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Ωの性

「お前、まさかこういう事をしたことがないのか?」 言葉と態度が裏腹に、ミケルは縋るようにレノに抱きついたままコクリと頷く。怖いと涙まで流しているくせに、レノの体に縋りながら発情しているミケルの姿にレノは愛おしさが湧き上がるのを抑えることができなかった。 「すまなかった……なら優しくしよう。だからもう泣かないでくれ」 レノは抱きつくミケルをそっと離すと、ゆっくりとその体を押さえつける。「足を開け」と囁かれたミケルは恥じらいながら言われるままにそれに応じた。 「痛くはないか? ここは触れてもいいか?」 レノの勃起したペニスがゆっくりとミケルの中に沈んでいく。それだけで果ててしまいそうになるくらい全身に快感が走るのに、レノの手は起立しているミケルのそれも緩々と扱いた。 「ああっ……だめ……それ!変……ああ……んっ、レノ様……ああ……あっ!」 まだ挿入して間もないのに、少し触れただけでミケルは体を震わせ盛大に果てた。「何か出ちゃう……」と怯えたように泣いて善がる姿にレノは加虐心を煽られ更にミケルを押さえつけ背後から激しく腰を突いた。 ミケルは欲情する体をレノに預ける。言葉通り蕩けきった体はもう自分ではどうしようもない。初めて与えられる激しい快感に、とっくに理性は飛んでいた。それでも殆ど理性を失い淫らにレノを求めているのに、時折心に浮かぶエイデンの姿に困惑していた。 体は目の前のレノを求め激しく疼く。何度も欲を吐き出そうとも、目の前のレノの姿を感じるだけでそれは果てしなく湧き上がる。レノの情欲が収まるまで、その疼きは止められなかった。 明け方までミケルは激しくレノに抱かれた── 力尽き、ベッドで死んだように眠ってしまったミケルはパンの焼ける香ばしい香りで目が覚めた。 「起きたか? 昨夜は突然悪かった。これを飲んで、今日はゆっくり休むといい……」 レノは温めたミルクと抑制剤らしき薬をテーブルに置く。身体中に感じる倦怠感と火照りに思考もおぼつかないミケルは、テーブルの上をぼんやりと眺め首を傾げた。 「あの……これは何の……?」 「アフターピルだ。 避妊はしてあるが、お前も番うつもりもないだろうし万一に備えて飲んでおけ」 レノに言われて初めてミケルは現実を思い出す。自分はΩ性としてこの世に産まれた。散々言い聞かせられてきたというのに、これまでそういった行為も相手もなかったから失念していた。昨晩は初めてフェロモンにあてられ我を忘れ欲のままに体を許した。発情して性行為をしたのなら当然のこと。理性を失い、知らずに番の誓約を交わされていたかもしれない事実に血の気が引いた。 それだけじゃない。ミケルは自分がβだと偽りここに来ている。おまけに獣人ということも知らせていない。獣人だからといって仕事や生活に支障が出るわけではないから言う必要もないことだけど、この屋敷の者が獣人差別主義者なら話は違う。昨晩ミケルを抱いたことでレノ自身はそれではないと分かるものの、やはりちゃんと話しておかなければ失礼だと思い、ミケルはあらためて自身の事をレノに詫びた。

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