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*二丁目のホテル⑦

 そんな彼の陰茎に丁寧にスキンを被らせる。何かちょっかいをかけてくると思ったが、奏太はシーツを握りしめて切なそうに眉を寄せていた。  余裕がないのは彼も同じようだ。  白坂は勝ち誇ったように笑ってやった。目の前の顔が悔しそうに歪む。  次の瞬間、奏太に尻を叩かれた。部屋に乾いた音が響き、尻が熱を帯びたように熱くなる。   「……ぁッ」 「笑ってないで、早く挿れて」 「叩くなよ……」  思った以上に音が響いて、白坂は恥ずかしくなった。不機嫌に言ったつもりだが奏太の目にはどう映ったのか、意外そうに目を見開いていた。 「こういうの好きなの?」 「好きじゃね……ぅぁッ!」  言い終わる前に再び尻を叩かれる。ぱちんという間抜けな音に驚いて、白坂はバランスを崩して奏太の方へと倒れ込んだ。その後も二、三発叩かれたところで、ようやくその手首を掴んだ。 「お前な……」 「シラマの好きじゃないって言葉ほど当てにならないものはないよね」  奏太は楽しそうに笑っている。 (このドSが……!)  恨めしそうに睨んだところでなんの効果もない。叩かれて熱を帯びた二つの尻肉にそっと手が這わされると、白坂は小さく息が漏らした。 「……ほら、早く奥まで挿れて」  その手の導かれるまま、白坂は硬く張り詰めた陰茎にゆっくりと腰を下ろした。先端を飲み込むのに苦しさを覚えるが、それを抜ければ快楽が待っていることは何度も経験済みだ。  もう無理だと訴える身体の信号を無視して白坂はゆっくりと腰を下ろしていく。自分の中に挿入っていく奏太を嫌という程、意識してしまう。やがて苦しい部分を通り抜けると吐息とともにわずかに身体の力が抜けた。 「……ふっ……入ってくる……あ……ぁ……――ひぐぅッ」  下から奏太が突き上げてきた。腹の奥の衝撃に呻いた。痛みを伴ったのは一瞬で、腰を掴まれ、先端を押し付けるように充てがわれるとじわりとした快感が全身に広がっていく。  身体から力が抜けてしまい、跨っているにも関わらず、彼のいいように身体を揺らされる。動くたびに快楽の波に飲み込まれて溺れそうになる。   「待って……奏太……突くなぁ……ぁ……ぅぁ……あ……」 「すぐ……イっちゃ……駄目だよ」 「ひぅ……ぅぅう……」  奏太の指示に白坂は喘ぎながら、何度も頷いた。  先端が先走りで濡れた白坂の陰茎は、律動にあわせて切なく揺れている。行き場を失った快楽が処理しきれずに涙となって溢れた。開けっ放しの口からは涎が垂れている。こんな顔をこの男に見られていると思うだけで悔しいはずなのに、そんな意地を溶かすほどの気持ち良さだった。  ……これが欲しかった。ずっと待ち望んでいた。 「気持ちいい……」  満たされた気持ちは言葉になって唇から漏れた。ああ、しまったと、思う自分もどこかにいたが、止められない。 「お前のちんこ……、本当……気持ちいい……」  埋め込まれた陰茎がびくっと脈打ったのがわかった。奏太は動きを止め、血走った目を向けている。今にも人を殺しそうな獣の瞳だ。そして思い切り下から突かれた。 「んぅぅぅ!」  腹奥を突き破られそうな衝撃に白坂は思い切り仰け反った。その拍子に奏太が起き上がって、覆いかぶさるように押し倒してきた。   「なんだよ、それ……反則だろ」 「おま……動けないんじゃ……あぁぁッ」  体勢が変わり、抜けかけた陰茎を再び深く打ち込まれる。奏太は白坂の膝裏を持ち上げて、今度は上から腰を打ち付けた。突かれる場所が変わり、白坂は再び高く喘いだ。 「そう……た……、駄目だ……そこ……奏太ぁ……」  泣き言を口にすると、一層激しさが増す。白坂は訳も分からず、泣きながらその背中にしがみついた。二人は汗だくになりながら、身体を密着させる。熱い吐息を漏らしていた奏太がかすれた声で白坂の名前を口にしたのはその時だ。 「誠……誠……」 「や……やめろ……」  名前を呼ばれた瞬間、もう沸点を通り過ぎていたと思った体温がさらに上がった気がした。埋め込まれた奏太自身を奥からきゅっと締め付けてしまう。 「呼ぶな……ぁ……ひぃ……っ、ぁぁッ……んんぅ……」 「……誠……好き……だ……」  身体の……いや、胸の奥で熱いものが弾けた気がした。その熱はあっという間に白坂の全身を包み込み、我慢する暇もなく射精してしまった。ナカは痙攣したように彼を締め付け、奏太は苦しそうに呻いた後、達した。今まで感じたことのない幸福感が波のように打ち返して胸に収まっていく。  あまりの深い快感に白坂はしばらく動けなかった。  好きだと言われて達してしまった……。その事実に気づいたのは、達してから随分経った後だった。

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