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第11話 R18

 黒を連れさらわれた白は直ぐに準備をし、南の大陸へ向け、旅立っていた。  昔より勇者を立てて魔王討伐を行っていたのは南の大陸である。不穏な動きが有るのはそこで間違いない筈だ。確か、本にもその付近で戦争が起こった事は書かれていたが、魔王の住処までは記されては居なかった。  南の大陸で情報を集めた方が良いと思ったのである。  溜まった書類を片付け終えたのは、城に来て四日目の真夜中になってからであった。  一息つこうと、ラオンが入れてくれたハーブティーを口にする。  白に施したマーキングの気配を辿る。  初めての夜に何となく白にマーキングを施した事を思い出して、気配を追ったのだ。  己の城に居るのだろうと思ったのだが移動している様であり、驚いた。  その航路は南の大陸へ向う航路だと直ぐに解った。  初め、南の大陸より招集が掛かったのかもしれないと考えたが、そうなるとあの場所の警備が手薄となり、そこから魔物に攻められ兼ねない。そんな危険はおかさないはずだ。  と、なると、白は自分達の話を覚えていたのかもしれない。白の目の前でラオンと口論になり、ラオンが発したセリフである。  此方側が不穏な動きを警戒するとなれば南の大陸であろうと頭の良い白ならば直ぐに解る筈だ。    南の大陸まではあそこからカナリ離れている。  途中で嵐になど巻き込まれ無ければ良いが……  黒は白が心配で、毎夜毎夜白の気配を確かめた。  二日前には無事に南の大陸につき、昨日までは気配を感じられていたが……  期限は三日なので、無理かも知れないと思いつつ、まだギリギリ感じる事は出来るかと思ったが、やはり、あまり感じる事は出来なくなってしまっていた。   ただ生きている事だけでも解れば安心である。   「王、薬を……」  ラオンが薬の時間だと黒に抑制薬を持ってきてくれた様だ。 「ああ、有難う」 「もう全て片付けたのですか? 流石王ですね。しかし根を詰め込み過ぎてはいけません。睡眠薬も用意いたしましょうか?」 「いや、寝れるよ」  黒はラオンから貰った薬を口の中に入れた。  水で流し込む。 「解りました。では、御休みなさい」 「ああ、おやすみ」  頭を下げて部屋を出て行くラオンに黒も声をかけた。  既に寝間着に着替え済みだ。直ぐに眠れる。  お気に入りのティシャツと短パンは白に破られてしまった為に、黒は仕方なくラオンが用意した寝間着を羽織っていた。  黒いナイトガウンである。  どうもスースーして落ち着かないが、仕方ない。  黒は電気を消してベッドに潜り込むのだった。  真夜中の事である。どうも体がおかしい。  熱い…… 「はっ…ん…あぅ、何で……」  おかしい、薬は飲んだ筈なのに体が……  何で、こんな……  黒は体の熱に困惑する。抑制薬を飲んだ筈なのに、間違いなく自分は性的な興奮を覚えているのだ。 「う、あ…… や……」  どうしたら良いのか解らず、黒はシーツを鷲掴みにし、何とかやり過ごそうとした。  黒の発情期は重いものではなく、本人でも気づかないか、少し体が熱っぽくなる程度である。  こんな風になるのは初めてで、黒はどうしたら良いのか解らない。  頓服薬を飲まなければ……  黒は力なく壁を叩く。隣の部屋はラオンの部屋。気付いてくれ…… 「王……」 「はっ、う、ラオン?」  今、壁をノックしたばかりだと言うのに、もう来てくれたのか。  それとも隣の部屋まで匂いが行ってしまい、気付いて来てくれたのか。  どちらにしろ気付いてくれて助かった。 「頓服薬を……」 「ミーハト様」 「えっ……?」  薬を寄越すどころか、ギシッと音を立ててベッドに上がってくるラオン。その瞳は獲物を捉えた獣の目をしていた。 「だっ…… 誰か! っ……」 「声を上げても無駄ですよ。既に人払いをしましたから」 「なっ……」  ラオンは自分の放つ香りに当てられてこんな暴挙に出たのだと思った黒は声を上げ、他の者に助けを求めようとした。しかし、ラオンは黒の口を抑え、ニコリと微笑む。  人払いを済ませただと?  どう言う事だ。 「貴方に飲ませたのは抑制薬では有りません」 「なっ……何だと?」  では、あれは…… 「媚薬です」  黒の耳元で囁くラオン 「び…やく?」  媚薬と言ったのか? まさか、そんな。  何故??  「私は貴方のお父上に頼まれたのです、貴方を危険からお守りする様にと……」  何を言ってるんだコイツは、今まさに俺を危険晒しているのは目の前のお前だ。  黒は驚愕に目を見開きラオンを睨む。 「人間に押し倒され、今にも純潔を奪われそうになってる貴方を見て私がどう思ったと思います。人間なんかに襲われるなんて。貴方ともあろう方が…… 人間と交われば貴方の力は確実に弱まってしまう。それは危惧する事態です。ならばいっそ貴方を私の物にしてしまてば……」 「グッ……ラオン、貴様……」  信頼していた部下に裏切られた気分だ。彼が出す薬を、自分は何の疑いもなく口に含んでしまった。  ギリギリと、奥歯を噛みしめる。 「私の番にする」  ラオンはそう宣言し、黒の首筋に噛みつこうとした。  体に力が入らず、上手く抵抗できない。  黒は反射的に短剣を抜き取り、己の喉元に突き立てた。 「お前が俺を番にすると言うならコレで自分の喉を掻っ切るか、舌を噛み切る」 「体に力が入らない癖に何を言ってるんですか」  ラオンは短刀を黒の手を叩いて奪い去ると、遠くに投げた。  そして、口には舌を噛み切らない様にと、布を詰められる。 「ん、んん…フ、んん!!」  抵抗する様に声を上げ、ラオンを睨む黒。 「解りました。番にするのは諦めて差し上げます。しかし、貴方と交わり、貴方を完璧な力を与えるます。あの人間に取られてしまう前に…… 私は貴方を守りたい」  ラオンは何処か哀しそうな顔を見せると、黒のナイトガウンを剥ぎ取ってしまうのだった。

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