眉を八の字の垂らし、オロオロと焦る。
そんなことは期待してない。
アゼルはコンテストをバトルロワイヤルかなにかと、勘違いしているのかもしれないぞ。
そしてグループ対抗なる催し物があるのなら、恐らくそれに付き従うゼオとキャットも、相応のクオリティに仕立て上げられているはずだ。
ボーダーライン下には永久凍土でも、認めた主には付き従う。
そんなゼオなら、女装コンテストでの優勝なんて任務も無表情で淡々とこなすだろう。
容赦ない彼は、きっと見事に審査員を打ち取るに決まっている。
素直で明るく初なキャットなら、魔王であるアゼルに頼まれれば「はい俺で良ければ喜んで!」と笑顔で頷くのだ。
任務が優勝なら意気込んで、彼なりにかわいさを出す。
キャットはいいこだからな。
つまるところ、真面目に優勝を目指すハイクオリティの彼等は、女装男子を見る為に集まった魔族達に絡まれないともしれないわけだ。
い、一大事だぞ……!
全員が女装男子と言ってもユリスのような美少年趣味でもなければ、回避できない事案だ!
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