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第12話

 それから、数カ月。  小生は、朱音さんと会話はしませんでした。  何回も考えてみました。  が。  やはり、許せなかったのです。  小生は、朱音さんのせいで、妊娠をしてしまいました。  それなのに、朱音さんは、知らない人と身体を重ねていました。 ――小生が、頑張っているのに……。  どうして……。  小生は、朱音さんに対して、とても嫌な気持ちになりました。  朱音さんを見ると、イライラしたりします。  こんな気持ちになるなら、いっそ―― ⊿ 「出かけるから」  朱音さんは、そう言って、玄関に行きます。 「家にあるもの、テキトーに食べてて」 「……どこに行くんですか」 「どこでも良いだろ」 「良くないです」  大きくなったお腹をさすりながら、小生は言います。 「小生(ボク)は、今、とても苦しいです。不安です。それなのに」 「知らねえよ、そんなの」  朱音さんは、唾を吐き捨てます。 「お前が、勝手に孕んだんだろ? 嫌なら堕ろせよ」 「っ」 「まあ、今中絶とかしても意味ねえかもしれねえけど」 「…………」 「被害者ぶるの、ほんっと、うぜえからやめてくんない?」  じゃ、と朱音さんは、外に出て行きました。  パタン、と閉まった音。  それと同じように、小生の中でも、何かがパタンと閉まり。  終わりました。  朱音さんへの思いが、終わったような気がします。 「ごめんね……」  お腹をさすりながら言います。 「お父さんの顔、見ることができなくなって」

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