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第3話
しばらくして、涙が出てきました。
止めようと思っても、止まってくれません。
悲しいです。
あんなに、はっきりと拒絶されてしまったのは、初めてだったからです。
小生は、ただ。
ただ、お礼をしたかっただけです。
したかっただけなのです。
「ひっぐ……、うっぐ……」
胸の奥が、とっても苦しいです。
こんなの初めてです。
とってもとっても辛いです。
「うわあああああああああああああああああんんんん」
泣いてはいけない、と解っています。
だけど。
今だけは、泣くのを許してほしいです。
外で、こんなに大泣きして、恥ずかしいです。
でも、それを気にして、涙を止められたら、止めています。
「うっぐ、うああ、うわああああああああああああああああああああんんんんんん」
小生が泣いていると、後ろから「どうしたの?」と声がしました。
振り向くと、そこには彼がいました。
⊿
「っ!」
さっきは、嫌いと言ったのに。
急に、優しく声をかけるのは、どういうことなのでしょうか。
小生には、よくわからないです。
「な……、んで………?」
小生が訊くと、彼は首を傾げます。
「道で泣いている子がいたら、心配するのは当たり前だろ? それに、君は昨夜の子だろ? また、誰かに虐められたのかな、て」
「え……?」
「? 覚えていないのかな……」
「ち、違います! さっき……、あなたにお礼を言ったら……、嫌いって……」
「? ああ、それは僕の双子の弟だよ、きっと」
「双子……?」
「そう。ごめんね、嫌な思いをさせてしまって」
彼はそう言うと、小生を優しく抱きしめてくれました。
それが嬉しくて、小生は涙を流しました。
⊿
「あ、あの、小生 、三波 葵 って言います! あなたの名前を……! どうしても、お礼がしたくて」
少しして、涙が止まった後。
小生は自己紹介をしました。
もう間違えたくないです。
だから、彼の名前を知りたいです。
彼は笑って、頷きます。
「僕は木田 朱音 。君を泣かせてしまったのは、弟の朱里 。あいつは、獣人に対する嫌悪感が凄いんだ……。ごめんね」
「い、いえ。嫌われている、というのは知っています。だけど、はっきり言われたのは初めてで……」
「そっか……。弟には、はっきりと言っておくよ」
「あ、いや、えっと……」
「遠慮することはないよ。僕たち、友達だろ?」
「え?」
驚いて、瞬きを何回かしてしまいました。
友達?
友達って、あの友達?
「友達……」
「あ、いきなり、そんなこと言って迷惑かな」
「い、いえ。あの、木田さん、に、言われて、嬉しくて、です、その」
「木田さん、じゃなくて良いよ。朱音って呼んで」
彼は。
朱音さんは、笑って言いました。
ドキッとしました。
ドキドキします。
「えっと、じゃあ、あの、小生 のことも、葵って呼んでください」
「うん。わかった、葵」
朱音さんは、優しくて大きな手で、小生を撫でてくれました。
頭を撫でられて、とても嬉しくなったのは、両親を除いて、彼だけでした。
「嬉しいです。その、友達も初めてだから」
「そう」
「はい」
ふと、彼を見上げると。
何だか、少しだけ怖い顔をしていました。
小生がビクッとすると、彼はすぐに優しい顔で、微笑んでくれました。
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