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第10話
目を覚ました黒は自分の部屋ではない事に気づく。
いや、正確には自分の部屋なのだが……
元のである。
やらかした……
黒は夜の事を思い出し、頭を押さえる。
急な発情で白を誘惑してしまった。
きっと、それで白も自分等を襲ってしまったのだろう。
なんて事だ。白の記憶に残ってないと良いのだが…… そんな都合よく行くわけないか。
白が傷付いていないと良いのだが。
黒はそれだけが心配である。
「王、お目覚めですか?」
そう声をかけ、部屋の扉を開けたのはラオンだ。
「ああ、ラオン。助かった」
ラオンが来てくれなければ、白の望まない結果になっていただろう。
それこそ白に消えない傷を負わせてしまう所であった。
「早速だが、公務にあたる。溜まっている仕事を持ってきてくれ、例の話しも詳しく聞きたい」
「は、ですが、王は今、発情期まっただ中、御休みになられては」
「薬を飲んでいれば問題無い。風呂に入ってくる」
黒はベッドから出るとお風呂場に向かう。
早く仕事を片付けて家に帰りたい。
「ミーハト様だ!」
「ミーハト様がお戻りになられた!」
「ミーハト様万歳!」
風呂から上がった黒が執務室に向かう廊下では噂を聞きつけたのであろう配下達がずらりと並び、黒に頭を下げながら万歳していた。
「皆、久しぶりだな」
そう声をかける黒だが……
困った。名前と顔が全く一致しない。
昔は配下全員の記念日すら覚えていたと言うのに……
それに戻って来たわけでは無いのだ。
また直ぐ消える予定である。
喜ぶ配下達には申し訳ないが、黒の気持ちは解らない。
黒は申し訳ないなと思いつつ、執務室に入るのだった。
「南の大国に不穏な動きが……」
そうラオンは説明をはじめる。
南の大国はよく勇者を立てて此方を襲ってくる国であり、此方も警戒しているのだ。
境界線付近には、植物系やスライムといった人間にも便利な素材がウロウロしているので、ついつい境界線を超えて来てしまう様なのだが、どうやらその狩り方が異常でレベル上げをしている様だと言うのだ。
以前から植物系やスライムを倒してレベル上げや商売をする者は多く居るが、もしかしたら国民の総力を上げ、また戦争を目論んでいるのではないかと言うのがラオンの結論である。
「お前が境界線付近に魔物を集めて人間を襲う目論見を立てていたと聞いたが?」
確か白のそれの討伐に向った筈である。
人間側とて身の危険は守らなければならない、人間と魔物が争うのは嫌だが、仕方ない事であると黒は思っていた。
それがまさか己の配下であるラオンだとは、それを知った、黒は余計にラオンは変わってしまったのだと憤りを覚えたのだ。
「人間側の勢力を調査しようかと、あの辺は小国でまだ力も弱いはず。手初めにと思ったのですが、まさか貴方に出会えるとは思いませんでした」
ビックリです。と、苦笑するラオン。
彼らしい作戦だ。黒も少し安心する。やはりラオンは変わらない。
ラオンも人間は食料としか見ていないが、わざわざ取っ捕まえてまで食べたいとは思わない。人間を食べるなら鹿を食べる。
「城のシールドを強化しよう。城の扉を開け、魔物達には逃げ込む様にと……」
「それでは以前のニの前になります。此方からも先手を打たなければ、人間達が力をつける前に…… いっそ人間など滅ぼしてしまえば…」
「おいおい、お前は相変わらず血の気が多すぎるな。人間を滅ぼすなんてそんな事を口にするな。俺の母上も人間なのだぞ」
流石ライオンだけ有るのか、ラオンはどうも過激な事を口にする時がある。
困った様に溜息を吐く黒。
「ですが貴方の父君の命を奪ったのも人間! なぜ人間に肩入れするのです。人間はすぐ裏切る生き物です。貴方の寵愛していた人間だって……」
「あれは白の意思ではない。白の悪口はよせ。いいか、俺は命令を出したぞ」
「っ…… はい」
キッ! と、ラオンを睨む黒。ラオンは黒に忠誠を誓っていた。
王の命令は絶対である。
ラオンは不服そうな顔なれど、黒の命令を遂行する為に動くしかない。
ラオンは一度頭を下げて執務室を出る。
黒は溜まった書類を確認していた。
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