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第465話
そんな親子フォーメーションの俺達を、見守る銀の竜人ことガド。
すぐそばの木の幹に背を預けて腕を組み、ニマニマとピースを見せている。
そのポーズはお前、M字前髪のサイヤな彼じゃないか。
未来に帰る息子を見送る、伝説のデレシーンだ。
今回の危機的状況を助けてくれたアゼルに気を利かせるのはいいが、今度は俺が危機的状況になってしまうぞ。
振り払うことはできないので説得しつつ、俺は時折指先を震わせて、カプカプの猛攻に耐える。
そのうち、タローがアゼルの真似をして俺の髪をかじり出した。
こらこら。
毎日シャンプーをして綺麗にしているけれど、お父さんの髪を食べてはいけない。
「ン……。……? そういえばタロー、どうして俺が隠密中……えっと、迎えに来た時、俺の姿が見えたんだ?」
「むふぅ? ひゃうのことみえふの、いふもふぁむぉ〜」
「俺のことが見えるのはいつものことなんだな。でもあの時はシャル、ないないにしてたんだぞ? ……ぅ、ん、アゼル、もう駄目」
俺の髪を千切らないまま、口の中でもぐもぐ食んでいるタローの言葉を聞きとって答える。
そしてそろそろ本格的に困ったことになるのでアゼルに待ったをかけると、アゼルはガン、とショックを受けた。
「ぷぁ、ぐ……せっかくの公然のチャンスがっ……! ご、ゴホン。タロー、お前、スキル効かねぇのか?」
「ふひぃぅ〜? むぅぅ……?」
「うーん。そうだ、アゼルのことは怖いか?」
「まうぉひゃんふぉあふなむぃ〜!」
「俺のことは怖くねぇのか……常時威圧が効いてねぇってわけだな。まぁ俺が黙ってなけりゃ、多少緩和できるけどよ」
「ということは、他者からのスキルが無効、若しくは軽減のスキルでも持っているのかもな。今度、そんな力のある精霊族について調べてみよう」
「そうだな……」
「クックック、と言うかお前らはスッゲェ解読力してんなァ〜」
俺に続いてタローの言葉を読み取り答えるアゼルに、ガドは愉快そうに笑う。
まぁ子供の言うことはいつも謎だからな。
解読しないと埒が明かない。それが親と言うものだ。
じゃなくて、それよりもタローにスキルが効かないほうが大変である。
隠密スキルを使っている間は気配や姿が消えるんだが、タローは気がついていたのが気になっていたんだ。
そういうスキルは聞いたことがない。
風呂上がりに髪を乾かす乾燥の魔法が効くので、魔法は効くと思うのだがな。
今は見たところ怪我はないし、トラウマもないけれど……。
それが気になったので、帰ったら魔導具での精密検査をユリスに依頼しようか。
俺の指をようやく離したアゼルが仏頂面でタローの頬をつついたり、前髪を持ち上げてパサッと落としたり様子を見ている。
なるほど、心配らしい。
タローは膨らませた頬をアゼルに指で潰され、キャッキャと笑ってはまた頬をふくらませる。
アゼルはそれをもう一度潰す。
ふむ。俺の肩の上で、なんだか愉快な遊びをしているな。
気持ちぷくっと俺も頬をふくらませてみる。
「アホか」
「どーんっ」
「ほいさ」
「うみゅ」
すると両サイドから小さくて柔らかな指と、骨ばった長く滑らかな指が伸び、極めつけに鼻の先を爪を引っ込めた硬い指先が潰した。
言わずもがな、タローとアゼル、更に目の前にやってきたガドである。
こういう時は息ぴったりだな、お前達は。
仲良しさんめ。
「今度は俺が潰そうか」
──こうして。
しばらくツンツンと互いの頬をつつき合い、赤い空の下、ほのぼのと騒動は幕を閉じたのだった。
余談だが、俺に肩車をされるタローを見て、ガドが「俺もされたいぜィ」と言う。
唐突に思いついたらしい。
赴くままにアゼルの肩に飛び乗って、仲良く四人肩車体勢でしばし歩いたのは、四人だけの秘密だ。
土台になった俺とアゼルはお出かけ気分で手を繋いだのだが、もちろん、左手で繋いだ俺である。
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