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14:初仕事

イリ達がこの国に来てからもう4日経つ。あの頃からすれば考えられないほど、イリとライタは穏やかな生活をしていた。何をするにも、メイド達がやってくれて。自分達でする前にだ。 喉が渇いたと思えば、いつの間にかお茶の準備がされていて。眠たいなと思えば、ベッドの準備がされていた。 次期王であるターリャの番(仮)であるイリに恭しくするのは分かるが、βであるライタにまで城で働く者は恭しく接してくる。 そんな状況に、イリとライタが耐えられるわけもなく。5日目には、ヒトラに仕事がないかと聞いていた。 「元々僕達は働いていて、イリはターリャ様の番になるし、別に働かなくてもいいと思うんですけど。僕はそうはいかないかなって」 「ですので、仕事が欲しいと」 「はい!………その、出来ればイリにもあれば。仕事じゃなくても、何かすることとか。じゃないと、過ごしづらく」 ライタの言葉に、ヒトラが思案するような表情を浮かべる。ヒトラの口からいい返事が聴けるように、イリとライタがじっと見つめてくる。 「仕事ですか………。でしたら、いい仕事がありますよ。お2人にピッタリの仕事が」 ヒトラが2人を安心させるように、フワッと笑みを浮かべた。 「この城には、たくさんの草花があります。毎日1つ、見つけた草花について調べてイリ様はターリャ様に。ライタはシャール様に教えてあげたらどうでしょうか?」 「えっと、草花を調べて教えるんですか?」 「そうです。そうしたら、ターリャ様やシャール様と話すことの幅が広がりますよ」 イリやライタ達が想像していた仕事と随分違う気がするが、ヒトラは自信ありげに言っている。でも、そんなことをしてターリャやシャールに呆れられたりしないのだろうか。 《だいじょうぶかな?そんなことしてとか、あきれられたりしない?》 イリが心配そうにライタに手で話しかけてきた。 「あの、ヒトラさん。イリが呆れられないかって心配しているんですけど」 「大丈夫ですよ。この国にしか咲かない草花も多いですから。きっと、自分達の国を知ろうとしてくれていると喜んでくださいます」 イリは、自分をいつも幸せな気持ちにさせてくれるターリャが喜んでくれるならと、不安に思いながらも頑張ると決めた。 そしてライタも、自分を気にしてくれるシャールが喜んでくれるならと、イリと一緒に頑張ることにした。

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