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第437話
「さて、行くか」
意気込みながらガチャ、と扉を開いて中に入ると、会場内はラストステージに熱狂していた。
観客達が一心に舞台の上を見つめ、野次や歓声を上げている。かなり野太い。
ステージでは競技によって上位五チームまで絞られた参加者達が、優勝目指して最後の個別アピールを行っているようだ。
五位から順に自己紹介し、モデルショーのように中央の花道を歩く。
そして観客のど真ん中で決めポーズや決め台詞で、魅力をアピールするのだ。
舞台の近くは人が多すぎて近づけず、俺は花道の終わり辺りにひっそりと待機することにした。
張り込みみたいだ。楽しい。
こちらシャル。所定の位置についた。指示を頼む。……なんてな?
内心浮かれながら、アゼル達の姿を探す。
遠くてよく見えないが、アゼル達は一番端にいた。
なんと、チーム戦は一位なのか。
花道を歩くランキング上位の人達は、みんながそれぞれ整った顔立ちをしている。
ガッチリな美筋肉をしていたり、花も恥じらう美少年だったり、タイプは違えど綺麗でかわいい。
その中でアゼル達が一位なのは、観客達に俺の好きな人達が認められているようで、とても嬉しい。
『さぁさぁ! トップファイブグループによる起死回生個人アピールタイムは、大いに盛り上がっております! 暫定二位のチーム益荒男ピーチの皆様、お一人ずつ順番にアピールをどうぞ!』
実況改め司会に促され、次に進み出てきたのは二位のチームの一員だ。
益荒男ピーチ。
チーム名のパンチが効きすぎている。忘れない名前だぞ。
「はぁ〜いっ! あたしアメリア! 趣味は自分よりガタイのいい男を組み敷くこと、特技は睡眠姦での前立腺調教っ! 羽ありにゃんこな夢魔のアルプ魔族よん! 猫耳美少女だからって舐めていたら、ブチ犯すニャぁン?」
「「「ウオオオオオオオッ!!」」」
一番手の子は明るい裏声でウィンクをしながらポーズを取り、花道をぴょこぴょこ可愛らしく歩いてきた。
背中から生える小さな翼と、肉球が魅力的な手足と猫耳が愛らしい、アルプ魔族のアメリアさんだ。
膝上丈のミニスカに体にフィットしたトップスと、ツインテールがよく似合っている。
男とは思えないほどの美少女だ。
ツリ目で澄まし顔のユリスとはまた違う丸目でニコニコした彼女に、観客の歓声から男な部分が滲み出ていた。
だがセリフは全くかわいくない。
みんななんというか、掘られたいようだ。
アメリアが手を振りながら花道の一番奥にやってくると、俺の大体目の前になった。
「あたしに投票してくれたら、いい夢見せてア・ゲ・ル」
チュッとトドメに投げキッス。
瞬間沸騰で沸き立つ会場内。
観客が花道にポイント代わりのコインを投げ込むと、スタッフが大きなトンボで回収した。
集計すると、舞台の壁に表示されている合計ポイントが変動する。
舞台に戻ったアメリアは、一位のアゼル達にドヤ顔だ。
返答はアゼルとキャットが無言で揃って中指を立て、ゼオは微動だにしていない。
俺はといえば投票の仕方がわかったので、どうやってコインを人に当てないように全部投げ込もうかと、しばし思案中である。
(うぅん……上手投げか、下手投げか、それとも水平投げか……)
いずれにせよ完璧に、かつさり気なく清き一票を投じなければならない。
それもアゼルにバレないようにだ。
ふふふ、これは重大任務だな。
お察しの通り、アゼルが出演する初めてのイベントと言うことで、俺は些か浮かれていた。
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