23 / 31

21:誓いの噛み痕

『今日、お前を抱きたい。イリ』 抱きしめられながら耳元でそう囁かれて、イリはずっとそわそわしていた。何をするにもターリャの言葉が頭から離れなくて。お風呂は、いつも以上に念入りに身体を洗った。 ピッカピカの身体でベッドの上に座り、ターリャが部屋に戻ってくるのを待つ。 今日の事件があり、後始末のために戻るのが遅くなると言われていたが。これほど、ターリャの帰りが待ち遠しいと思ったことがあっただろうか。 部屋に近づく足音が聞こえる度に、ターリャかと思い背筋をピンとする。まぁ、違かったのだが。 「待たせたな。イリ」 イリが待ち始めてから1時間以上は経っただろうか。少し疲れたようにターリャが帰ってきた。 ま、ってないよ。 「嘘をつくな。ライタから、今日は身体を念入りに洗っていると聞いたぞ」 身体を念入りに洗ったことをターリャに知られていて、イリは一気に顔を真っ赤にした。イリのそんな姿を見て、ターリャが色気を含んだ笑みを浮かべた。 ターリャのそんな笑みを見るのは初めてで。初めて感じる熱が、イリの身体を駆け巡った。 「イリ」 イリの隣に座ったターリャが、そっと頬に手を添えてきた。自然にその手に擦り寄れば、慣れた手つきで項に手が流れていく。 「まっさらだな。イリの項は」 あたりまえだよ、たーりゃ。 「――――――ここに、噛み付いていいんだな。お前は俺のものだと、印をつけていいんだよな」 ターリャのブルーの瞳から、ホロリと涙が零れた。その涙を見たイリの瞳からも、同じように涙が零れる。 たーりゃ。あいしてる。 「俺も。イリを誰よりも愛している。俺の、愛しいΩ」 ターリャがグッとイリの項に顔を近づける。ターリャが噛みやすいように、イリは首を傾けた。 ターリャはずっとこの時を待ち望んでいた。イリと番になれる日のことを。 やっと。やっと、このキレイな項に誓いをたてられるのだ。一生、イリを愛するという誓いを。 「これでもう、お前は俺のものだ。イリ」 ターリャのその言葉を最後に、イリの項に一気に熱が集中した。

ともだちにシェアしよう!