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12:家族

「ターリャ様が王子様なんて、すごいねイリ!」 興奮するように話すライタに、イリは何度も同意するように頷いた。未だに少しだけ信じられない部分もある。 しかし、イリ達のいる豪華な部屋と何十人ものメイド達を目にすれば、現実なのは確かだ。それに、頬を抓れば痛い。 「ここなら、イリも幸せになれるね」 《そのときは、らいたもいっしょだ》 「僕はいいよ。でも、イリは絶対に幸せにならないと。今まで、ずっと辛い思いをしてきたんだ」 《それは、らいたもおんなじ》 苦しみは違えど、ライタもまたイリと同じように差別され続けた。だからこそ、イリはライタにも幸せになってもらいたいのだ。 「イリ様、ライタ。よろしいでしょうか」 2人が話している時だ。今まで席を離れていたヒトラが声をかけてきた。2人してキョトンとしていると、ヒトラが一言「国王様がお2人をお呼びでございます」と言った。 国王様。ターリャの父親に当たる存在だ。その国王様が、イリとライタに会いたいと言っているらしい。 もしかしたら、ターリャにイリは相応しくないと言われるかもしれない。番にならないかと言われたのに、すぐ答えられなくて。それに、見た目も平凡で美しくもないし。そして家柄もある訳では無い。 そんなことがイリの頭をグルグルと駆け巡った。 しかし、ヒトラは安心させるように笑った。 「大丈夫です。国王様は、お優しいお方ですので。きっと大丈夫です。私が保証します」 そう言ったヒトラの笑みは、嘘をついているようには見えなかった。 ターリャも言っていた。この国は、Ωだからとかと言って差別するような人はいないと。 ならば、イリとライタは信じるしかなかった。 2人でブルブルと身体を震わせながら大広間に行くと、大きな椅子に赤毛の毛並みの狼の獣人が座っていた。その横には、ターリャとあともう1人の狼の獣人が立っていた。 「よく来たな、イリにライタよ」 赤毛の狼の獣人が、優しい声色でイリとライタに声をかけた。何か答えなくてはと思うのに、ライタの口から何も言葉は出てこない。イリはもちろん、声が出ないので無理な話だった。 どうしよう。どうしたらいいんだろうか。イリとライタがそう思っていた時だ。 「そう緊張するでない。今日から、お前達は私達の家族の一員になるのだから」 「え、?」 イリとライタが驚いて顔をあげると、赤毛の狼の獣人が優しそうに笑っていた。その笑顔は、ターリャが笑った時のものとそっくりだった。

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