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第9話

 それからのことは、覚えていません。  気づくと、終わっていました。  いえ、これから始まるようです。  小生の首には、首輪のようなものがついていました。  一体これは何だろう、と思っていると。  朱音さんが、嬉しそうに小生に言います。 「あまり知られていないけど、番になったオメガはアルファに全てを捧げるんだよ。身も心もね」 「ぇ……?」 「アルファの言うことには、絶対に逆らわないんだ。これは人間だけかな? 葵のような獣人のオメガは、珍しいからね。わからないんだけれど。動物によるのかもしれないね」 「…………」 「だから、試したいんだ」  朱音さんは、戸惑っている小生に、カメラを向けます。 「葵は、どうなのかって」  パシャリ、と朱音さんは、写真を撮りました。  小生が、首を傾げると。  朱音さんは、笑います。 「獣人のオメガは、珍しいって言ったろ? そのオメガのエロい写真は、高値で売れるんだよ。さっきのイってるときの顔も、最高だった」 「売れる……?」 「写真だけではなく、動画も売れるんだ。一本五万円で」 「…………」 「その怯えた顔も良いねえ」  朱音さんは、笑ってそう言うと、何かを思いついたように小生に言います。 「獣人も、クスリって効くのかな」 「クスリ……?」 「そう」 「ぃ、嫌です……。痛いものは、怖いものは、嫌です」  小生が言うと、朱音さんは、そうか、と頷きました。  無理矢理、ヤられると思っていたから、驚きました。 「まあ、また今度にしよう。ゆっくり、やっていけば良いから」 「…………」 「……葵、外に出ようとするなよ? これは命令だから」 「え」 「僕は、行くところがあるから」  じゃあ、と朱音さんは、どこかに行ってしまいました。 ⊿  朱音さんが、帰ってくるまで。  不思議と、外に出ようとは思いませでした。  朱音さんは、帰ってくると。  小生の家の台所で料理をし、小生の世話をしました。  朝昼は出かけて、夜には帰ってきて。  二回、三回身体を重ねました。  そんな日が続いたある日です。  いつもよりも体調が、あまり良くないような気がしました。  妙に、身体が熱くて、不思議でした。  そんな小生に、朱音さんは気づいたのだと思います。  小生に、朱音さんは「風邪かい?」優しく声をかけてくれました。  小生は、首を傾げます。 「ただ、身体が熱いんです」 「……今日は、何もしないでいようか」 「…………」 「?」 「すみません、朱音さん」  小生はそう言って、朱音さんに凭れます。 「動かないで」 ⊿  身体が、朱音さんを求めます。  早く、早く、と。 「朱音さん……。朱音さん……。朱音さん……っ」  どうして、こんなにも求めてしまうのでしょうか。  小生には、解りません。  だけど、朱音さんは解っているみたいで。  小生を見て、ニヤリと笑っています。 「獣人にも、効くんだな」 「え……?」 「発情催促剤(クスリ)」 「い、いつ……? いつ、ですか……?」 「ずっとだよ。気づかれないように、少量を」 「…………」 「どう? 今の気分は――うわ」  話の途中でしたが、小生は朱音さんを押し倒します。  見えているのに、今一はっきりと見えません。  ぼんやりとしながら、小生は自分の服を脱ぎます。  そして、朱音さんのズボンとパンツを下ろします。 「はぁ……、はぁ……」  きっと、いけないことだと思います。  無理矢理、なんていけません。  それじゃあ、小生を汚した男たちと一緒です。  だけど、小生はどこかで思ってしまいます。  こうなったのは、全部、朱音さんのせい。  と。  だから、小生は悪くありません。 「朱音さん……。はぁ、あはは……」  小生が笑うと、朱音さんも笑います。 「良いよ、好きなように動けよ」

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