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あれからの話 前編

あれからオレは、暗い部屋が苦手になった。
直接見たわけでもないのに、どうしても、幸宏が見つかった時の状況を想像してしまうのだ。 
あれから月日は経ち、今年の春から社会人だというのに、一人暮らしが…怖くて出来ない。
実家から通える範囲内で就職先を見つけた。 散歩がてらコンビニにでも行こうかと家を出ると、男が今まさに我が家のインターホンを押そうかという瞬間だった。
少し驚いたような表情を見せた後、男は笑顔を見せた。
「いつか。久しぶり」 兄の親友であった男。そこには、将也が立っていた。 将也と兄の幸宏とは、中学時代からの友人で以前は家によく遊びに来ていた。
オレもよく一緒にゲームしたり、勉強を見て貰っていた。
幸宏とは、ひょんなことからお互いが同性愛者であることを知り、友情は深まったものの好みでは無かったため、恋愛関係にはならなかったらしい。
オレと幸宏の関係も知っていた。
将也に連れられて来たカフェで、カプチーノに描かれている猫の絵をぼんやりと眺めながら、そんな話を聞かされる。 「今日来たのは、幸宏からメールが届いたからだ」 突然とんでもないことを告げられ、視線を上げる。
幸宏が亡くなったのは3年前だ。
しかし、インターネットやアプリのサービスで未来の日付を設定し、その日が訪れると送信されるサービスがあるそうだ。
サービスの終了や、メールアドレスが変わってしまっていたら勿論届かないので、運が良かったと言えるだろう。 「で?なんて書いてたの?」 そう聞いたものの、もしかすると、オレへの恨み言が書かれていたかもしれないと、すぐに後悔した。 「"3年間ありがとう。ここから先は、いつか の人生です。幸せになって欲しい"」

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