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番外編:ライタの幸せ①
最近ライタは、1人でぼんやりとすることが増えてきた。今まではイリと2人で日中はほとんど一緒に過ごしてきたけれど。ターリャとイリが結婚してからは、そうもいかなくなった。
次期王の妻として、イリは最近ターリャと一緒に仕事をしている。そんなイリの姿を見て良かったと思う反面、少しだけ寂しいと思ってしまうのも事実だった。
もしかしたら、ここにはもう自分の居場所はないのかもしれない。自分がいなくても、イリはもう大丈夫だし。それにライタは、草花を調べてシャールに教えるということしかしていない。何1つ、この国の役に立つことはしていないのだ。
「…………ここには、いない方がいいのかな」
最近は、草花を調べてシャールに教えるということすらしていない。何せ、番となり結婚したターリャとイリに感化され、シャールがΩと見合いをしているのだ。
シャールのことが好きで、調べる草花にシャールに対する想いをのせたこともある。
でも、ライタはβだ。決してΩにはなれない。だから、αを愛してはいけなかったのに。
「ライタ。どうしたんですか?ぼんやりとして」
「っ、ヒトラさん、」
後ろからヒトラに声をかけられて、ライタはビクリと身体を跳ねさせた。
「ライタ。本当にどうしたんですか?」
いつもなら、名前を呼べば笑顔を浮かべてくれるのに。今日のライタは、悩んでいる表情のままで。少し心配になったヒトラは、ライタの顔を覗き込んだ。
「――――思うんです、僕」
「何がですか?」
「僕の居場所は、ここにはもうないんじゃないかって。イリは僕がいなくても、ターリャ様がいるし。それに他のみんなもいるし。でも僕はβで、だから、愛される資格もないし、」
自分でも何を言っているか分からなかった。話している途中で涙が零れ落ちるし、それを見たヒトラが慌てるし。でも、涙を止めようとするけど止まらないし。
ライタは、もう、どうしていいか分からなかった。
「ライタ……、」
ヒトラがライタの涙を拭おうを手を伸ばした時だ。その手が、第三者の手によって払われた。
「え?っ、うわっ」
ライタがその手に驚いた時にはもう、手の持ち主、シャールに抱き上げられていた。
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