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第432話(sideゼオ)

『さあここまでで大半の競技が終了しました! それでは、お待ちかねの決戦前ポイント発表の時間です!』  そのアナウンスに、いくつかのグループに別れていたので生き残っていたチームや、意識を取り戻したチームが舞台上に上がる。  文字を表示する魔導具が壁に各チームのポイントを載せていくのを、全員が真剣に見つめた。  もちろん強制的にキャラ付されたゼオ以外の主と同僚も、その中に含まれている。  と言うかやたら馴染んでいるし、主は仁王立ちで勝ち誇った表情をしながら、ライバルの女装モンスター達と女性口調で話しているのだ。  腹をくくったゼオにとっては、それすら淡々と受け入れられた。  もうさっさと優勝して、あの居心地のいい男に主を誰よりも一番かわいいと言ってもらえれば、それでいい。  そして素早く帰りたい。  趣味じゃなさすぎて帰りたい。 「やだもぉ〜アゼリーヌのせいでアタシ達ドンケツじゃないのぉ! ちょっとかわいいからって、いい気にならないでよね!」 「なに言ってんだ、俺が一番かわいいのよ! 見なさい、一番じゃない。このままラストも行かせてもらうわ!」 「あら聞き捨てならないわねぇ! この魔バラの女帝ピンキーちゃんのチーム〝益荒男(ますらお)ピーチ〟が肉薄してンの忘れんじゃないわよぉっ!」 「あらピンキー? 暫定二位の分際でこの俺に楯突こうっての? ふふーん、お前の武器はその盛り上がった胸筋だけでしょッ! 一昨日来やがれ!」 「キィィーッ! 言ってくれるじゃないアバズレチャイナッ! その程度の筋肉でこのガチムチと一部の美少年を愛する花園のバラ達がなびくと思ったら、大間違いだワッ! アンタの生足よりアタシの雄っぱいのほうがラブリーだと証明してアゲル!」  一応危険がないかゼオが聞き耳を立てていると、まさかの女の闘いが始まっている。男だが。  進んでいく決戦前発表の結果を見ながら主と宣戦布告をし合う、ピンキーと呼ばれたデビルコンガの魔族が、中指を立てる主に鼻息荒く食って掛かった。  鍛えられた筋肉を纏ってはいるが、全体的に細身の主と違い、こちらはニメートル近い筋骨隆々の金髪刈り上げイケメンマッチョだ。  マッチョは真っ赤なルージュに、きらびやかな宝石があしらわれた真っ赤なレースドレスを、パツンッと着こなしている。  大きく開いた胸元からは、ドレスが引き裂けそうなほどガッチリムッチリの胸筋が見せつけられていた。  ポイントを入れた観客からは「揉みたい」「抱きしめられたい」「圧死したい」と恐ろしい性癖の嵐だ。  彼女に比べると主が小柄に見えてしまうくらいの、見事な分厚い胸板が持ち味らしい。  そして普段あまり表立ってキャーキャー言われていない為、主は基本、本気で自分はモテないと思っていた。  ところが観客に好きだ好きだと拝まれることで、満更でもない様子なのだ。  かわいいという自信を得て浮かれ、サービスショットをかます主の生足は、非常に残念ながら、万人受けはしている。  だがそれだけだ。  足フェチガチ勢でないかぎり、誰もが一定の好感を持つ程度。  つまりあちらは、主に比べ、ガッツリマニアのコアな票を不動のモノにしているのだ。  おもに胸筋──いわゆる雄っぱいを好む、雄っぱいフェチ達に。  雄っぱい派に美脚で勝つのは、なかなか難しいだろう。  太古の昔から胸か足かの議論は男の間で白熱していたし、流石の主も言い負かすことはできまい。 (足が胸か……歳を食って締りが落ち始めた頃の体が一番イイんですけどね)  なんて考えるゼオのような屈折した男には、どちらもどうでもいい話だが。  正直どちらもかわいくはないので、さっさと話を終わらせて最終競技に移行したい。  ゼオの思いを知らない主は、自慢の胸元を寄せるピンキーに怯むことなく、むしろ哀れみを持った余裕の笑みで鼻を鳴らした。 「フンッ! 雄っぱいのなにが重要なのかわかってないにわかに、この俺が負けるわけないわ! 大きさなんて取るに足らないことなのよビッチゴリラ!」 「いやぁんっ! ちょっとどういうことぉ!? アンタ気になるじゃないっ! ナニ!? はち切れんばかりの胸の他に、重要なのはなんだって言うの!?」

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