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第200話(sideリューオ)✽
「だから昨日の夜俺が嫉妬して拗ねて我儘言った時も、付き合ってあんなンぅ」「わかった!マジでわかったからもう勘弁してくれ長ェんだわ!」
俺が耐えきれずに手を突き出して口をふさぐと、魔王はまだまだ語りたりなさそうに、ブスッと不貞腐れた。
不服そうにすんじゃねぇ。
俺はだいッッッッぶ我慢しただろうが。
はぁ〜……だから長くなるって察したのに、俺ってやつはなんで自分から無駄にポンコツスイッチをよォ……ッ!
柔らかな唇から手を離し、自分の額に当てて呆れ返る。
それ全部覚えてる魔王もどんだけガチなんだよって話だしな。
……でも惚気のおかげで、コイツ等みたいにうまくいかねぇ理由は……流石に、馬鹿な俺でもわかった。
付き合う前でもシャルは魔王を尊重していたんだ。
だから怒って無体を働いたらしい魔王がもうだめになっても、「大丈夫」って言葉を信じさせられたんだと思う。
俺はシャルの立ち位置だから、愛しているなら根気よく相手に合わせるべきだった。
押せば押すほど逃げていくユリスに合わせて、待ってやる優しさが必要だった。
好きだと言って、それに答えてもらうことしか考えてなくて……それが簡単にできないなんて心の話は、聞いてなかったんだ。
「俺は臆病だから未だに疑いそうになるぜ。でも不安の芽は、シャルが察して逐一潰してくれてんだよ」
「オウ……そう、だよな。俺と話す時も、シャルのやつはいつも魔王のことを考えてやがるよ」
「はっ!?な、えっ……!んんッ……、兎に角お前、いつも強気でなんでも物申すユリスが弱気になったのは、今回が初めてじゃねぇか。俺にだってそうはならなかった。お前だから怖くなってるんだ。たった一度悲しませただけで、もう怖気づくのか?」
「冗談じゃねぇ。俺だって時間が経つたびに……ユリスに好きだと言う時には、心臓がイテェんだよ」
胸に手を当てギュッと握る。
──初めは確かに、見た目だった。
可愛いユリスがツンツンしているところがイイって思って、好みドストライクだったから口説き始めたんだ。
それは魔王やシャルの様な、引き離されると生きていけないような、決死の恋ではなかっただろう。
心を砕いて溶かし雫にして、目玉から捨てるような、あんな涙。
流せるような純粋な恋ではなかっただろう。
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