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*4.出会い②
奏太はようやく扉から離れて奥のソファへと移動した。
その背もたれに引っ掛けられているジャケットは紛れもなく、昼間白坂が着ていたものだ。それを眺めながら、なんだか落ち着かない気持ちで白坂を待った。
白坂はバスローブ姿で出てきた。彼はやはりこちらを見ず、ベッドに腰掛けるなり、照明を暗く落とした。
「悪い……、顔が見えると萎えるから」
何も見えないほどの暗闇になってしまい、ただでさえ味気なかったホテルの一室がより味気なく感じる。白坂はベッドを叩いた。
「さっさとヤろうぜ」
「いや、俺シャワーまだで……」
「なんだよ、早く浴びてこいよ」
不機嫌に舌打ちした白坂に奏太は眉を寄せた。奏太がシャワー浴びなかったのは、一緒に入ろうと考えていたからだ。なのに、白坂はそれを確認もせず、さっさと浴室へと行ってしまったのだ。相手が白坂でなければ、言い返していたかもしれない。
奏太は足早に浴室へ行った。生ぬるいシャワーを浴びながら、乾いた笑いを漏らした。
「俺……、マジでシラマとヤんの?」
呟いた言葉は水音とともに消えていく。まだ現実味のない感覚を引きずりながら、バスローブをまとって部屋に戻ると白坂はベットに座り煙草をふかしていた。
(煙草、NGって書いたのに……)
匂いがつくので勘弁してほしかった。奏太はげんなりした。ここまで来ると、帰りたい気分になってくる。
「早く来いよ」
ベットを叩いて催促した白坂に、奏太は不機嫌に答えた。
「え、もうするの?」
「時間がないんだよ」
情緒もなにもあったもんじゃない。
白坂の性急さは奏太のペースに合わなかった。奏太はもっと会話や触れ合いを楽しんでから行為に進みたかった。なんならイチャイチャするだけで挿入は、ついでぐらいで構わない。
(もう言っちゃおうかな。あんたの生徒だよって。……でも、なんか、もったいないよなぁ……)
奏太は内心迷いながら、今着たばかりのローブを脱ぐと、ベッドに座る白坂を後ろから抱きしめた。彼のバスローブの中に手を差し込んで、鼓動と体温を確かめるようにして手のひらを滑らせた。肩に引っ掛けてあっただけのバスローブを脱がせると、さらに互いの体を近づけるようにして抱きしめた。肌が触れ合う感覚が気持ちいい。奏太は瞼を閉じてその温かさを享受する。
キスをしようとすると、拒むように顔を背けられたので、代わりに首筋に唇を落とした。跡が残らないよう丁寧に背中に口付けていると、白坂が盛大なため息をついた。
「お前、こういうのが好きなの?」
「お前じゃない、ソウタ」
名前で呼ぼうとしない相手に訂正したが、相手に改める様子はない。白坂は奏太から逃げるように体を離そうとした。
「そういうのいいから」
「良くない。いきなり挿れたら痛いでしょ?」
逃げる白坂を抱きすくめるその下肢に手を伸ばした。下着の中にあったまだ柔らかい陰茎を柔らかく握ると、白坂は小さく肩を震わせた。
「……ッ……」
彼はそれ以上逃げようとはせず、耐えるようにシーツを両手で握っている。奏太は陰茎の奥にある秘部に指を伸ばすと、そこはすでに柔らかく濡れていた。
「もう……俺……、準備してるから……」
眉を寄せて切なげな声をあげる白坂は、奏太が知る彼とは別人であった。彼は四つん這いになって奏太の中心に顔を寄せた。そしてまだ力を持たない奏太の陰茎をためらいなく口に含んだ。
(……シラマが俺のを、舐めてる……)
白坂の舌遣いが慣れていることもあって、奏太の中心はすぐに勃起した。済ました顔をして自分を馬鹿にした教師が自分の性器を咥えている。その状況が奏太の加虐心をひどく煽った。
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