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17:決意する
ライタに言われた言葉を、イリはずっと考えていた。自分は本当に、ターリャの番になりたいのだろうかと。
確かに考えてみれば、最近よく項を触っている。そして、項に噛み跡があるΩが羨ましいとも思う。
αがΩの項を噛むということは、一生の誓いをするということだ。一方的な理由で切り離すことのできないものだ。
「イリ。どうしたんだ。そんなに難しい顔をして」
公務を終えて戻ってきたらしいターリャが、ベッドの上に座るイリの隣に腰掛けてきた。
心配そうな表情を浮かべるターリャを笑顔にしたいと思うが、なんと言っていいのか分からない。自分の中で、ターリャにこの気持ちを伝えるための言葉をイリは持ち合わせていない。
でも、少しでもターリャを安心させたくて。隣に座るターリャにもたれかかった。
イリの急な行動にターリャは目を見開いて驚くが、すぐに表情を穏やかにしてイリの肩を優しく抱いた。
「イリ。いつか、いつかイリが心の内を見せてくれるのを待っているからな。ゆっくりでいい。イリの言葉が見つかれば、俺に教えてくれ」
たーりゃ。
イリが心の中でターリャの名前を呼べば、優しさを滲ませた声でターリャが返事をする。
イリを急かすこともせず、ただ待ってくれる。きっと、すごく心配しているだろうに。
「イリ」
ターリャが静かにイリの名前を呼んだ。イリが顔をあげれば、ターリャが額にキスをしてくれた。
「笑ってくれ。お前の笑顔を見るだけで、誰よりも俺は幸せになれるんだ」
優しい手つきで頬を撫でられて、イリの心の中がポワポワと暖かくなった。
あぁ。自分はこの人のことが好きなんだ。
噛んで欲しいと願うほど、一生そばにいたいと願うほどに。
伝えたい。ターリャにこの気持ちを伝えたい。
あ!
「ん?どうしたんだ、イリ」
急に顔をガバリとあげたイリを、ターリャがキョトンとした表情で見つめる。ガバリと顔を上げたと思えば、今度はその勢いでベッドから降りた。
そしてパタパタと部屋の中を走り、図書室から借りている草花の本をパラパラと開いた。
そして見つけた。
「イリ?」
不思議そうに見てくるターリャに、イリは心の底からの笑みを見せてあげた。
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