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二丁目のホテル③

 扉を開けた青木を押しのけるようにして、白坂は部屋に入った。 「おい、ヤメだ」 「はっ? 何かあったのか」  困惑する青木を無視して、ベッドに行くと裸に剥かれ、両手を拘束された奏太が横たわっていた。  それを見た瞬間、腹の奥から怒りが湧き上がり、彼の両手を縛る紐を乱暴に引っ張った。 「外せよ、こんなもの!」 「どうしたんだよ、お前急に……」  肩に手を置いた青木を振り払い、奏太の頬を軽く叩いた。 「おい、野田、起きろ。帰るぞ」  しかし奏太は僅かに眉を寄せただけで起きようとしなかった。白坂は再び怒鳴った。 「野田!」 「マコ、そりゃないんじゃねぇのか?」  青木が怒りを抑えた低い声が背後から響いた。この計画は白坂から持ちかけたものだ。こんな形で裏切って、青木が怒るのも当然であった。  しかし白坂はこの男に謝って繕う気持ちなどなかった。そもそもこんな男に頼ろうとしてしまった自分が馬鹿だったのだ。 「近寄るじゃねぇ」 「ふざけんなよ、お前!」  拒絶した白坂に青木は激昂し、空気はいよいよ緊迫したものになった。  突然、青木は背後から突き飛ばしてきた。奏太の上に折り重なるようにしてベッドに倒れ込んだ。襟首を掴まれ、真上から凄まれた。 「このままぶち犯してやろうか」 「やれるもんならやってみろ、クソ野郎」  白坂も下から青木を掴みあげ、二人は揉み合いになった。  ベッドに押し付けようとしてくる青木に抵抗していると、その手が白坂の首に伸びた。 「ぐっ……、てめぇ……!」  青木の目が鋭く光ったと思うと、その手に体重が掛けられた。首筋に絡んだ手を掴みながらもがくが解けない。首を絞められ、視界が狭まっていった時、呂律の回らない少年の声がした。 「もひもひ……警察ですか? ……はい……、なんか……変な薬飲まされて……」  奏太がスマホを片手に青木を見ている。力のない瞳だが、その目は座っていて、殺気が感じられた。  その殺気に一瞬たじろいだ青木は、奏太と白坂を交互に見た後、ようやく離れた。 「クソが! 覚えてろよ!」 そう吐き捨てると、青木はドアを蹴破るようにして出ていった。

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