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19:成長

イリとライタが見上げた先にいたのは、鳥の獣人だった。しかも、イリが店にいる時は必ず指名していた鳥の獣人のαだ。 イリは、この鳥の獣人には嫌な記憶しかない。無理矢理身体を暴かれたと思えば、僕力を振るわれた。 「勝手に店からいなくなったと思えば、こんなところにいたのか」 イリめがけて、鳥の獣人が急降下してくる。とっさにライタがイリを背中に隠した。背中でイリを抱きながら、目の前の鳥の獣人を威嚇する。 しかし、しがないβであるライタの威嚇など、鳥の獣人にとってはなんでもないのだ。 「何だ、薄汚いβ。お前は、α様に逆らおうとしているのか!?」 「っ、イリを守るためだったら、逆らってやる!」 「はっ!お前ごときが、α様に適うとでも?」 鳥の獣人が、ライタに向かって手を伸ばしてくる。きっとこの手は、ライタの首を締めるために伸ばされたものだ。 怖い。しかし、背中に隠しているイリの方がもっと怖いはずだ。さっきから、ギュッとライタの服を握りしめてガタガタと身体を震わせている。 今ここには、こんな状態をイリを守れるのは自分しかいない。 「っ、くらえ!」 とっさにライタは、近くに落ちていた石を鳥の獣人に投げつけた。狙いがよかったのか、石はそのまま鳥の獣人に当たった。 「イリは!お前なんかじゃなくて、ターリャ様と幸せになるんだ!やっと、幸せになれるんだよ!!」 「あ?」 「だから、お前なんかクソみたいなαに、イリの幸せを壊させたりはしない!!」 ライタの叫びを聞いて、イリはハッとした。そうだ。自分はこんなところで怖がっている場合ではない。自分には、ターリャが。そして、ここにはたくさんの家族がいる。 番になってくださいとプロポーズすると決めたのだ。 キッと目に力を入れたイリは、ライタのマネをしてそこら辺に落ちている石を投げつけた。 「〜〜〜〜〜〜っ!!!イリ。貴様もΩの分際で、俺に逆らうつもりか!!!」 激昂した鳥の獣人が、大きな翼を威嚇で広げ2人に襲いかかろうとした時だ。 「俺の“番”と家族に何をしている」 2人と鳥の獣人の間に割るようにして現れたのは、ターリャだった。 急に現れたターリャの手には、先ほどイリが見つけたツガイバナが握られていて。 「我ら狼の獣人の国に不法に侵入した罪。それから、俺の番と家族に手を出そうとした罪」 ―償ってもらうぞ― 怒りに満ちたターリャの声が響き渡った。

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