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過去の話 後編
父と母が出先から帰ってくると、家は真っ暗だった。
父が風呂に入るというので、その間に母は食事を作りつつ、兄に帰宅時間を確認するメールを送信したところ、兄の部屋から着信音が聞こえてきた。
家に居るのかと、部屋の扉を開けると、兄の身体は足元を浮かせて吊り下がっていたそうだ。
話を聞きながら、その情景を思い浮かべて気分が悪くなる。
人とは、こんなにあっさりと死ぬものなのか…。
兄の自殺の原因は、オレが「もう、こんな事はやめよう」と言ったからだ。
その後、話し合おうと言った兄を無視した。
たったこれだけの事だが、兄にとっては死に値する出来事だったのだ。
兄弟…けれど、本当は血が繋がっていない。兄はそれを知り、オレのことを好きだと言ってきた。オレも兄が好きだった。
しかし、家族の中で、オレだけが他所者。
もし、兄との関係が親に知れたら、オレが追い出される。それが、怖かった。
だから、幸宏との関係を終わらせたかった。
その程度の、気持ちだったのかもしれない。
なのに、今では彼は存在感を増し、一生、オレの心に棲み続けるであろう。
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