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15:花言葉
「さて。今日は何の草花を教えてくれるんだ?」
夜、晩ごはんも食べ終わり自室に戻ったイリを抱き上げながらターリャはソファーに座る。イリが草花を調べてターリャに教えるという仕事を始めてからの日課だ。
ソファーに座りターリャが声をかければ、待ち構えていたという感じでイリが袋に入った花を出してくる。今日の花は、小さいブルーの花弁に、赤色の模様が入っているものだった。イリ達が住んでいた国にはない花。
「ん。あぁ、これはイザイラだな」
花を見ただけで、ターリャは何の花かを当ててしまう。その度に、イリは感心するのだ。ターリャは物知りさんだと。
物知りだから、教えなくてもいっぱい知っているだろうに。ターリャはいつもイリが調べたことを聞いてくれる。
だから、イリは今日もイザイラについて調べたことを話して聞かせた。
何度か言い間違えたりすることもあるが、ターリャは遮ることもなく時折相槌を打ちながら聞いてくれた。
「そうだ。よく調べたな。イザイラの中央には、生き物を死に追いやるほどの猛毒がある」
そうなんです。だから、らいたとふたりできをつけてとってすぐふくろにいれました。
「そうか。それならよかった」
ホッとしたように息を吐くターリャに、イリは胸がグッとなるほど嬉しくなった。
ターリャが、自分のことを心配してくれている。それが分かるだけで、こう心がポカポカするなんて気づかなかった。
だから今回、猛毒があるがイザイラを選んだのだ。イリは。
「イリ。他に、イザイラのことを教えてくれないのか?」
ニマニマと表情を緩ませながらターリャは聞いてくるので、イリは少し顔を赤らませた。ターリャは期待しているのだ。イザイラに秘められた意味で、イリが今回この花を選んだことを。
イザイラの花言葉は「あなたとの幸せを守りたい」。その為に、花の中央に猛毒を隠し持っているのだ。幸せを脅かすものを、亡きものにする為に。
…………いいません。
「何だ?言ってくれないのか、イリは」
言わないことで、イリが花言葉でイザイラを選んだと確信を持てたのだろう。ターリャがさっきよりもニマニマとしている。
そんなターリャを見て、顔を真っ赤にしたイリが弱い力で何度も殴った。
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