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13・5:新たな出会い

ライタはパタパタと廊下を走りながら、自分の部屋を探していた。国王との謁見も終わり、イリともっと一緒に過ごしたかったが、ターリャが連れて帰ってしまったため、1人で城の探検をしていたのだ。 そうしたら、自分の部屋がどこにあるか忘れてしまったのだ。 特徴的なドアの模様を目印に覚えていたが、よく見ればどのドアも似たような模様だった。 ヤバイ。これは、ヤバイ。 遅い時間と言うのもあり、あまり出歩いている人達を見かけない。その為、自分の部屋はどこですかと聞こうにも聞けないのだ。 「どうした、β。いや、ライタだったな」 「ヒェッ!しゃ、シャール様!」 後ろから声をかけられてびっくりして振り向くと、この国の第2王子であるシャールが立っていた。ターリャの弟である。 ターリャよりも鋭いブルーの瞳で、赤と黒の混じった艶やかな毛並みのシャール。 一目見た瞬間で、ライタの中で少し怖い存在になっていたのだ。 怖い存在にかかわり合いたくない。それは、ライタの歩んできた短い人生の中で身を守る為に学んだことだった。 「っ、なんでもないです!で、では、」 「………………待て」 シャールの前からすぐに去ろうとしたが、腕を掴まれて引き止められてしまう。腕を掴むシャールの手に力はこもっていなかったが、ライタは異常な怯えを見せた。 ライタはあの店にいた頃、この様に腕を掴まれて同僚のβに何度も殴られたことがあるのだ。それは、イリがαの客に捕まっている時だ。 シャールはαで、自分はβで。だからこそ、殴られると思ってしまった。 「っ、、!!」 「………はぁ」 シャールは重たいため息を吐くと、グイッとライタの腕を引っ張った。シャールに引っ張られたので、ライタは殴られると思い身体に力を入れたが。 「そう怯えるな、ライタ」 気づけば、シャールに優しく抱き上げられていた。 「しゃ、シャール様、」 「ったく。まぁ、怯えるなって方が難しいかもしれねーけどな、ライタ」 「あ、」 「少しずつでいい。俺らを信じてくれ」 一目見た瞬間から、ライタの中でシャールは怖い存在になっていたというのに。 この一瞬で、ライタの中でシャールの印象がガラリと変わった。 そして気づけば、ライタの中に“怯え”という気持ちはなくなっていた。

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