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第15話
例の飛行機で直ぐに城に戻った白は広場に向った。掲示板にDNAの検査票を張り出し、「僕は王と妃の息子です! 魔王討伐は辞めましょう! 魔王様は僕の嫁です!!」そうステージに上がって熱弁した。
人々はあの人何を言っているんだろうという顔をしたが、どっからどう見ても前の勇者にソックリである。皆絵でしか見たことが無いが、それにしてもソックリのだ。勇者の先祖は王様であり、もしかしてと思ってしまう。
「黒豹で半獣である魔王は僕の育ての親であり、嫁なんです! そんな人を討伐しようとはどう言う了見なんですか!!」
と、マイクで怒鳴る白に、人々は呆気に取られていた。
「お前がシャルルだな!」
突然、壇上に上がって来た男。手元にはナイフが握られていた。
白は気づくのが遅れてしまった。既に懐に入られている。
駄目だ。刺されると思った。
「白!!」
名前を呼ばれ、襲ってくる筈の傷みも無く。誰かに抱きしめられている事に気付いた。
「え? 黒??」
あれ?? 元に戻ってる。何で??
魔力を失うとか、人間になりたくないとか言っていなかっただろうか。
それに確かに、閨では人間の姿になっていたのに…… 耳と尻尾だけはそのままで、何とも可愛らしい姿であった。
「キャー!! 魔王よ!!」
「黒豹の半獣。間違いなく魔王だ!!」
「魔王が王様を蹴り飛ばしたわぁ!!」
そう叫ぶ人々、どうやら白を襲い、黒が壇上から蹴り飛ばしたのは現王であったらしい。
「落ち着いてくれ、俺は人間を襲うつりはない。和平結びに来た」
そう声を張り上げる黒。
「正真正銘の王がこの方ならば、この方と誓おう。魔族は人間を襲わないと。それと共に人間側が此方に攻め入ってくる事も止めて頂きたい。もし、此方からソチらに攻め入る輩が居るのなら、我々も力を貸し一掃する事を誓う!」
黒はそう誓いの言葉を述べると白の前に忠誠を誓う様に跪いた。
「皆、こう言う事なんだけど、解ってくれますか?」
そう白は民衆に投げかける。
その顔の愛らしさに、国民は瞬時にメロメロである。
そして、何故か
「わー!! 姫君が帰られたぞ!」
「姫君だぁ!」
「我々の姫君と、魔王の結婚式の準備をしろ!!」
等と急にお祭り騒ぎになってしまった。
いつの間にか黒が蹴り飛ばした現王は近くにいた近衛兵により捕まり、そのまま連行されていく。
「え、まって、僕が王で、こっちが姫君なの!! まって!!まって!!」
慌てる白。どうも勘違いされている様だ。
「まぁ、祝福ムードになったんだ。良かったじゃないか」
「え? うん。良かったけど…… お城に僕のお母さんが居るんだけど、挨拶に来てくれますか?」
「勿論だよ」
黒と白は見つめ合うと、フフッと笑い合い。手を繋いで城へとも向かうのであった。
人々は二人を祝福し、花びら等を撒く。早速お祭りの準備に取り掛かるのであった。
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