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26:籠の中のカナリアは、たった1人の為に唄う

「イリ。準備が出来た?」 「ライタ」 1人部屋で気持ちを落ち着かせていると、ライタがひょこりと顔を出してきた。そして、ライタはイリの姿を見て言葉をなくす。 キレイだったのだ。白の民族衣装に身を包むイリの姿が。お世辞ではなく、本当にキレイで。 いつも見慣れいているはずのイリなのに、ライタは急に恥ずかしくなって顔をそらした。 そんなライタの反応をイリが不思議に思っていると、クスクスとした笑い声が聞こえてきた。 2人が笑い声がする方を見ると、イリと似たような白の民族衣装に身を包んだターリャが立っていた。 「ライタ。お前が照れるのも分かるぞ。今日のイリは、格別に美しいからな」 「え?僕が美しいんですか?平凡なΩなのに、」 「俺には、この世界で1番美しく見えるぞ」 イリのそばに寄ってきていたターリャが、慣れた手つきでキスをする。目の前で起こった出来事に、ライタは顔を真っ赤にして驚いていた。 しかし、キスをされているイリは少しなれていたのか、あまり驚いている様子はない。 「もう!ターリャはキスばっかり、」 「しょうがない。イリのことが好きすぎるんだ」 「それは、はずかしい」 キスでは恥ずかしがっている様子はなかったのに、ターリャからのストレートすぎる愛の言葉には頬を染めた。いつの間にか2人だけの世界に入っているターリャとイリ。そして、顔を真っ赤にして驚いているライタ。 そんなカオス的な空気を払うように、コホンという咳が聞こえた。 「そろそろお時間ですよ。花婿様に、花嫁様」 「あぁ。もうそんな時間か、ヒトラ」 「全く。イチャつくのもよろしいですが、周りも見てからイチャつくようにしていただきたいものです」 呆れたようにため息を吐きながら入ってきたヒトラが、顔を真っ赤にしているライタを連れて部屋を出る。申し訳ないことをしたと思うが、知らないうちに2人とも気持ちがハイになっていたのだろう。 何せ、今日はターリャとイリの国を挙げての結婚式だ。 「やっとこの日が来たな」 「とっくの前に、番にはなったけどね」 「あぁ。でも、これで本当に俺はお前を離さないからな、イリ」 ターリャがイリを抱きしめる。 抱きしめてくるターリャの温もりを感じながら、イリは思う。 自分は一生、あの汚い籠の中で過ごすんだと思っていた。αからもβからも暴力を受ける、あの籠の中で。しかし、その籠の中から、ターリャが救ってくれた。そして、こんなにも暖かく優しい籠の中に自分をいさせてくれた。 「――――――ターリャ」 「ん?」 「大好きだよ」 優しく暖かな籠の中で、幸せそうに微笑むカナリアが甘い声で鳴いた。

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