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十五皿目 正論論破愛情論(sideアマダ)
それは漠然とした確信だった。
〝自分は誰にも愛されない〟
根拠なんて大層なもの。
なんのことはない。自分ですら自分を愛していないからだ。
国を代表する四つの大貴族のうち、一つの家に生まれた自分。
いつもその四家の中から王を決める種族だから、強制的に王座の争奪戦に参加させられた。
なりたくないわけでも、なりたいわけでもない。なあなあで継承権を持て余し、日々を生きる。
霊力だけは強かったから、司祭にはなれた。
自己主張が苦手なその頃の自分はいつもオドオドとしていて、他の神殿の聖職者たちには陰口を言われていたが、自分の騎士たちは守ってくれた。
ひと握りでも味方がいるなら、耐えられる。
けれど俯いて暮らすのが、癖になった。
みてくれや家柄で愛してくれる者はいても、自分そのものを愛しているわけじゃない。
言い寄ってくるたくさんの人と触れ合って、そのたびになんだか虚しくなった。
自由な種族だから短期的な関係でも相手は尽きないが、その中に本気で自分を愛してくれる人はいないだろう。
薄っぺらい笑みを浮かべて、刹那的な愛を求める。
なんとなく王の候補として学び、なんとなく司祭を務める。
まるでたゆたう水そのもののようだ。
騎士達や親しい者は自傷するようなその生き方を心配してくれて、酷く自己嫌悪に駆られた。
だから、自分のことは大嫌いだ。
決して愛してなんてやれない。そして愛されはしない。愛されたい だけ。
『かわいげ満載の拗ね方だな』
『え……?』
けれどその王は、そんな自分を懐かしそうな瞳で見つめる。
司祭として他国にやってきてまで自分の在り方に迷い、月を眺めて泣いていた自分。
それをたまたま見つけ出してしまった彼は、されど咎めず、ただ黙って話を聞いてくれた。
そして長い身の上話を聞いた上で、返ってきた言葉が上記である。
誰からも愛されないと嘆く男──アマダは本気で悲しんでいるのだが、その悩みごとどこか子ども扱いをするような言い方だ。
めそめそと泣いているアマダを慰めもせず寄り添いもせず、しかし冷たくもない不思議な王。
王は言った。
自分はアマダの求める愛──恋情が、わからないと。
だから嘆き悲しみ俯くアマダに、欲しいものを与えてやることはできないと。
アマダの言う本当の愛がなんなのか。
ありのままの自分を曝け出してもし愛されたのならば、それは本当の愛なのではないのか?
では偽物の愛とは?
仮面を被って流されて生きているアマダを愛するものがそうなのなら、矛盾しているではないか。
きっとこの認識は違っているのだろうが、それすらも曖昧でわからない。
王には恋情がわからない。
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このページは五ヶ月間毎日更新を停止するおしらせをしていたページなので、リアクションの数が合算されています(土下座)
ページをまるごと削除するとその後のページタイトルが全てズレる仕様であることと、再開時に内容を消して続きを投稿すると明記していたため、そのまま投稿下しました!
正直に言うと、いつの間にやらバグかと思う数字になっていたので楽しくなってきてしまい、まあいいか! と思ってしまいました(焼き土下座)
一発殴られる覚悟はできている。さあ私を殴ってry(ここで文字は途切れている)
木樫
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