509 / 615

第509話※

「っあ、ッ」  もどかしい心地に気を取られているうちに、カリッ、と頚動脈を甘噛みして、傷がつかない程度に急かしてくる。  そこを舐めて慰めてから、舌は更に下へ移動し、胸元の飾りを舌先でつついた。  上目遣いに懇願しながら「なぁ、しゃる」と求めてくるアゼルは、いっそあざといぐらいだ。  うう、素直なお前は恐ろしいな。  普段はかっこいいんだが、かわいさが猛威を奮っている。 「んっ、こくは、く……。ぁっ……アゼル、好き、だ……俺と付き合ってく、ださい……?」 「! ふふ、ふへへ……いいぜ。ずっとずぅっと、どこにでも、俺は付き合う……なぁ〜? シャル、ずっとおれだけ、な、嬉しい……」 「ぅあ……ッ! ぁ、あ、んっ、仕方のないやつだな、もう……っ」  そう言うところも好きなのだ。  けれど酔っていても、姿が変わっていても、俺はいつもお前の手のひらの上で転がされている気分でもあった。  ご満悦なアゼルがにこにこと俺の体に擦り付き、激しく熟れた肉穴を犯し始める。  思考力を削がれ、熱に浮かされながらも、もう好きにしてくれと前向きな降参をした。  俺がアゼルを振り回せることなんて、呪われでもしないとない。  そういうものだ。  笑って許せば、いつも通り。  言葉と表情だけは間の抜けた素直なものだが、アゼルは手馴れた手管で俺の体を揺さぶり、舐め、甘く噛み、触れ、擦る。 「あ、あっ、ん、ぁ……っ」  繰り返し前立腺をじゃれつくように突かれるだけで、うわ言じみた声が漏れた。  言葉らしい言葉をあまり言えなくなるほど、俺の肢体は蕩かされていく。  脳髄が痺れ、理性より本能が勝った。  ただ与えられる快感に浸っていたい衝動。  せっかく風呂に入ったのに、あちこちが汗や淫液で汚れ、ベタベタのドロドロだ。  またシャワーを浴びないといけないが、それでもやめたくない、と思ってしまう。 「やらしぃシャルの中、感じてるだろ……? お前のここ、ぎゅうぎゅう動いて、触ったら、鳴いて、」 「ぁっ、うぁ……そ、こまで素直に、言わなくていい、っひ、ん……っ」 「んー……背中擦られながら、噛まれて、突かれるの、好きなシャル。んぅ……おれしってる……」 「っく、ぅ……っ」 「でも顔を見ながら抱きてぇの……なー……シャルは激しいほうが好きで、背中側から腹側に突く角度が好きで、俺に舐められると、ゾクゾクする、へんたい。すけべ」 (アゼルはいつもそんなことを考えて俺を抱いていたのか……!)  思ったことは口に出す素直モードのアゼルは、俺の好みを反芻しながらトントンと奥を小突いた。  どんな体位ややり方でも感じるように、開発されている。  だけどその中で好みの角度も、テンポも、自分の体の味を感じられると興奮する性質も、すっかり把握されていた。  わかってはいたが本人の口から説明されると、俺は羞恥で焼け焦げてしまいそうな熱に炙られるのだ。 「ひっ、ンぁ……っ」  居心地悪く身じろぐと、アゼルは逃がさないとばかりに強く突き上げた。  受け入れることに慣れた体は、無意識にでも奥へ奥へと誘い込むようにうねる。  熱く柔らかく包み込む内壁から快感を得て、背筋がビクン、としなった。 「あっ、あう、あ、ひぁ」 「シャル、きもちぃか? 俺、じょうずか? 俺が一番だろ……? しゃる、なぁ、いい匂い、しゃる……」 「ぁう……っん、あ……イイ、そこ……っ、ん、うん、アゼルが、一番だ、っ……」 「はっ……う、うれしい、シャル好き、かわいい、だいすきだぜ。よかった、ふへへ、俺もだいすきだ……っ」 「ひぁっ……あ、そんな、したら……っイ、く……っ」  ズチュッ、と粘着質な音と共に一際強く中を穿たれ、限界が近い屹立が熱く脈打つ。  思うがままを口に出すアゼルは、ひたすらに「好き」「かわいい」「嬉しい」を舌っ足らずに伝え、俺の名前を呼んで甘える。  喉を鳴らして首筋や胸に吸い付くたび、肌が赤く色づいた。  全身に散らされる所有印。  迂闊に告白をされた俺を素面のアゼルが咎め、俺のものだろ、と子犬の裏から叱っているようだ。  快楽の波にさらわれたまま、体内を犯される強い刺激に、頭を振って身悶える。  粘膜同士が擦れるグチュ、と言う水音や肌同士がぶつかる破裂音。  耳朶を舐る淫猥な音と混ざる自分の嬌声が、香りと共に五感を犯し──もう耐えられない。 「シャル、おれえらいから、もっと褒めて……俺は、お前のためになんでも、できる」 「ンッ、ん、んぁ……ッ!」  嬉しげに俺への献身を主張するアゼルが、埋め込まれていた怒張をギリギリまで引き抜き、奥深くまで一息に貫いた。  不意を突いた激しい突き上げに、ギュウ、とキツく襞が収縮する。  足先を猫脚のように丸めて、筋肉を大きくしならせた。限界だ。 「イク、イッ、っあぁぁ……っ!」  一瞬の閃光の後、意識が戻ると共に、ドロ……、と自分の腹を汚す白濁液を感じた。  弛緩する肢体とは裏腹にドクドクと精液を吐き出す自身が、絶頂をありありと物語る。  けれど余韻に浸る間もなく、熱が引く前に再び再開される抽挿が、官能を掻き立てた。 「んぁ、あ、ぁ」 「んん〜、ん〜ふふ」  ──うん。明日は、襟まできっちり閉まるシャツを着よう。  俺に褒めてもらう為にと頑張るアゼルに、ネクストラウンドを追加されながら、内心でぼやく。  そっと明日の服装を、禁欲的なガードに振ると決めた俺だった。  毎度これでは俺の身が持たないので、やっぱりアゼルにお酒は厳禁だな。

ともだちにシェアしよう!