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第505話※微
牙が擦れると、皮膚が弱い急所は僅かに痛んだ。
食べられそうだと危惧し、オドオドとビクついてしまう。
けれど柔らかだった陰茎は次第に芯を持ち、屹立し始める。
(もしかして俺という男は、いろいろと手遅れすぎやしないか……?)
アゼルの唾液以外の湿りを帯びている自身が、もっとと強請っているかのように感じた。
「ふ、ぅ、駄目だ、駄目……っ、アゼル……っ、んんっ……」
腹筋の要領で上体を起こし、アゼルの頭を抱えて、痛くないように毛皮を引っ張りながら訴える。
これ以上感じてしまうと、後戻りはできなくなってしまう。
大腿を伝う淫液が、クチュ、と警告音を鳴らしている。
「姿を戻したら、シてもいいと言っているのに……っく、そこを舐めるのは、やめてくれ……ぁ、あ……っ」
のしかかるように太ももを押さえつけられ、足を閉じることが叶わず、だ。
俺は抱えたアゼルのモフモフな頭に額を擦り付け、懇願することしかできない。
「ウォンッ、ゥウ」
「っあ……っ! 本当にそれは駄目なやつだっ、あっ、よ、よーしよーしっ? アゼルはいい子だから、そこは……っ、あ、まっ」
「アォンッ」
(なんで俺が駄目だと言えば言う程機嫌が良くなるんだ、この困ったさんは……!)
よくわからないが、アルコールでバグったミラクル思考回路で、駄目をもっとと受け取ったらしい。
いや、それはいつものことだったかな。
うん。だったかもしれない。
とにかく鼻先で軽く俺の尻を持ち上げるアゼルの舌は、あろうことか割れ目の奥を探り始めた。
「そ、こ……っん、そこ汚いぞ……!? 恥ずかしい、あ、アゼルぅ……っ」
カァァ……ッ、と頬を赤く染めた俺は、目を剥いて驚いた。
いやわかる。
分かりたくないがわかる。
狼化したアゼルが、そのままいつも通りに俺の後ろを解せるわけがない。
そうなれば舌を使うのは野生のイヌ科とてそうだろう。本能だ。
結果──アニリングスというあれである。
(は、恥ずかし過ぎる……ッ!)
そりゃあ風呂には入ったばかりなので、体は綺麗に洗っていた。そこも綺麗だ。
けれど、そういう問題じゃない。
正直に言うといくらアゼル相手でも、そこを舐められるのは、少し覚悟を決めないといけなくなる。
かなり本気だぞ。
なぜなら、〝そこを舐められて感じる自分が、すこぶるふしだらな男のようで、恥ずかしい!〟という理由に尽きるのである。
手遅れだということは言いっこなしだ。
俺は変態だが、まだ手遅れではない。
……と、思っている。
『んー? 俺は悪くねぇ。シャルがいいっていったから、いいって……う、嬉しい〜っ、シャル、好きだ、好きぃ〜』
「ん、ふっ……こら、そこを舐められて感じるようになって、ハマったらどうしてくれるんだ……!? あっ」
『うぁ、もっと舐めたい。シャルはどこでもおいしいぜ。とってもうまい。うまいの好きだ。好きだ〜、この世で一番シャルがおいしい。う〜』
「んんん……ッアゼル、お前はできる狼だ。俺の自慢の旦那さんだっ。だ、だからな? 頼むからそれは諦め、おあっ」
『! ふへへ、それはそうだろぉ? お前の俺だぜ、へへへ……できるおおかみの俺は、ちゃあんとじゅんびをする。だっておれは、自慢のだんなさんだからな。シャルを傷つけたりしない。痛くなんて、ぜったいしない、な』
「ぐ、言ってることがわからんが待て待てっ、俺を引っくり返してなにを……っあっ、んふ、うぅ〜っ」
必死の宥める戦法も虚しく、ふわふわと浮かぶ闇魔力に足首を捕らえられた。
そしてそのまま、グッと赤子がおしめを変えるようなポーズで、腰を上げさせられる。
「ぁ、っう、あんまり見ないでくれ……っ」
俺の秘所が丸見えになるこの体勢に、俺は耳まで赤くなった。
これが既に恥ずかしい。
だってあ、明るいんだぞっ? 洗面所。
しかしながら、アゼルの闇魔力による拘束を引き剥がせた試しがない。
俺はあっさり両足首を自分の耳の横にまで持ってこさせられ、体を折りたたまれる。
そして腕は「はいはいわかってますよー」とでも言われそうな様子で、フサフサの前足で床のマットに押し付けられた。
これは逃げられない。大問題だ。
『かわいい、シャル、好きー……』
「ンぅ……っ、うひ、これ駄目、だって、言ってるだろう……っ? 恥ずかしい、久しぶりに本気で恥ずかしい……っ」
もう口以外の抵抗を全て封じられ、まな板の上の鯉同然だ。
剥き出しの後孔を狼を大きな舌が唾液で湿らせながら、大胆にあやし始める。
舌先で窄まりをつつかれたかと思えば、弄ぶ様に先端が中に入り込むのだ。
「んぁ……っ」
羞恥と初めて感じる感覚に、ぎゅっと目を閉じて、襲い来る刺激にこらえ続けた。
今の俺は、それはもう情けない顔をしているだろう。
口で、それも狼形態で解されるなんて、嫌じゃなくて、無理だ。羞恥プレイすぎる。
アゼルは浅く入口に舌を抽挿させ、キツイ輪を拡げながら、時折会陰、裏筋を巻き取って扱かれた。
尿道口から伝う淫液を舐めとられ、いつもと同じように、アゼルは丁寧に俺の狭い肉穴を拡張してくれる。
そんな気遣いと、姿が変わっても酒を飲んでもアゼルだな、なんて実感すると、胸がキュン、と疼く。
こうなるとどうしたって感じてしまって、呆れるやら泣きたいやら。
自分の尻から腹をしとどに濡らす透明な液体が、アゼルの唾液なのか、自分の淫液なのか、わからない。
ただ〝狼相手に全力で感じている自分〟という状況に、両手で顔を覆って隠れてしまいたくなった。
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