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16:変化

最近イリは、どこか身体の調子がおかしかった。 前までは、ターリャと一緒のベッドに寝ることは何ら問題もなかったのだが。最近は、一緒に眠ると心が苦しいと思うようになっていた。 もっと近づきたいと思うのに、近づきすぎたら怖いとさえ思う。 そんなイリの気持ちが現れているのか、ターリャに教える草花の花言葉などが不気味な物になっている。 今日もまた、イリは暗い顔をしてターリャに教えようとしている草花を探していた。 「…………イリ。最近顔の表情が暗いけど、何かあった?」 一緒にいるライタが心配そうにイリの顔を覗いでくる。ライタを心配させないように、イリはパッと表情を明るくして首を横に振った。 《だいじょうぶだよ》 「………まぁ、でもこれは、イリにとっていい方向に行ってるってことかな」 ライタの言葉に、イリは首をかしげた。 「イリは、ターリャ様のことを想うと心が苦しくなるんでしょ」 《そう》 「それから、ずっとそばにいて欲しいけど、迷惑なのかなって思ったりもするんでしょ」 《………なんでわかるの?》 自分の気持ちを言い当ててしまうライタに、ただただ驚くしかない。 ここまでくれば、自分の気持ちに気づいていいはずなのに。多分、イリの前の生活がそうさせているのだろう。 それでも、イリの気持ちの変化がライタは嬉しかった。そのことに、本人は気づいていないようだが。 「イリ。その気持ちは、“恋煩い”って言うんだって。図書室の本に書いてあった」 《こいわずらい?》 「そう!その人のことが好きすぎて、病気みたいになっちゃうんだって。きっとそれだよ。イリは、ターリャ様のことが好きなんだって」 《―――――――すき》 確かに、イリはターリャのことが好きだった。それは、出会って自分に優しくしてくれた時からだ。今もその気持ちは変わらない。 それなのに、今更ライタは何を言っているんだろうか。それが不思議でならない。 ニコニコと笑うライタに、イリはただ首をかしげるしかない。 「イリが、前からターリャ様のことを好きなのは知っている。でも、番になって一生一緒にいたいって気持ちはあんまりなかったと思う」 《あ、》 「でも、今は違うでしょ。最近、イリってばしきりに項を触ってるし。項に噛み跡があるΩを見て羨ましそうにしてる」 そういえばと、今ライタの話を聞きながらイリの手は自然と項に行っていた。以前は、こんな行動していなかったのに。 「そろそろ、ターリャ様を受け入れてもいいんじゃない」 クヒヒと嬉しそうに笑うライタを、イリはただ戸惑った表情で見つめていた。

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