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22カラット~酒場の音~

初めて竜に会いに行った次の日から毎夜俺はアゲハと街へと出かけては荒稼ぎしていた  街は活気がある場所もあるが、城から離れた街へ行けば身寄りのない子供や怪我をした兵士達が住んでいる錆びれたスラム街もあった。 俺は城から一番近い【キイの街】の酒場へ毎日場所を借りて歌や踊りで稼いでいた  そこの女将さんに料理を教えたところ以前よりも客が増えたらしく、場所代はタダの上に売り上げも上がった事で俺に給料が出るようになった。 初めて給料を出された時、この黄色い石の中にお金が入っていると女将さんに教えてもらった。 他にも宝石を加工した物を日常生活で使っているのは殆どが貴族や王族で、一般の人は鉱物を加工した物を使っているらしい。 「いらっしゃい!ああ!お嬢ちゃんかい待ってたよ!今日もアンタを見に客が来てるよ!ついでに、うちの息子もね!」 今夜も酒場へ行けば女将さんが俺を歓迎してくれる、 俺は無属性の力で水色のカラコンやらメイク道具を出してルークではなく【TUBAKI】としてこの街へ来ていた。 顔立ちは少し違うが・・メイクをすれば妹、椿希(つばき)の4歳の頃の姿に似た顔に仕上がった。 「よお!待ってたぜツバキ!今日は会ってもらいたい奴がいるんだ、ちょっと一緒に来てくれるか?」 そう言って俺を抱き上げたこの男は女将さんの息子で、 以前城で儀式があった日に【審査の部屋】で一人だけ笑っていた あの時の騎士だ。 茶色い短髪に緑の瞳をした大柄のこの男はよく家に帰ってきては店の手伝いをしている。 「おいカルト!この子だよ!かっわいいだろ~歌も踊りも この歳で前に来た旅芸人達より上手いんだぜ!しかも、この料理この子が母さん達に教えたんだってよ!カルトさっき言ってただろ、今まで食った中で一番美味いって!」 「フェルド・・ちょっと声を落とせ、うるさいんだよお前・・あとガキを連れて来るな俺はガキが嫌いだ」 カルトと呼ばれた男は眉間に皺を寄せ不機嫌そうにポテトチップをパリパリ食べながらそう言った。 金色の腰まである長いストレートの髪に紫色の瞳、唇の右下には黒子(ほくろ)がある綺麗でどことなく色気のあるその男を見て『あ、こいつ売れそう・・』と思ってしまうあたり俺は死んでも職業病は抜けないもんなんだなと思った・・ 「まあ、そう言うなって!ツバキ前にも話したろ、俺は城で第七騎士団で団長やってるって!こいつは、うちの副団長やってるカルトだ!無愛想だが実力は俺以上なんだぞ!こいつ相当ツバキの料理が気に入ったらしい!見ろ!俺が居ない間にもう6皿も食ってやがる」 いや・・食べすぎだろ・・ 俺はその皿を見て驚いた一皿に4人前の料理を入れる大皿が ポテトチップ3皿とジャーマンポテト3皿あった。 最近客の人数が増えてきた為、大勢で来た客には  この大皿で取り分けて食べてもらうようなシステムにした、 その皿をまさか一人で6皿も・・ 俺も結構食う方だが、ありえない・・ それともポテトが異様に好きなだけか?・・・ん?あれ?カルトと言う男が食べていたポテトチップの皿を見て俺はいつもとは違う違和感を感じた 「あの・・フェルドさんちょっと気になる事があるので降ろしてもらえますか?」 「おう、どうした?」 フェルドが俺を降ろすと俺はすぐにカルトの食べている皿からポテトチップを一枚とって食べた・・ 「お前・・人の皿から食い物を奪うとはいい度胸だな、しかもこの俺から取るとは・・」 「やっぱり・・カルディアさーん!アーネさーん!塩と砂糖間違えてますよー!」 何てベタな間違えを・・ 「何だって!?アーネ!さっきポテトチップ用の追加の塩持って行った時に砂糖と間違えたねアンタ!」 俺の声に反応して2人が慌てて走ってきた、 カルディアはこの店の女将でアーネはカルディアの妹である。 「あらヤダ!どうしましょう!?」 「アンタが砂糖の袋を持って行ってからポテトチップを出した席はどこだい?」 「確か・・あの端の席とその隣と後はそこの副団長さんのところかね・・」 「皆初めての客だね、私はあっちの席の客に謝ってくるからアンタは料理を作り直しておいで!今度は間違えるんじゃないよ!」 「ゴメン姉さん!後よろしくね!」 アーネはそう言うと急いで厨房へと走って行った 「お嬢ちゃんが気付いてくれて助かったよ!今日は店の方の手伝いはいいから、うちの馬鹿息子と副団長さんの相手をしてあげてくれないかい?給料はいつも通りに出すよ!じゃあ私は客に詫び入れて来るから、フェル!お嬢ちゃんに何か注文しておあげよ!それと2人共その子を苛めたら承知しないよ!」 この2人と一緒なんて嫌なんですけどー・・っと言う暇も無いくらい女将さんは言い終わると同時に急ぎ足で去って行ってしまった。 「あの!私は、お2人のお邪魔になるといけないので・・これで失礼しますね!」 俺も先ほどの女将さんの様に言い終えると急ぎ足でいつも歌っているステージへとあがった 3曲歌ってステージを降りるとフェルドが待っていたかの様に俺を抱きかかえて自分のテーブルへと連れて行った。 「ツバキ!食い物適当に頼んだから好きなの食えよ!」 「えっと・・自分で座りますから・・」 俺はフェルドの膝の上に座らされていた 「駄目だ 君はすぐ逃げようとするからな!」 逃げたのに気づいてたのかと、ちょっと驚いて振り返りフェルドと目が合うと彼はニヤリと笑った 「いつも俺が来ると避けるようにしてるだろ?何でかな・・俺ツバキに嫌われるようなことしたか?」 「いえ・・そんな事は・・ただ、剣を持っていたので少し怖かっただけです・・」 「そうか、剣が怖かったのか、でもこの剣は君を傷つけたりしないから怖がらなくて大丈夫だよ!何かあったら俺がこの剣で君を守るから安心してくれ!」 「フェルド・・そんな子供を口説いてどうするんだお前は・・」 作り直されたポテトチップを食べいたカルトが冷たい目をして言った 「何言ってんだカルト!将来この子は絶対良い奥さんになるぞ!他の野郎に取られる前に今から口説いて落としておかないと!」 21の男が4歳の少女に向かって何言ってんだか・・ 俺がため息をつくと前に座ってるカルトが自分が食べていたポテトチップの皿を俺の前に置いた。 カルトの方を見ると一言だけ「食ってみろ」と言われたので何だかよくわからないが一つ摘んで食べると 「今度は間違いなくお前が教えた通りの味か?」 「え?はい、間違いありません」 「・・そうか・・これはこれで美味(うま)いが・・」 カルトは何だかちょっと不満そうな顔をしていた、 もしかして甘いポテトチップの方がよかったのか?・・砂糖の付いたポテトチップを3皿も食ってたしな・・ 「あの、カルトさんはもしかして甘いほうがお好きなのですか?」 「お!ツバキよく気づいたな!こいつブドウや桃とか甘みの高い果物を良く食ってるし、紅茶飲む時には砂糖を死ぬほど入れるくらい甘党なんだ!甘いもの食ってる時はあの眉間の皺が無くなるんだぜ!」 フェルドがカルトを指差し笑いながら言うと 「おい!余計なことは言うな!餓鬼お前もだ・・」 カルトが指差したフェルドの指を叩き落とし、俺を睨み付けてきた。 「よろしければ甘い物を何か作ってきましょうか?」 この場所から早く離れたいし・・ 俺はカルトにニッコリ笑いかけて言うと何故かスッと目を反らされた 「出来るだけ早く持って来い・・」 「はい!急いで作って来ますので、少々お待ち下さい。では失礼いたします」 俺はフェルドの膝の上から降りて二人にペコッと頭を下げると厨房へと急ぎ足で逃げた。 俺は厨房へ行ってチョコレートパフェを作り、足りない材料や生クリームなどの時間の掛かるものは無属性の力で出した。 それをカルトに持って行ってくれるよう女将さんに言うと パフェを見て「何だい!?これは!?」と驚いていた、 今度作り方を教えるから今日は帰らせて欲しいと頼むと 「ああ!いいよ!あの2人の相手なんかさせちまったんで疲れさせちゃったかね・・悪い事したね・・」 「いえ!そんな事はありません!この国を守っている騎士に会えるなんて夢みたいです!凄いですね息子さんが騎士なんて!」 「そうだね・・騎士なんて そうそうなれるもんじゃないからね・・あの子は私にとって自慢の息子さ・・」 そう言った女将さんの表情が辛そうだった 「あの・・どうかしたんですか?」 「いや・・何でもないんだよ・・はい!今日の給料だよ!お疲れさん!明日もまた来ておくれよ!」 女将さんは辛い気持ちを振り切るように笑顔で俺に給料の入った石を渡し頭を撫でてくれる。 「カルディアさん・・私は何も出来ないかもしれませんが、辛い事があるならお一人で抱え込まないで誰かに話せば少しは気持ちが楽になるかもしれないです。カルディアさんが辛い顔をしていると私も悲しいです・・何か心配事があるのなら話してみませんか?」 俺が頭を撫でてくれていた女将さんの手をギュッと握ると女将さんが俺に勢いよく抱きついてきた 「お嬢ちゃんは優しくて・・良い子だね・・フェルも優しい子なんだよ・・城から出るには色々と面倒でねぇ・・城で働いてる人間は滅多な事じゃ街へ戻ってこないんだよ・・それを、あの子は・・私を心配して・・」 そう、外出する時は行き先は勿論 持ち物などのチェックをするようだ。 それに、城の情報などが漏れたり物が無くなったりすると外出した者が真っ先に疑われるので城で働いている人はそれが嫌で殆ど外出はしないようだ。 「そんな あの子が・・選ばれちまったのさ・・悪魔との戦争に・・あの戦争に行く人間は誰も帰って来た事がないんだよ・・私は・・どうしたら・・」 俺を抱きしめながら泣き出してしまった女将さんの背中をさすりながら 「大丈夫・・帰ってきますよ フェルドさんは騎士団長に選ばれる程の実力を持った強い人です!必ず帰ってきます」 「それは・・またお嬢ちゃんのよく当たる【勘】ってやつかい?」 「はい!」 「アハハ!そうかい!だったら安心だね!だってお嬢ちゃんの勘は今まで外れた事がないからね!料理も店の内装なんかも、その勘ってやつで大当たりして お陰で家の店は大繁盛してるんだ!ありがとう・・お嬢ちゃんに話して良かったよ・・」 女将さんは俺の頭を再び撫でるとスクッと立ち上がって 「お嬢ちゃんのお墨付きも貰ったし!私は息子を信じて帰ってくるのを待つよ!」 「はい!絶対に大丈夫です!」 必ず俺が連れて帰ってくるさ・・ まさかフェルドと一緒に戦争に行くとはな・・って事は、あの副団長も一緒か? 「じゃあ、お嬢ちゃん気をつけて帰るんだよ!これちゃんと副団長さんに持って行っておくよ!」 パフェを持って女将さんが厨房から出て行った。 次の日お店に行くと、女将さんが「副団長さんが、お嬢ちゃんにって置いて行ったよ」と渡されたのはお金の入った石だった・・ 机の上に石の中に入ったお金を出すと  俺と女将さんはその金額に暫く開いた口が塞がらなかった 「・・相当美味しかったんだろうね・・とは言え・・この金額は家が一軒建っちまうよ・・」 「カルディアさん・・次に副団長さんが来た時に必ずこれ返して下さい・・受け取れませんって・・それに私お代は要りませんって言ったはずです・・」 「いやね・・私も言ったんだよ、急に帰ってしまうお詫びに これのお代は要らないってお嬢ちゃんが言ってたって・・だけどね・・あの副団長さんが必ずこれをアンタに渡してくれって言うもんだから・・副団長さんはいつ来るかわからないから、今度フェルが帰ってきた時にでも渡しておくよ」 「お願いします」 その後、そのお金の事で一悶着あり  俺は結局副団長さんにはお金を返せず、 女将さんに何かお店で使ってくれと言ったが女将さんにも受け取ってもらえなくて  少し離れた街に身寄りのない子供達や怪我をした人を保護する施設なんかをそのお金で建ててもらった。

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