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第4話

 両腕を田辺の肩に投げ出すと、勃起した互いの股間がゴリゴリとこすれ合い、たまらなく下品で卑猥に思える。  頭の芯が痺れ、熱の上がるような感覚に襲われた。足元がふわふわとおぼつかなくて、閉じた目の裏に欲情が滾っていく。 「た、なべ……っ」  がちがちになった部分をどうにかして欲しくて絞り出した声は、思う以上に切羽詰まった甘さを帯び、大輔はシャワーの中で身震いを繰り返す。  男とのセックスで快感を得るのは嫌なのに、して欲しくて、三年も続いた関係だからこそ肝心なことが言い出せない。 「あんた、高校生の頃にも、こんなことしてたのかよ。相手、誰だよ」 「……んっ」  田辺の長い指先が、二人の屹立の先端を掴んだ。ゆっくりと揉みしだかれ、シャワーの水流に背中を叩かれている大輔は、たまらずに腰を揺らす。 「するわけ、ないだろ……。例えだ」 「やらしい例えだな。うっかり、興奮しただろ」 「頭おかしいんだよ。おまえは」  田辺の肩に掴まり、大輔は乱れる息をそのままにして、二人の身体の間へ視線を落とした。生々しい男の象徴が二本、切っ先を寄り添わせている。  煽情的とは言いがたい光景なのに、大輔の背は痺れた。  田辺と繰り返した行為が脳裏に甦り、猥雑さに目眩がする。 「あっ……く……」 「舐めてやるよ」 「……やめっ」  田辺がその場に膝をつく。額を押しやろうと伸ばした手が、反対に払いのけられる。先端がちろりと舐められ、ぞくりと震えた大輔は、慌てて身を屈めた。  舐められただけで射精してしまったら、目も当てられない。  ぐっと奥歯を噛みしめ、募る快感をやり過ごした。別のことを考えようと思う。仕事のこと、西島のこと、家庭のこと……。 「……三宅さん、萎えさせるなよ」  上目遣いに見られて、大輔は浅い息遣いで首を振った。嫁のことを考えたせいだったが、 「適当に、舐めてるからだろ」  自分のせいじゃないと悪態を返す。田辺はムッとした表情で髪を掻き上げた。 「じゃあ、しっかり仕事するよ。泣いても知らないからな」 「おまっ……」  待てと言う間もなかった。すぼめたくちびるで吸いつかれ、先端から熱に包まれる。ぬるっとした口腔内の感触に、大輔の膝がわなわなと震えた。  崩れ落ちそうになり、思わず田辺の頭部を掴んだ。  乱暴な仕草も快感のせいなら嫌がりもしない。大輔の性器を口に含んだまま、にやりといやらしげに笑う。  視線が合ったと同時に、大輔は目を閉じる。腰の奥からじわじわと溢れた熱が理性を侵して広がっていく。下腹部の内側がじっとりと濡れていくような気がした。  「あんたは、考えたことがすぐ、こっちに出るんだから……。俺のこと以外、考えるな」 「んっ、あ……」  屹立の裏側をねろりと舐め上げられ、声が出る。  田辺のうぬぼれを否定する余裕もなく、大輔はゆっくりと腰を突き出した。仕事にかまけていて、一週間に一度の自慰以外は触っていない場所だ。  何度も関係を持っている田辺の手管には勝てなかった。気持ちよくなる場所は、もうすっかり知られている。 「あっ……はっ、ぁ……ッ」  性器をしごくくちびるは、ぬるぬると動き、艶めかしくうごめく舌が張り詰めた薄皮を行き交う。  男になんか舐められたくもない。頭ではそう思いながら、感じてしまう身体の反応を止められない大輔は、浅い息を繰り返す。  濡れた田辺のくちびるの肉は、卑猥な性器に見えた。たまらないほど切なくなる。嫌だと思う気持ちの根本にある恐怖から、今夜も目をそらす。知ってしまっては後戻りできない。  そう思うこと自体がすでに溺れている証拠なのかもしれない。会うたびに、秘めた感情が少しずつ引きずり出されていくようで、大輔は混乱を抑えきれなくなる。  田辺も男だ。なのに、自分はこんなにも興奮している。 「うっ……ん、ん……」   強く吸引されて、太ももからぞわぞわとした感覚が生まれた。立っているのもつらくなる。  膝が田辺の肩に触れた瞬間、尻の肉を鷲掴まれ、指先が割れ目の奥をなぞった。大輔は息を詰めた。 「出る……っ、も……っ」  上擦った声が震えるのもかまわず訴えると、後ろを探っていた指が離れ、屹立の根元に絡んだ。そのまま、指とくちびるでしごかれた。こらえられない欲望が、出口を求めて迸る。  行き場をなくした手で田辺の耳を掴み、大輔は腰を屈めた。 「ふ、くっ……ッ」  逃げようとしたが、くちびるに追われ、いっそう深くくわえ込まれた。そして、両手首を掴まれる。 「あっ……ぅ、んっ……ん」  吸い出され、なおも舌先で先端をほじられる。達成感に近い快楽の後に訪れる、深い倦怠がもてあそばれた。はぁはぁと肩で息をついた大輔は、次の瞬間、目を剥く。 「……飲む、なっ」 「んー?」  田辺の喉がこくりと動く。 「すっげ、濃厚……。ほんと、抜いてないんだな」  満足げに見上げてくる田辺に両手を引っ張られ、大輔は崩れ落ちるように膝を折った。膝の上で抱き止められ、くちびるが重なる。  精液の味がするほどのディープなキスじゃない。チュッと恥ずかしいような音が鳴り、田辺はすぐに顔を離す。 「続きはベッドでしようか」  当たり前のように言われ、大輔は答えに迷った。  自分から呼び出したのに、行為を容認しているとは思われたくない。大輔の戸惑いをよそに、田辺は立ち上がった。平然とした態度で口をゆすぎ、シャワーを止めた。

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