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18:ツガイバナ
朝ごはんを食べたイリとライタは、いつも通り庭に出た。草花を1つ調べるという仕事をするためだ。
しかし、ライタはイリを見て少し驚く。何せ、いつも以上にやる気を見せているのだから。こう、鼻から息をフン!と出している感じでやる気でいっぱいだ。
「今日は、随分とやる気いっぱいだね」
《まぁね!》
「何?探したい草花でもあるの?」
ライタが聞けば、イリは庭に持ってきていた図鑑を広げて見せた。イリが広げて見せてくれたページには、今日探そうとしている花が載っていた。
図鑑に載っている花を見て、ライタは目を見開いて驚いた。そして、ジワリと瞳に涙が溜まってくる。
イリが見ぜてくれた図鑑のページには、【ツガイバナ】という花が載っていた。
ツガイバナの特徴として、1本の茎から2色の花が寄り添うようにして咲いている花だ。キレイな空色をした青い花と、桜の色にも似ているピンク色の花が寄り添っていて。それがまるで、αとΩの番のようだとツガイバナという名がついた。
そして名前の通り、番になってくださいとプロポーズするのにこの花を渡すのだ。
「イリ。決心したんだ」
《…………ふあんがないとかうそだけど、ぼくはたーりゃのことがすき》
「うん」
《だから、このはなをみつけてぷろぽーずするの》
全国的に希少な花で、この国に咲いているかどうかは分からない。それでも探そうと思うのは、イリがターリャと番になりたいと願ったからだ。
今更、何とターリャに伝えればいいかが分からない。自分の想いを言葉にして伝えることが、難しなんて思ってもいなかった。
だけと、ちゃんと伝えたいのだ。
《がんばってみつける!》
「そうだね!」
2人で拳をあげ、一斉に仕事に取り掛かった。
庭全部を探した。昼を抜いてまで、イリはツガイバナを探した。しかし、なかなか見つからない。
見かねたライタが手伝おうかと声をかけたが、イリはそれを断った。
自分で見つけたかったのだ。
《ない、のかな》
探せど探せど、全然見つからない。もしかして、この国には咲いていないのかもしれない。そう、イリが諦めていた時。
見つけた。
1本の茎から2色の花が寄り添うようにして咲いているツガイバナを。
見つけたツガイバナを、イリは慎重に摘む。そして、ライタに急いで駆け寄った。
《みつけた!》
「あ、本当だ!よかったね、イリ!」
2人でツガイバナを見つけたことを喜んでいた時、それは現れた。
「見つけたぞ、イリ」
空から声がして2人が顔をあげれば、そこにはイリが会いたくない男がいた。
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