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第8話

 嘘。  本当ではない。  本当の反対。  と、習ったことがあります。  今までのことは、全て嘘だったみたいです。  小生は、馬鹿です。  期待してしまって、本当に、馬鹿です。  初めて好きだと思った人に、好かれていると思って。  浮かれていました。  ウキウキ気分でした。  涙が止まりません。 「お前を輪姦(マワ)していた奴らに、お前を輪姦(マワ)しろって命令したのは俺。お前のあの感じている顔、最高だったぜ?」  男は、小生の涙を見ながら、笑いながら言います。 「俺に別人格がいるってのも嘘。簡単に信じて、お前は馬鹿だなぁ」 「…………」 「泣いちゃって、カワイイな」  男は舌なめずりをして、小生に言います。 「服を脱げ。たくさん可愛がってやる」  男は、小生から少し離れました。  逃げ出すなら、今です。  しかし、小生にはできませんでした。  この男は、怖いけど。  恐いけれど。  小生の好きな、朱音さんの、はずですから。  小生に、こういう風に接するならば。  小生が、悪いんです。  震えながら、小生は自分の服を脱ぎます。  痣だらけで、汚い身体を。  男、朱音さんに、見せます。 「…………」 「かわいいよ、葵」  朱音さんは、恍惚とした表情で、小生を見ます。 「傷だらけだ、葵。間接的に、自分が傷つけたって思うと、堪らないね」 「…………」 「ローションで解そうとは思ったけど、葵は痛いのが好きだよね」 「ぃやっ! 痛いのは、嫌です!」 「そんなこと言って、輪姦されて、乱暴されて、悦んでいたじゃないか」 「違います! ぃや……、嫌だ、嫌だ!」 「……うるさいな」  朱音さんは、小生を押し倒します。  そして、首を絞めます。 「拒否権なんてない。お前は、もう俺のものだから」  パッと手を放し、朱音さんは、小生の項をぺろりと舐めました。  ゾクリ、と身体の奥が熱くなりました。  怖いです。 「ゲホッ、何、するん、ゴホッ、ですか?」  咳き込みながら訊くと、朱音さんはニヤリと笑います。 「知ってるだろ? セックスしながら、ここを噛んだら、どうなるかって」 「っ!」  知っています。  聞いたことがあります。  運命の番、というものを。  とても強力な契約のようなものです。  オメガは、番になったアルファとしか。  アルファも、番になったオメガとしか。  性行為ができなくなります。  そして、離れたくても離れられない、というものです。  契約というより鎖です。  それの解消方法は―― 「あなたの……、目的は……」 「そうだよ。葵を縛ることだ」 「っ」 「葵、お前は僕の所有物(モノ)だからね」  朱音さんの笑顔に、小生は恐怖で、ゾクッとしました。 ⊿  小生のお尻に、朱音さんの指が挿れられます。  一本、二本、とではなく。  一気に、二本を挿れられました。 「ゃぁあっ」  痛い。  けど、小生のお尻は違和感など感じず、受け入れます。  ずっとされていたことです。  だから、慣れてしまっているのです。  朱音さんの狙いは、きっとそうだったのだと思います。  いきなりではなく、慣れた頃に。  そうすれば、楽ですから。 「っ、ぁ」  指だけなのに、小生は、熱くなってしまいました。  朱音さんの、細くて長い、綺麗な指。  それが二本も。 「はぁ、ぁっ」  呼吸を整えて、嫌だって言わないといけません。  でも、何で?  どうして?  朱音さんは、こんなにも、小生を求めています。  それを拒んで、それで、どうしますか?  拒む理由がありますか?  小生だって、朱音さんと性行為をする妄想をして、何度も何度も、自分を慰めたではありませんか。 「ぁ……、朱音さ……」  言わないといけません。 「朱音さん……」 「何?」 「お願い……します……」  ドキドキと。  ゾクゾクと。  熱くて、可笑しくなってしまいそうな。  そんな中、はっきりと、小生は言います。 「朱音さんが……欲しい♡」 ⊿  指が抜かれ、その代わりに挿れられる、ソレは。  拒みたくても拒むことができない。  朱音さんのモノで。  これから、小生のモノになるモノです。  太くて、長くて。  小生をドキドキさせる、不思議なモノです。 「挿れるよ、葵」  朱音さんは、そう言って、優しくではなく、乱暴に、挿れます。 「ははっ! 最高だよ、葵のナカ!」 「っぁあ、んっ、はぁ」 「締め付けてくるじゃん! ずっとしたかったの?」 「はぃ……っ、したかった、したかったです」 「あはは、そぅなんだ」  朱音さんの棒が、小生のナカで、大きくなるのが判ります。  それが嬉しくて、そして、小生は求めてしまいます。  朱音さんの真っ白い欲液を。 「はぁっ、ぁんっ、あっ」  今までよりも、気持ちが良いと感じます。  そう自覚したら、余計、熱を感じました。 「葵、葵、葵、葵、葵、葵、葵っ」  朱音さんが、小生を呼びます。  その度に、ゾクリゾクリと感じて、イきたくなります。 「ぃ、ぁ、あっ、イっ」 「イこう、一緒に」  朱音さんは、そう言うと、小生の項を噛みました。  そして、小生のナカに、真っ白い欲液を注ぎました。  小生は、それと同時にイきました。  イったばかりの小生に、朱音さんは、言います。 「終わりじゃないよ、まだだよ」 「ぇ……?」 「番になった記念に、たくさんして、子供を作ろうね」  葵、と小生に、朱音さんは笑いかけます。  小生も笑って、頷きました。

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