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3:王子、来たる

「ターリャ様、そろそろ王宮に到着するそうですよ」 執事の言葉を聞きながら、ターリャは大きなため息を吐いた。もう少しで、自分の嫌いな者達と会わなければと思うと気が滅入る。何せ、ターリャが今会いに行こうとしているのは、この世で1番嫌いな者達なのだから。 「……ターリャ様。王と会う時は、そのような顔をなさらぬ様お気をつけ下さい」 「分かっている。だがな、ヒトラ。俺はどうも鳥の獣人が好きになれないのだ。この国のαは、Ωで商売をし、βをバカにしている。差別など、あってはならないはずだ」 「そうですが、国々によって考え方は違います。ターリャ様。貴方様の思う“正義”が、すべて正しいとは限らないのです」 「……………分かっているが、」 そう。ターリャも分かっているのだ。 しかし、何をどうやってもこの国の考え方がターリャには理解できない。ターリャの国は、獣人や人、αやβやΩなど関係なしに平等なのだ。 それぞれが互いを尊重しあい生きている。 「――――――ん?」 モヤモヤとした嫌な感情が、ターリャの中を駆け巡っていた時だ。ターリャの耳に、微かだが誰かの声が届いた。 心を揺さぶるような、そんな声が。 「ターリャ様?」 「今、声が聞こえた気がした」 「声でございますか?」 「あぁ。切なくて、苦しくて、でも愛おしくて。心が揺さぶられる声だ」 本当に微かだが、確かにターリャの耳に届いたのだ。 “誰か”の声が。

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