3 / 21

第3話

 しばらくして、涙が出てきました。  止めようと思っても、止まってくれません。  悲しいです。  あんなに、はっきりと拒絶されてしまったのは、初めてだったからです。  小生は、ただ。  ただ、お礼をしたかっただけです。  したかっただけなのです。 「ひっぐ……、うっぐ……」  胸の奥が、とっても苦しいです。  こんなの初めてです。  とってもとっても辛いです。 「うわあああああああああああああああああんんんん」  泣いてはいけない、と解っています。  だけど。  今だけは、泣くのを許してほしいです。  外で、こんなに大泣きして、恥ずかしいです。  でも、それを気にして、涙を止められたら、止めています。 「うっぐ、うああ、うわああああああああああああああああああああんんんんんん」  小生が泣いていると、後ろから「どうしたの?」と声がしました。  振り向くと、そこには彼がいました。 ⊿ 「っ!」  さっきは、嫌いと言ったのに。  急に、優しく声をかけるのは、どういうことなのでしょうか。  小生には、よくわからないです。 「な……、んで………?」  小生が訊くと、彼は首を傾げます。 「道で泣いている子がいたら、心配するのは当たり前だろ? それに、君は昨夜の子だろ? また、誰かに虐められたのかな、て」 「え……?」 「? 覚えていないのかな……」 「ち、違います! さっき……、あなたにお礼を言ったら……、嫌いって……」 「? ああ、それは僕の双子の弟だよ、きっと」 「双子……?」 「そう。ごめんね、嫌な思いをさせてしまって」  彼はそう言うと、小生を優しく抱きしめてくれました。  それが嬉しくて、小生は涙を流しました。 ⊿ 「あ、あの、小生(ボク)三波(みなみ)(あおい)って言います! あなたの名前を……! どうしても、お礼がしたくて」  少しして、涙が止まった後。  小生は自己紹介をしました。  もう間違えたくないです。  だから、彼の名前を知りたいです。  彼は笑って、頷きます。 「僕は木田(きた)朱音(あかね)。君を泣かせてしまったのは、弟の朱里(あかり)。あいつは、獣人に対する嫌悪感が凄いんだ……。ごめんね」 「い、いえ。嫌われている、というのは知っています。だけど、はっきり言われたのは初めてで……」 「そっか……。弟には、はっきりと言っておくよ」 「あ、いや、えっと……」 「遠慮することはないよ。僕たち、友達だろ?」 「え?」  驚いて、瞬きを何回かしてしまいました。  友達?  友達って、あの友達? 「友達……」 「あ、いきなり、そんなこと言って迷惑かな」 「い、いえ。あの、木田さん、に、言われて、嬉しくて、です、その」 「木田さん、じゃなくて良いよ。朱音って呼んで」  彼は。  朱音さんは、笑って言いました。  ドキッとしました。  ドキドキします。 「えっと、じゃあ、あの、小生(ボク)のことも、葵って呼んでください」 「うん。わかった、葵」  朱音さんは、優しくて大きな手で、小生を撫でてくれました。  頭を撫でられて、とても嬉しくなったのは、両親を除いて、彼だけでした。 「嬉しいです。その、友達も初めてだから」 「そう」 「はい」  ふと、彼を見上げると。  何だか、少しだけ怖い顔をしていました。  小生がビクッとすると、彼はすぐに優しい顔で、微笑んでくれました。

ともだちにシェアしよう!