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第438話
そうこうするうちに益荒男ピーチの個性的なメンツが出揃い、アピールタイムが終わった。
二位のチームだけあって元々人気があり、ホームグラウンドなのか、最終的にアゼル達のチームのポイントを抜いている。
特にピンキーと言う、あのアゼルと戦っていたらしい胸派のオカ魔さんは、圧巻だった。
ボディビルダー並の鋼の肉体に赤いドレスを纏い挑発的にポージングをキメる彼女は、まさにアマゾネス。
堀の深いハリウッドスターのようなイケメンなのに、女性口調なのは驚きだ。
俺としてはあぁ言う装甲、じゃない。筋肉に憧れがあるので、筋トレ方法を聞いてみたい。
なかなか筋肉が大きくならないのが、密かな悩みだからな……。
魔界にはプロテインなんてないから困る。
『流石は魔界のバラ園の女帝、ピンキーさん率いる益荒男ピーチ! これまでの競技で開いた点差を、逆転させてしまいましたッ! こうなってはトリの暫定一位KMwithF、ここで挽回を図らなければいけません……ッ! 実に熱い展開ですね! ではではどうぞお三方、お願いしますッ!』
──このアピールでの得点で、優勝チームが決まる。
胸が熱くなる展開に会場も司会も熱狂の悲鳴を上げ、舞台から進み出たアゼル、キャット、ゼオの三人に、期待の視線が突き刺さった。
待ってましたな気分の俺だ。
チーム名の詳細は不明なので、今度聞くことにした。
さてさて。
アゼルを真ん中に並んだ三人は、誰からアピールを始めるのだろうか。
俺も心なしかワクワクとしながら、今か今かと待っていると、三人は不意に頭を突き合わせる。
どうしたんだろう。
円陣を組むのか?
「せーの、最初はグー」
「じゃん」「けんッ」「ポォンッ!」
「ま、負けた……ッ!?」
「うし。せーの、最初はグー」
「じゃん、けん」「ポォンッ!」
「…………」
「ククク。それじゃあ一番手はキャシー、二番手はゼオにゃーね。アタシはトリよ」
「「「ジャンケン!?」」」
ただ順番を決めていただけだった。
ズコーッ! と観客が見事にずっこけたが、三人は全く動じていない。
魔界の幹部というのは灰汁が強く、非常にゴーイングマイウェイな人達だからな。
むしろ俺は和む。
待ち時間に決めなかったんだな、うっかりさん達め。
厳正なるジャンケンの結果、一番手はキャットになったようだ。
遠目だとキャットはなんだかゆるふわ系という感じの衣装を着ていて、男らしい体のラインはうまく隠していた。
そうされると三人の中で一番小柄(と言っても人間平均より高いが)なキャットなので、とても愛らしい。
キャットは各チーム一つずつ用意されているらしい、首に巻く拡声の魔導具をつける。
そして緩いウェーブのかかった髪を揺らして、自慢の翼をバサッと広げた。
「あたしはキャシー。趣味は飛行訓練、特技は自陣守護。種族は見てわかるでしょ? 目玉が節穴の愚物は聞きなさい! 空の守護者グリフォール魔族よ! あたしに空中戦で勝ったら、なんでもしてあげるワ!」
堂々たる振る舞いでそう言い切ったキャットが花道を歩いていくと、大きな歓声が起こる。
「いやぁんキャシーったら大胆っ、空中プレイなんて、空飛ぶ魔族の最高プレイじゃないっ」
「空中戦、意味深な発言よね……これは夜戦の誘いに決まってるワ!」
「やんだぁっ! あんな純情そうなふわふわっこが上級者向けのプレイを誘うって、もおたまんないわよぉ~っ!」
空中戦。夜戦。
オカ魔達にかかれば、どんな言葉も意味深な下ネタらしい。
観客の相変わらずやや変態じみた歓声を受けても、キャットは気にした様子がない。
近づいてくると姿がよく見えたので、キャットの雄姿をちゃんと見ようと、目を凝らす。
「ん? んん」
化粧をしているキャットはすこぶるかわいかったが、ユリスのようなツンとしたすまし顔だった。
なるほど。
キャットは我が強いアゼルとゼオと一緒で、緊張しっぱなしらしい。
ツンデレとはまた違う例の性分が、しっかりと出てしまっているみたいだな。
真意を知っていると、それはそれでかわいいぞ。純情爽やか青年のツンだ。
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