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20:番になろう

鳥の獣人は、いきなり現れたターリャに襲いかかったが、ターリャの方が強かった。取っ組み合いになり、ターリャが鳥の獣人を押さえ込んだ。 「グッ。離せ!!」 「誰が離すものか!!」 ターリャが鳥の獣人を抑え込むのを、イリとライタはただじっと見ていた。早すぎる展開についていけないのだ。 しかし、ヒトラが軍を連れてターリャ達の元に来たのを確認すると、2人は息をホッと吐いた。 「大丈夫ですか?イリ様に、ライタ」 「あ………。大丈夫です」 ヒトラの問いかけにライタが答えると、鳥の獣人を引き渡したらしいターリャが慌てたようにしてイリに駆け寄ってきた。 駆け寄ったと思えば、勢いよくイリを抱き上げて。そして、イリが怪我をしていないのを目で確認するとキツく抱きしめた。 ターリャの全部が自分を心配してくれている。 言葉なんてなくても、それはイリに充分伝わっていた。 だいじょうぶ。ぼくはだいじょうぶだよ、たーりゃ。 ターリャに安心して欲しくて、イリはスリスリと胸元に擦り寄る。 「よかった。間に合って」 ターリャのその声が泣きそうに聞こえて。イリも、同じように泣きそうになる。 「イリ」 そんなイリに、様子を見守っていたライタが声をかけてきた。何かと思って見れば、ツガイバナを差し出してきていた。 「ほら、伝えるんでしょ。ターリャ様に」 ライタの言葉にイリは頷くと、その手からツガイバナを受け取った。 そしてそのままターリャに渡した。 「―――――ありがとう、イリ」 って、さっきいつのまにかたーりゃがうけとってたけど。 「そこは、イリが準備してくれたと思ってな」 うん。そのつがいばなは、ぼくがよういしたの。 「そうか」 ツガイバナを手にしたターリャは、目を閉じて幸せに浸っていた。そんなターリャの頬に手を添えて、イリはグッと顔を近づけた。 チュッ。 「い、り」 たーりゃ。ぼくのつがいになってください。またせてごめんね。 笑顔を見せながら、イリは泣いた。そして同じように、ターリャも涙を流していた。 一国の王子だとか立場を忘れ、ターリャはイリにすがりついた。 ずっと待っていた。出会った時から、こうなることを。 ターリャは、イリの項をそっと撫でて零れる涙をペロリと舐める。 涙はしょっぱいはずなのに。イリのそれは、甘く感じた。

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