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*31.自宅②(白坂視点)

※女性とのベッドシーンがあります※  彼女は微笑を浮かべて、白坂のシャツを引くと甘えるような声を出した。 「一緒にシャワー浴びる?」  その猫なで声に今度は嫌悪感に背筋が凍った。  紗絵のことは人間として好きだし尊敬もしているが、性的な目で見たことは一度もない。  彼女を傷つけないためになるだけには応えてきたが、今はタイミングが悪すぎる。まだ尻に違和感が残ってる状態でとてもじゃないが妻とセックスなどできない。   「魅力的な誘いだけど、また今度な」  角を立たせないようにやんわりと伝えると、機嫌を取るようにショートカットの黒髪を撫でた。まだ何か言いたそうな彼女を置いてさっさと脱衣所に行ったが、そんな白坂の後を追ってくる。 「もう、なんだよ」  軽く笑みを浮かべて妻を振り返るが、内心は怒鳴って追い出したい気分だった。彼女はどういうわけかその気らしく、さっき買ったばかりのワイシャツのボタンに手を伸ばした。固まる白坂を無視して、手入れされた指先がボタンを次々と外していく。 「じゃあ、脱がせるだけ」 「そんなサービス頼んでないけど」 「えー、だめ?」  しつこいな。  そんな言葉が出かけて口を結んだ。その白い手がベルトに降りたのを見て、とっさに手首を掴んだ。 「きゃっ」  短く悲鳴をあげた彼女が何事かとこちらを見上げる。ボトムの中は履いていない。それをバレないよう、波風立てずに切り抜けるには、この誘いに乗る以外の方法が思いつかない。白坂は泣きそうな気持ちになりながら、無理やり笑顔を作って彼女を見下ろした。 「過剰サービスのお姉さんにお仕置きしていい?」 「……いいよ」  期待を込めた潤んだ瞳がこちらを見つめている。自分もついさっき、こんな目であの男を見ていたのかと思うと、ぞっとした。  白坂は深く妻に口付けると服を着たまま浴室に押し込んだ。 ______  二人は(もつ)れるように絡み合い、背後から彼女の身体を弄りながら、なんとかスラックを脱ぎ捨てた。行為の最中に脱ぎ捨てた衣服を気にする者などいないだろう。  次の問題はどうやって自身を奮わせるかということだった。普段でも苦労するというのに、先ほど散々ホテルで搾り取られたばかりだ。どうにも力を持たない白坂自身に気づいた紗絵が足元でひざまづき、それに口を含んだ。  白坂は小さく息を吐くと、両目を瞑って集中する。  残念ながら、彼女の口淫は上手とは言い難い。  ここは自分でなんとかするしかない。興奮できればなんでもいい。AV、妄想、過去のセックス。自分の中にある情欲の琴線を拾い集める。  ぼんやりと腹の下に熱を感じ始めた時、耳元で囁かれるような声が脳裏に響いた。 『……シラマ』  それが奏太の声だと気づいた瞬間、驚きにビクンと身体が跳ねた。反射的に彼女の頭を引き剥がした。 「ッ!?」 「どうしたの?」 「いや、なんでも……」  そう言いかけた時、自身が緩く勃ち上がっているのが見え、白坂は顔が歪めた。 

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