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第448話(sideタロー)

「りゅーじんさん、ごめんなさい。やっぱりわたしは、いかないでいます。まいごになったらうごいちゃだめって、しらないひとにもついていっちゃだめっていわれてるの」 「え?」  自分でどうするか考えたことをお話して、私は優しいりゅーじんさんに、ぺこりと頭を下げる。  りゅーじんさんは驚いて、少し機嫌が悪くなったような気がしたけれど、頭を下げていた私は気がつかなかった。  大丈夫だよね。  きっとこれでいいと思う。  だけど自信は、ちっともない。  私が間違っても失うものはなくて、いつだって優しいみんなが正解するまで、何度もえらばせてくれていた。  今は一人だ。  生まれてすぐでも、魔族は一人でも強くないといけない。 (私はせーれー族だけど、まおちゃんは魔族の王様で、私はまおちゃんの娘だから、一人前にならなきゃね!)  強くなるため、ぐっと手を握る。  りゅーじんさんはがどくんを知っていても、私はりゅーじんさんを知らない。  そして悪い人じゃないと思うけれど、いい人だという理由も知らない。  自分で考えて、私は知らない人のりゅーじんさんより、しゃるの言いつけを守ることにしたんだ。 (……本当は寂しくて泣いちゃいそうだから、ついていって早くがどくんに会いたいよう……)  そう思ってめしょ、としょんぼりするけれど、それじゃあいけない。  ダメダメ、我慢、我慢だね。  私はがっこうにいくんだ。  一人でできるようにならなきゃね。ううう、でも寂しい、ううう……。  私がめそめそしそうになっていると、りゅーじんさんが私の頭にぽんと優しく触れて、私は頭をあげる。  りゅーじんさんは私を見て、ニコッと笑った。 「そっかあ、偉いなー。でも大丈夫さ。俺はガドくんの友達なんだ。聞いたことない? アイツは昔、俺たちリンドブルムの村に預けられていたんだよ。ガドくんはリンドブルムよりも特別強い竜だったから、あんなに早く出世して、長官になってさ? 俺たちは鼻が高い」 「おともだち……がどくんのおともだちなの?」 「そう。ないしょにしてたけど、実は友達だからタローちゃんに声をかけたんだぜ。でなきゃ迷子になってすぐに誰かが声をかけてくるなんて、魔界じゃあんまりないだろうよ」  はにかみながら頬を指先でかくりゅーじんさんは、嘘をついてるように見えない。  ──がどくんのおともだち……。  そっか、そっかあ。  だから私がうずくまって、すぐに声をかけてくれたんだ。  がどくんのお友達ということは、悪い人じゃない。ぜったいだいじょうぶ!  私は大丈夫という確信があって、途端に顔をニコニコに変えた。  だってがどくんはとっても強くてかっこいいくて、そしてなにより、いい人を見つけるのが上手なんだよ。  がどくんはまおちゃんのツンツンも、ちっとも効かない。  しゃるを人間だからって貶したりしない。  はじめましてでも大丈夫ってわかる、素敵ないい人センサーを持っている。  いい人なら付いて行ってもよくて、家族のおともだちは知らない人じゃない。  私はぴょんと立ち上がって、りゅーじんさんに明るく笑いかけた。  しゃるのいいつけも守れるし、一人ぼっちじゃなくなるし、がどくんにも会える。  これは素敵なお話! 「りゅーじんさん、わたしついていくよっ。ええと、ちゃんということをききます。かってにはなれたりしません。だから……がどくんのところに、つれていってくださいっ」  もう一度深く頭を下げると、りゅーじんさんは「いいこだね」と笑ってくれた。  そしてじっとしたまま静かにするように言いつけると、私を抱き上げて翼を広げ、大空に飛び上がる。  がどくん、会えるかな。  私、ごめんねってするからね。  もう考えなしに動かないでちゃんといいこにするから、またぐるぐるしてくれると嬉しいな。  りゅーじんさんの腕の中で、私はがどくんに会えるのを心待ちに、丸くなった。

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