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第2話

「ただいま」  小生が言っても、返事は返ってきません。  両親は、数年前に人間に殺されてしまいました。  小生の父は、犬神のアルファ。  小生の母は、人間のオメガ。  その間に生まれた小生は、オメガ。  獣人のオメガは、とても貴重らしいです。  だから、小生は色々な人間に狙われています。  小生が、虐められていても。  それは、とても普通で、当たり前で、誰も助けてなんかくれません。 「凄い……な……」  それなのに、あの男は小生を助けてくれました。  名前は名乗らないで、立ち去っていったあの人。  小生は、彼のことを考えると、ドキドキしてきてしまいました。  全身が熱く。  ゾクゾクとする。 「っはぁ……」  小生は、布団に入り、貸してくれたパーカーの香りを嗅ぐ。  アルファ独特の香り。  それが、小生をドキドキさせます。  右手で、パーカーを鼻に当て。  左手で、自分の身体を触ります。 「ふぅ、ぁ、んっ」  頭の中で、彼の声が聞こえます。 『可愛いね、君』 「ぁ、やんっ」 『他の男に汚されて、可哀想に』  彼は、優しく小生に言う。 『俺が綺麗にしてあげるね』 「ぇ……っ」  気づかないうちに、小生のナカを指が入り。  汚い男たちに、出された汚い欲液を、外に出す。 『綺麗にしたら、俺のが欲しいでしょう……?』 「っ、欲し……」  不思議。  不思議なんです。  彼のモノなら、欲しいんです。  彼のモノなら、汚くないんです。 「っ、ぁあっ♡ 〜〜〜〜〜♡♡」  彼のモノがナカに。  たくさん注がれる、そんな気がして。  小生は、自分の欲望を吐き出しました。 ⊿  朝になって、小生は、いつものように顔が晒されないように、隠しながら歩きます。  父譲りの犬耳と尻尾を隠して、小生は学校に通います。  獣人だと、知られてはいけないから。  耳と尻尾だけは、隠さないといけないんです。 ――どうして、こんなにしないといけないんだ。  そういえば、彼は小生を好奇心の目で見たりしなかったです。  彼は、小生を一人の人として接してくれました。  とても嬉しかったです。  初めてでした。  彼のことを考えると、やはり胸がドキドキします。 「彼は、どこの誰でしょうか……」  ドキドキしながら考え、呟くと。  目の前を、彼の香りをした人が通りました。  小生はビクッと驚き、深く被っていたパーカーのフードを外します。  そして、香りのする方を見ます。  すると、そこには、彼がいました。  あの時、助けてくれた彼が。 「あ、あの!」  緊張で、声が裏返ってしまいました。  でも、それを気にして、止まれるほど。  小生は、冷静ではなかったです。 「その、昨夜はありがとうございました! とても、助かりました!」  小生が言うと、彼はこちらを見て首を傾げます。 「昨夜? 何それ、誰かと勘違いしていない? 俺、君みたいな獣人知らないよ」 「え……?」 「つーか、獣人嫌いだし。うわー、最悪」  彼はそう言うと、小生に少し痰唾を吐きました。  小生は驚いて、言葉を失い、その場に立ち尽くしてしまいました。

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