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第7話

――こういうとき、どんな言葉を言うんだろう。  考えていると、朱音さんが「ありがとう」と、小生を抱きしめてくれました。  とっても優しく。 「あ、えっと……」  小生が言葉を探そうとすると、朱音さんは「良いんだ」と言います。 「何も言わなくて良いんだ」 「…………」 「ありがとう」  今にも消えてしまいそうな声で、朱音さんは小生に言います。 「好きだよ」 「え……」 「ずっと前から、好きだったんだ」 「でも、小生(ボク)は、人ではありません……」 「関係ない」 「オメガです……」 「関係ないよ」  朱音さんは、少し離れて、小生をじっと見ます。 「そんなこと関係ない。僕は、葵、君だから好きになったんだ。君だから愛しているんだよ」 「っ」 「葵、好きだ。大好きだよ。ずっと、君と一緒にいたい。君を傷つけるものから、君を守るから」 「…………嬉しいです」  嬉しいです。  本当に、とても嬉しいです。  信じられないくらい、嬉しいです。  夢でしょうか、これは。 「小生(ボク)……、朱音さんのことになると、ドキドキします……。心の奥が、熱くて、苦しくなります。とっても大切だ、と思います……」 「っ! な、なら――」 「だから、信じられません」  こんな夢なら。  早く覚めてほしいです。  夢の中だけ、こんなに幸せっていうのは、悲しいじゃないですか。  辛いです。 「ごめんなさい」 「…………」 「朱音さんの言葉は、とても嬉しいです。嬉しいから、です」  小生は、そう言って、朱音さんから離れます。  が。  ぐいっと腕を引っ張られて、押し倒されてしまいました。 「え……?」  小生の上に、朱音さんが覆いかぶさります。 「嘘じゃない。僕は、君だけを見ていた」 「…………」 「君だけしか見ていない。ずっと」 「あ、朱音さん、怖い、です」 「葵、君は忘れているかもしれない。だから、言うけど。君に、葵という名前をつけたのは、この僕だ」  朱音さんは、怖い顔をしながら、小生を見下ろします。  小生は、ガタガタと震え、朱音さんに対し、恐怖心を抱きました。 ⊿ 「どういう……ことですか……?」  震えながら、朱音さんに訊きます。  小生の名前は、両親がつけてくれた名前のはずです。  名前は、そういうものでしょう? 「小生(ボク)と、朱音さんは……、ついこの間、出会ったばかりです……よね?」 「…………」 「小生(ボク)は……、あなたに出会っていたんですか? 昔に」 「……はあ」  朱音さんは、深くため息を吐きます。 「本当に忘れているんだ、葵。思い出してほしいよ、ちゃんと」 「え」 「どうしたら、思い出せる? 葵」  朱音さんは、小生の腕を左手で押さえます。  それが、怖くて。  でも、抵抗はできません。 「怖がらないで、葵。これで、思い出せるかもしれないだろう?」 「ぃ、ぃゃ……」 「嫌がらないで、葵」  怖くないよ、と朱音さんは、小生にキスをします。 「僕から、もう逃げないでね」 「っ」  離れたいです。  怖くて、恐くて、逃げ出したいです。  だけど、朱音さんの長い舌が、小生の舌を絡めて、放してくれません。 「ぅ、ん」  嫌です。  怖いです。  小生は、怖くて目を瞑ります。  だけど、朱音さんは「僕を見て」と言います。 「僕を見ろよ、葵」  低くて、怖い声で、朱音さんは、言います。 「この僕を見ろ!」 「ひっ」 「お前の唯一の友達だよ? 僕は!」 「ち、違いますっ! 朱音さん、は、怖い人ではありません! 違います! 嫌です! やめてください!」 「っ、うるさいなあ!」  黙れ、と朱音さんは、朱音さんによく似る男は、小生の口を手で押さえます。 「印象良くしようって、無駄に演技したのが悪かったな。慣れねえことはするもんじゃねえよ」 「っ」 「折角だから、教えてやるよ。葵」  男は、ニヤリと笑って、小生に言います。 「今までのは、全部嘘だ」

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