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*32.自宅③(白坂視点)
※女性とのベッドシーンがあります※
驚いた顔でこちらを見上げる妻の顔が、昼間の奏太と重なる。その亡霊は白坂を見透かすように、意地悪く笑った。
『……ねぇ、どうしてほしい?』
(やめろ)
あいつだけはダメだ。あんなので興奮できるわけがない。
しかし下手な口淫が奏太に焦らされていると思うと、みるみる熱が集まって硬くなっていくのがわかる。
「……ッ」
『なんで? あんた、こういうの好きだろ』
(うるさい、うるさい、うるさい)
追い払おうとすればするほど、彼の亡霊が白坂の思考に纏わり付いて離れない。もがけばもがくほど沈んでいく沼だとわかっていても、抵抗せずにはいられなかった。
(やめろ、向こういけ)
稚拙な舌使いに思わず声をあげそうになる程、白坂の身体は熱に浮かされている。
礼を言って止めさせると、彼女はあっさりと白坂を解放した。壁に向かって立たせ、腰を引くとゆっくりと挿入する。抽送を始めると、女性特有の高い声が浴室に響いて一気に空気が艶めかしくなった。
それに酔いながら下腹部に力を入れると、腹の奥にわずかな違和感を感じた。そして、それが奏太が吐き出したものだと気づいて、白坂は息を飲んだ。あれだけ掻き出したのにまだ残っていたようだ。それが身体の振動をきっかけに重力に従って降りていく。尻に力を入れて止めようと試みるも、それもむなしく体外に吐き出される。その気持ち悪さに全身が粟立った。
「……ひッ」
内腿に伝う感触にわずかに声が漏れ、誤魔化すためにシャワーのノズルを乱暴にひねった。生ぬるい湯が二人の上に降り注ぐ。垂れた精液が無数の湯に混じって排水溝に吸い込まれいく。亡霊が後ろで笑いを噛み殺している。
『あんたケツから俺のザーメン垂らしながら、奥さんとヤってんの?』
「ぁ……、ふ……」
ねっとりと囁かれているのか、それとも耳を舐められているのか、どちらにしてもそこにあの男がいると思うだけで、どうしようもなく身体が熱で疼いた。しかし身体に心がついてこない。
『すごい興奮してるじゃん。そんなに気持ちいいの? ……変態』
(もうやめてくれ。頼むから……)
『嘘つき。もし、俺がここいたら大股開いて求めるくせに』
白坂は反論できなかった。
図星だったからだ。
目の前にいる自分に貫かれ、喘ぐ彼女が羨ましい。
もしここに奏太がいたら、中をめちゃくちゃくに掻き乱して身体の奥の疼きを慰めてほしいと願うだろう。
素直に認めた白坂に満足したのか、亡霊は優しい声色で囁きながら、後孔をそっと撫でた。
『そしたら、また中出ししてあげるよ』
「や、やだ……」
現実と妄想の区別もつかず、ほとんど無意識に白坂は首を横に振った。上ずった声が漏れ、彼女の嬌声と叩きつけるような水音にかき消される。顔も体も火が出そうなほど熱い。
触れてほしい。奏太に触れてほしい。
そうはっきりと自覚した時、尻肉を暴き、蕾に陰茎を押し当てられる感触が確かにした。
『シラマ、一緒にイこ?』
「ぁ、や……ッ!」
挿入 ってくる。
そう感じた瞬間、白坂は果てた。痺れるような快感に何も考えられない。今日何度も感じた絶頂を再びゆっくりと味わった。
ようやくその絶頂から降りてきた時、現実の光景を目の当たりにして、白坂は絶望した。壁に押し付けた紗絵がこちらを振り返って薄く笑った。
「すごく気持ち良さそうだったね」
(……最悪だ)
なんとも言えない引きつった笑みを浮かべて、その柔らかな身体を抱き寄せた。
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