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30カラット~毒の音~2

それも、その筈!なんと此方の商品!手に入れるのに俺の大事なオヤツと紅茶が約1ヶ月分もなくなってしまった! カールが城へ来た日、収納用の宝石を見つめながら  もっといっぱい入る石が欲しいな・・・と呟いたら、何と!その日の内に6個も手に入れてきやがった。 『白髪の私は色々とツテがあるんですよ・・・ルーク様、此方の宝石欲しいですか?』 悪い笑みを向けて聞いてくるカールに俺は悩んだ。 するとその様子を見ていたカールが近くのテーブルまで俺を連れて行くと パチンコ玉位のサイズの宝石と500円玉位のサイズの宝石を並べてテーブルに置いた。 『此方の小さい方の宝石は普段ルーク様がお持ちになられているのと同じ物です、容量は大体2人乗りの馬車6台入るか入らないかと言う所ですね、食料の保存期間は約1ヶ月程・・・そして此方の大きい方の宝石は容量は馬車50台位は軽く入りますし、食料の保存期間も約7ヶ月と、大変優れた宝石の為 少々お値段が張る上に 余りこの国に入ってこないので結構貴重な宝石となっております』 何だって!!?って事はだ!今まであのデケー鶏と鶏の卵がもっと収納出来るじゃねぇか! (※鶏のお話は【21.5カラット~狩りの音~】でどうぞ) 一個の宝石に今まで卵5個しか入らなかったから面倒だったんだよな 卵とかメッチャ使うしチョクチョク調達に行かなきゃならなかったからな しかも!?7ヵ月だと!?超作り置き出来るじゃねーか! 『・・・欲しい』 余りの機能の良さに俺は思わず呟いてしまったが その言葉を待っていたかのように、いつもの営業スマイルで淡々と説明していたカールの表情が何かを企んで居るかのように更に笑みを深くした。 『ええ、勿論差し上げますよ』 そう言って収納用の宝石を手のひらに乗せて俺の前に差し出した。 それを俺が取ろうとした瞬間カールの指が動き宝石を握り閉めてしまった。 ソッとカールの顔に視線を向ける 『ルーク様にお願いがございます♪』 『やっぱり・・・また、口付けでもすればいいの?』 『いいですねぇ、それも大変魅力的なのですが貴方の作った紅茶とお菓子を私に分けて頂けませんか?貴方の紅茶を飲んでからというもの、他の紅茶はどうも飲む気になれなくなってしまって』 『ああうん、別にいいよ』 『では此方の石に入れていただけますか?』 カールは内ポケットから俺がいつも使っている大きさの収納用の石を取り出した 『じゃあ僕の石から、この石に移すから名前紙に書いておいた方がいいよね』 『いいえ、移す時その名前を言ってくだされば大丈夫ですよ』 『え?それって移したお菓子と紅茶の名前全部覚えるって事?』 『ええ、一度聞けば覚えられますので』 『そう、なんだ・・・凄いね じゃあまず紅茶からいくよ』 そう言って俺は自分の石から紅茶とお菓子を次々とカールの石にうつし終えた俺は 満足そうな顔をしたカールに聞いてみた 『ねぇ、これってあと何個位手に入れられそう?』 『そうですね、心当たりがあるのは後14個ですが・・・確実なのは10個ですね』 『カール、僕これもっと欲しい・・・次の戦争までには手に入れたい』 『10個は一週間程いただければ手に入れられると思いますが・・・後の4つは持ち主が厄介な方達なので、余り期待はなさらないで下さい』 『うん、お願い』 『もし次に此方の宝石を私が10個ルーク様にお渡ししたら、今度は貴方の口付けをいただきたいのですが宜しいですか?私はその収納用の宝石を手に入れるのに好きでもない人間の手や額や頬に口付けをしてきているのです・・・だからどうか10個手に入れられた場合はご褒美として私に』 そう言ってカールは俺の前で跪き俺の手の甲に口付けた 『うん分かったカール・・・嫌な事頼んでゴメン、でもどうしても僕はあれが欲しい・・・だから頑張ってきて』 そう言うと俺はカールの手、額、頬にキスをした後、唇にすると驚いた表情でカールが見ていた 『もし、10個手に入ったら今と同じのしてあげる・・・14個の時は僕がカールの部屋で気持良い事いっぱいしてあげる・・・でもケルには内緒ね』 俺はカールの耳元でそう言うとカールが勢いよく俺の体を引き離した後 両手で俺の頬を包み込むと濃厚なキスをしてから最後に俺の唇を一舐めした。 『ルーク様!必ず14個手に入れて参りますので、もう暫くお待ち下さい』 そう言って立ち上がると急ぎ足で扉に向かった 『あっ、ちゃんとケルベロスから頼まれた仕事もやらなきゃ駄目だからね』 『わかっております!では失礼致します』 そう言って部屋を出て行ってしまった。 まあ、あの様子なら近い内に10個は確実に手に入れて持って来るだろう。 「大丈夫ですよナディアさん僕は同じ宝石をまだ持っていますので・・・それと其方はお貸しするだけです。僕が戦争から帰って来たら返していただきます・・・ああ、それと使用人の方達には申し訳ないのですがこの屋敷を出ていただきたいのと、元気になったからと外を出歩かれては困りますのでお2人共くれぐれも外には出ないようにお願い致します」 「戦争――っ!?そうだわ!第七王子って言ったら・・・!」 「――っ!?戦争ですって!?どういう事なのナディ!」 2人は戦争と言う言葉に顔色を変えた。 「ルーク王子は第七騎士団の方達と【闇の森】へ悪魔討伐に行くと聞いたわ・・・」 「悪魔と?そ、んな・・・こんな幼い子を戦争に・・・!?いいえ・・・そんな事ありえないわ!何かの間違えだわ!国王様はリアを一番愛してらしたわ!その子供を、そんな場所に向かわせる筈がないわ!」 ナディアの話を聞いてヴァレリーが頭を抱えながら首を横に振って困惑していた。 「あの・・・【リア】と言うのは、もしかして」 「ええ、ルーク王子のお母様の【グローリア】妃です・・・母とグローリア妃は国王様に嫁いで来る前からお友達だったようです」 「そうなんですか、あの・・・戦争の件は勝とうが負けようが必ず僕は此処へ帰ってきますので安心なさって下さい。そして、ちゃんと貴方がたタイラー家がまた家族一緒に暮らせるように全力を尽くしますので」 「私と母はそんな心配をしているのではありません!貴方の身を心配しているのですっ・・・!ルーク王子貴方は私共の事など気にかけている場合ではないのですよ!?貴方はまだ幼いから戦争がどういうものかお分かりになっていないのでしょうが、悪魔と戦争すると言う事は」 「凄く楽しみです♪」 「へ?」 ナディアが泣きながら話している途中で俺が笑顔でそう言うとキョトンとした表情をした。 「僕は凄く楽しみなんですよ、悪魔と戦えるなんて今まで経験した事ないですからね・・・ガードナー様やアルトさんより強いといいなぁ」 「え?父と兄と戦った事がおありなのですか?」 満面の笑みでそう言った俺にナディアが聞いてきた 「ええ、2人がかりで掛かって来ても僕に勝つのはまだまだ早かったようですね」 「まさか・・・そんな」 俺の言葉に信じられないと言う顔をしていたナディに母親が声をかけた 「ナディ・・・今の話は本当の事だと思うわよ」 「え!?でも父さんと兄さんよ!?いくら何でも・・・」 「この手紙に書いてあるわ《ルーク王子と手合わせをしたが、情けない事に私とアルトは手も足も出なかった・・・ルーク王子は強い、必ず私達を守ってくれるだろう》と・・・ルーク王子の言う通りに使用人は別の働き口を見つけ、私とナディはこの家から一歩も出ないとお約束いたします。ここでルーク王子のお帰りをお待ちしております・・・そして、ルーク王子と共に連れて行って下さい。この国を私も出ます・・・ナディ貴方は?」 「私も!勿論私も家族と一緒に居られるのならば国を出ます!父と兄にお伝え下さい、母も私も一緒にこの国を出ると・・・」 「分かりました、ではお2人共ガードナー様とアルトさんに手紙を書いていただけますか?彼らが読んだ後は此方で処分させていただきますが・・・ナディさんとヴァレリーさんにお渡しした手紙も申し訳ないのですが」 「わかっています、手紙にも書いてありましたもの・・・本当に有難うございます兄と父の手紙を届けて下さって」 そう言って俺に2通の手紙を返して来たナディアに新しい便箋を渡した。 2人がテーブルで手紙を書いている間にガードナーとアルトの手紙を処分し 部屋から出てて森に居る夜を呼び出す事にした。 あの【金幸際】が終わった後 散歩しながら帰るから降ろしてと 城の門に入った所でフェルドの馬車を降り 車椅子を収納用の石に仕舞って、そのまま夜と森へ向かった。 俺が森へ入ると夜が『この先へは俺は行けない』と言い出した。 何故かと問うと 『ここは聖域だ・・・選ばれた者しか立ち入る事は出来ない、お前が言った事は本当かもな・・・恐らく【獣の王】はこういった場所にいるのかもな』 『なるほど、じゃあリオン呼ぶか』 俺が呼ぶとリオンが現れ、その姿を見て夜は驚いていた。 『ん?ここは森の真ん前ではないか、何故こんな近くで呼んだのだ?』 リオンはキョロキョロと辺りを見回した。 『よう!久しぶりだな、祭りが終わったから戦利品見せに来たぜ!フッフフ・・・聞いて驚け!なんと!ルー君ったらノア君がケチンボで触らせてくれないからって自分で黒の狼をゲッチューしてきちゃったのですよ!いや~大変だったよ~聞くも涙、語るも涙・・・ラストシーンは号泣間違いなしの感動の金幸際ヒストリー』 『ふざけとらんで、さっさと用件を言わんか サラスが心配しておったぞ早く顔を見せてやれ』 『ああ、もうわかりましたよ。こいつ【夜】ってんだけど森に入れてやってよ、お前の許可がないと入れないんだろ?』 『【夜】?黒の狼か・・・お前は本当に黒の者が好きだな、まあいいだろう許可しよう・・・夜と言ったな入るがいい』 リオンが夜に視線を向けると夜は慌てて頭(こうべ)を垂れた。 『ああ、夜そんなに畏まらなくてもいいぞ【獣の王】なんて一著前(いっちょまえ)に大層な通り名で世間で呼ばれてるみてぇだけどな、コイツなんて中身は唯の食いしん坊の餓鬼みたいなもんだぞ』 『ルーク!やめんか!私にも獣の王としての威厳があるのだぞ!』 『アハハハハ!笑かしてくれるじゃねぇか!威厳だって!ないわぁ~・・・最近のノア見てみろよ!お前見て呆れてたぞ「もしかしたら獣の王は他にいるんじゃないかと俺は思う時がある」って言ってたぞ!お前、意地汚すぎて疑われてんじゃん!あっ!なあなあ!他の獣達にお前どう呼ばれてるか知ってるか?気高く強く美しい獣の王だってさ!美しい位しか合ってなくね?俺夜から聞いた時メッチャ笑ったわー』 『何を言う!合っているではないか!私は気高く強く美しい王だろう!』 『馬鹿言ってんじゃねぇよ!まあ、見た目は確かに美しいかもしれねぇけどな・・気高い獣の王は人の皿から肉を横取りしたり、顔中(かおじゅう)に食べかす付けたりしねぇよ!ノアは綺麗に食ってんのに、何でお前だけあんなに毎回食い方きたねぇんだよ!それに!強くもないだろうが!俺より弱っちいくせに!』 『くっ・・・!う~・・・黙れ!私はもう先に行くぞ!サラスにお前が来たと言ってやらねばならんからな!』 そう言い残してリオンは去った。 『まったく、アイツは言い負けるとスグ「黙れ」とか「煩い」とか言って逃げるな』 『本当に本物だったな・・・初めて見た』 夜が呟く 『夜、さっき馬車降りた後 森へは行かないって言ってたな・・・このまま城で俺の奴隷として一緒に居たいと・・・』 『ああ』 『獣の王が本物だと分かった今でも森より城がいいのか?リオンならお前をこの森で面倒見てくれるだろうよ』 『獣の王が本物であろうが無かろうが関係ない、俺はお前の側に居たい・・・少しでもお前の役に立てるなら何でもする・・・一緒に過ごせるのならば奴隷の枷くらい何でもない』 『はぁ・・・そうかわかったよ、とりあえず俺はそろそろ城に帰らんとマズイから明日またゆっくり話をしよう』 今日は森に居る奴等に挨拶でもしておけと言い残し夜を森へ置いて城へと帰った。 そして、その日の夜中にキングの所へ行きタイラー家の話を聞き  次の日の夜中、森へ行くと夜が獣の姿で昨日別れた場所で待っていた 『お前、まさか昨日からここに居たんじゃねぇだろうな』 『そんなわけないだろうが、お前が言った通りちゃんと挨拶は済ませた』 『そうか、どうだ?やっていけそうか?』 『まあ、色々と驚きはしたが楽しかったぞ』 そう言って何かを思い出したように楽しそうに目を細めた夜に俺は安心した。 『昨日の話だが、他の奴等とうまくやって行けそうだしこのまま森に居た方が俺は良いと思うぞ?俺の役に立ちたいとか言ってたが森に居てもそれは出来ると思うし』 『それは食料集めとかだろう?確かにこの森に居てお前の為に出来る事はあるだろうが、俺はお前の側に居たい・・・奴隷としてあの城に一緒に居させてくれ頼む』 『頼むって・・・せっかく自由になったのにお前本当にそれでいいのか?俺はお前を奴隷になんてしたくねぇけど、もし城で一緒に暮らすとなると枷をしてもらわねぇといけなくなるんだぞ』 『ああ、お前と居られるのなら喜んで枷くらいはめてやる』 そう笑顔で言う夜に俺は一つため息をついて これ以上の説得は無理だなと諦めた。 『わかったよ、だが今は連れて行けねぇ俺が戦争から帰って来たら城に一緒に行こう。俺が戦争行ってる間奴隷のお前がどういう扱いを受けるかもわからんし頼みたい事もあるからな』 『頼みたい事?』 『俺が戦争から帰ってくるまでタイラー家の人を守って欲しいんだ』 『タイラー家・・・聞いた事があるな』 『第一王子の専属騎士アルトの母親と妹さんを守ってほしいんだ、頼めるか?』 『・・・理由を聞いてもいいか?』 俺は夜にガードナーとアルトが脅されて騎士になった事と、毒の話をした。 『ただ、まだその話をアルトには言ってないから何とも言えないが・・・もしそうなったら夜にはタイラー家で2人を守って欲しいんだ』 『まあ、いいが俺が行ったら嫌な顔をするぞ獣だしこんな色だからな』 『そうか?そんな事ねぇと思うけど・・・まあじゃあその件は一応タイラー家の人達には俺から説明しておくとして・・・その、ちょっと言いにくいんだけどな』 『なんだ?』 『夜くんを好きな時に呼び出したいなぁ・・・とか思っているわけで、その』 『契約なら大歓迎だぞ』 『オイオイ・・・大歓迎ってお前』 『俺もちょうど考えていた所だお前とどうやったら契約出来るかな』 『え?そうなの?あー・・・じゃあまあ頼むよ、で?契約はどうやんの?またキスでもしたらいいのか?』 『キス?ってなんだ?』 『口付けの事だ』 『っ!?確かにそう言う契約の仕方はあるが、普通はしねぇぞ!他の種族は分からねぇけど獣は自分の体内にある宝石の欠片を相手の口に含ませたらいいんだ!誰だ!そんな事教えた奴は!』 『お前らが崇め奉ってる獣の王とやらだよ!あんな事しなくても契約出来たんじゃねーかよ!あの野郎覚えてろよ!』 俺がブツブツリオンに対して文句を言ってると 夜が人型になり手に持っていた宝石を俺の口の前に差し出してきた 『口を開けろ、この宝石は俺の手を離れると消えちまうから指ごと口に突っ込むぞ』 俺は夜の言う通りに口を開くと宝石を指ごと口に突っ込まれた 暫くすると舌に当たっていた宝石が消え 消えたと同時に夜が俺の口から指を引き抜いた 『う~・・・ちょっと苦しかったな、大口開けてたから顎がおかしくなった』 『そりゃ、悪かった・・・けど契約はすんだ いつでも呼べ』 その後夜と森の中へ行くとノアールと夜は話が合うのか一緒に何やら喋っていた。 サラスは俺を抱きしめながら「心配しましたわ」とずっと泣き喚き 俺はというとそんなサラを無視して契約の事でリオンにお説教をしていた。 その時 契約した夜を呼び出すと狼の姿の夜が現れた 「どうした?」 「お!夜くん良く来てくれた!この間言った此処がタイラー家だから、俺が呼ぶまで此処でちょっと待機しててな?」 「そうか、わかった」 俺は廊下に夜を待たせて、もう一度部屋に入り手紙を書き終えた2人に夜の話をした。 「奴隷の枷を着けていない、黒い狼の獣が?」 不安そうにナディアが聞いてくる 「そうです、僕が居ない間 貴方がたを守ってくれます・・・この国から脱出する時も彼らが手助けしてくれるでしょう彼らは僕達の味方です恐れる事はありません」 「そうは、仰っられても・・・獣は人を襲うから決して 枷をしていない獣には近づくなと私達は小さい頃から教えられて来ているのです」 「ナディアさん、彼らは確かに人間より力も魔力も強い生き物ですが・・・人間が危害を加えなければ彼らは何もしてこなかったと思いますよ。弱い人間が彼らの力を恐れ、奴隷と言う枷で縛りつけ利用し彼らに何年も憎しみと痛みを植え付けている・・・ナディアさん逆の立場だったらどうです?彼らにも故郷があります、家族も居ます」 「そんな事、考えた事なかったわ・・・」 「彼らと僕達はそんなに変わりませんよ、彼らとちゃんと向き合ってみて下さい。話してみたら分かりますよ」 「ルーク王子私は貴方を信じておりますので、その黒い狼の事も信じますわ」 「わ、私も会って話をしてみます」 ヴァレリーの後に続いてナディアも未だ不安そうな顔をしながら言った。 「夜!入っておいで」 俺が呼ぶと人型になった夜が部屋に入って来た 「まあ、本当に枷をしていないわ・・・」 ナディアは驚きの声をあげた。 「あんた達が不安なら俺は奴隷の枷をつけても構わないが」 「いいのよ、私達の為に来て下さって感謝いたします」 夜の言葉にヴァレリーが慌てて首を横に振り  ゆっくりと頭を垂れた 「名前は夜と言います、口は悪いですが良い子ですよ」 「だから【子】って言うな!子供はお前の方だろうが!」 「食事は貴方がたと同じものをあげて下さい、奴隷ではないのでちゃんと人と同じように接してあげて下さいね」 「お前は本当に俺の話を聞かねぇな・・・」 「あ、僕のお勧めは此方の玉(ボール)を投げて捕って来させる事です。上手に捕ってこられたらちゃんとこの【健康クッキー♪ワンワンもまっしぐらの美味しさ!】と言うこのオヤツを与えて褒めてあげて下さいね」 「って!お前それ!ゼンゼン人と同じ接し方じゃねぇだろ!?」 「え!?だって夜クンこれで遊ぶの好きじゃん!」 「―――違っ!?別に好きな訳じゃねぇ!お前が楽しそうだったから付き合ってただけだ!」 「ええっ!?そうだったの!?衝撃的事実!何でもっと早く言ってくれなかったのさ!」 「あんな楽しげに投げて期待に満ちた目で見られたら、もう捕って来るしかねぇだろうが!」 俺と夜が言い合ってるのを聞いて居たナディアとヴァレリーからクスクスと笑い声が聞こえてきた 「ルーク王子の為に一緒に遊んで差し上げていたのですね!」 「本当にお優しい方なのね、ルーク王子ご安心なさって下さい私達は彼を・・・夜さんを絶対に傷つけるような事はいたしませんわ」 「有難うございます。夜の事お願いします、夜も2人の事頼んだよ」 「わかった」 「では、今日はこの辺で失礼させていただきます」 「おい待て、服の事は頼んだのか?妖精共からコレを預かって来たんだが・・・今のところ出来上がったのはコレだけだと言っていた」 そう言って夜から収納用の宝石を渡された 「あ、忘れてた!すみません、ヴァレリーさんナディアさん、ガードナー様達から縫い物が得意だとお聞きしたので僕の洋服などを空いた時間にでもお願いできないでしょうか・・・正直手が回らなくなってきて困って居るんです・・・もちろんお金もちゃんと払いますので」 実はツバキの服などは初め無属性で出していたのだが 凝ったデザインだと一着出すだけでもかなり疲れる事が分かったので 妖精達やサラスに頼んで作ってもらっていたのだが 近頃は飲食類の消費が激しいのと戦争用の食事を作っているので 手に入らない食材・・・例えばチョコレート何かを無属性でポンポン出していたら気持ち悪くなって吐いて寝込んだ・・・ 無属性の力はかなり助かるのだが・・・使い過ぎると【無属性酔い】を起こしてしまう事がわかった為 食料が不足している今は無属性で必要な食材優先で出して 服やアクセサリーなどは出している余裕がないので 今森の連中にはこの世界で手に入る食材の調達と妖精達には装飾品などの小物類も作ってもらっているので洋服作りまで手が回らなくなってきてしまった。 俺は初めは正直そんなに期待していなかったのだが・・・ 俺が図案と宝石を一緒に渡したら彼らはそれ以上のものを作りあげてくれたので それからと言うもの毎回図案が出来たら妖精達にアクセサリーなどの小物作りを頼んでいる。 特に今は妖精工房は大忙しのようだ・・・ 徹夜続きの妖精も何人か居るとサラから聞いたので 洋服も頼むとか、とてもじゃないが言えなかった・・・ そして、運良くこの2人が裁縫が得意と聞いたので頼んでみる事にしたのだ 「まあ!是非やらせていただきたいですわ!」 「私もです!物を作るのは好きよ!」 ヴァレリーとナディアが嬉しそうに言った。 「では此方の石に何枚か図案が入っているので、この中から作れそうな物を選んでもらって 此方の石には生地などが入っているのでお願いします・・・そして此方の宝石には装飾品が入っておりますので服に取り付けて下さい」 そう言って夜から受け取った石を2人に渡すと石の中身を確認していた。 「まあ!?凄いわ!こんなに美しい細工初めてみましたわ!」 ナディアが妖精達の作ったアクセサリーを見て驚きの声をあげた  図案を見たヴァレリーも驚いた表情をしていた 「この服・・・凄いわ、こんな素敵な服を私達が?」 「ヴァレリーさん作れる範囲で構いませんのでお願いできませんか?」 「もちろんでございますルーク王子、難しそうな洋服ですが作るのが楽しみですわ!」 「まあ!とても可愛いお洋服!・・・あら?全部女の子の服?もしかして・・・」 ナディアが母親が手にしている洋服のデザイン画を見て俺を見た。 「ええ、ツバキ用の服です・・・実はフェルドさんのお母様の店で歌を歌わせていただいているのですが、ほら僕は戦争に行ってしまうので その間ツバキの方は長期のお休みを取ると言ったんです。そしたら常連のお客様方が暫く会えない分 最後の日の夜は舞台を僕の貸切にして一晩中歌って欲しいと仰られまして・・・毎回ツバキの衣装を楽しみにしている方達も居るので急いで衣装を作っていたんですが戦争に持ってく食事も作っているので服の方が全く間に合ってなくて困っていたんです」 「凄いわ!私、歌姫の衣装を作れるのね!」 「いいわね、私も聞いてみたかったわルーク王子の歌をカルディアのお店にいけないのが残念でならないわ」 ナディアは嬉しそうだったが、ヴァレリーの方は残念そうに溜息を付いていた。 「お美しいお2人のお望みとあれば、いつでも歌わせていただきますよ」 俺はそう言ってお辞儀をした 「まあ、ルーク王子はまだ幼いのに女性を喜ばせるのがお上手なのね」 「嬉しいわ、こんなに可愛らしいお姫様にいつでも歌ってもらえるだなんて」 ナディアとヴァレリーにクスクスと笑われながらそう言われ  俺はハッとして今の自分の格好を確認した。 「あ、そうでした!この格好なのすっかり忘れてました・・・ハァ・・・こんな格好で言ってもカッコ付かないよね」 「そんな事ありませんわ、とても可愛らしかったですわ」と、その後和やかに談笑した後 カルトの待って居る部屋に戻れば、お菓子とパンを食べ終えたカルトがソファーで寝ていた 「カルトさん、起きて下さいカルトさん!・・・・・・あの起きないので このまま此処で寝かせてあげて下さい、彼も今日は色々とあったので疲れているんだと思います。僕はもう帰らないといけないので、明日もう一度夜1時頃此方にお邪魔いたしますのでカルトさんにも、そうお伝え下さい」 「わかりましたわ、お一人で大丈夫ですか?」 「ええ、慣れているので大丈夫ですよ心配してくださって有難うございます」 「ルーク王子今日は本当に有難うございました。まさかまた歩けるようになるなんて思ってもみませんでした。本当に感謝しても し足りないほどでございます」 俺はナディアさんとヴァレリーさんに玄関で見送られ外に出ようと扉を開こうとした瞬間  【ドン!】と言う音と共に体が後ろへと引き戻された  驚いて振り向くと慌てた様子のカルトが、扉に片手をつきながら 逆の手で俺の腹に腕を回し、膝をついていた。 突然のカルトの行動に驚いたものの目の前で少し息を切らして居るカルトに声をかけた 「あ、おはようございますカルトさん」 「おはようじゃねぇ!一人で外に出るな!さっき危ねぇ男共に絡まれたばかりだろうが!何で俺を起こさねぇんだ!」 「起こしたもん」 俺とカルトが話していたら、それを聞いていたヴァレリーがカルトをキッと睨み付けた。 「カルト!ルーク王子になんて口の聞き方をしているの!?それに王子はちゃんと貴方を起こそうとしていたのですよ!それでも貴方が起きないから疲れているんじゃないかと王子が心配なさって、このまま休ませてほしいと仰っられたのです!それなのに、そんなお優しいルーク王子に対して何て態度なの!?」 「なっ!?ヴァ、レリー・・様?・・・なんで・・・お体の方は・・・(そんな馬鹿な!?さっき来た時は医師でない俺が見ても、もう長く持たないと分かる程に衰弱していた・・・!)」 「ルーク王子のおかげで治りましたわ」 「まだ、完全に治ったわけではないので暫くは安静にしていて下さい。あ、それと洋服作りもヴァレリーさんは完全に完治してから取り掛かってくださいね」 「あら、もう歩き回れるほど元気ですので大丈夫ですわよルーク王子」 「駄目ですよ!せめて一週間はちゃんと休んでて下さいね!」 俺と話しているヴァレリーを呆然と見ていたカルトが困惑した表情で俺の方に視線を移した 「お前・・・何をした?」 「え?ああ、ヴァレリーさんに薬を飲ませただけですよ」 「薬だぁ?・・・どこで手に入れた」 「ひ・み・チュ♪」 俺の目の前にあるカルトの鼻先に軽くキスをしてニッコリ微笑むと それを見ていた女性2人からは「まあ!カルトいいわね~こんなに可愛い子にしてもらえて」「やだ、もうカワイ過ぎます!カルトさんだけズルイですわ!」と喜ぶ声が聞こえて来たのだが カルトの方は一瞬驚いて固まっていたが、いきなり左手をドン!と玄関の扉に付け 右手で俺の顎を掴んできた。 キャッ!もしかしてこれが女性達が憧れていると言う【壁ドン】と【顎クイ】ってやつですか!? やだ、どうしようツバキときめいちゃう♪ 「ふざけんな、どう言うつもりだ」 低い声でそう言いながら恐ろしい形相で睨み付けて来るカルト あ、駄目だ全くトキメかなかったわ・・・ 「あ゛ぁ?おい聞いてんのか?コラァ」 更に怖い形相になったカルトがそう言うと 顎を掴んでいた手が移動し俺の口を覆い  そのまま指に力を入れて圧縮してきた。 んぎゃ!?痛い!痛い!顔の形変わっちゃう!俺の可愛いほっぺたに穴が開く!やめてあげて! 「キャルトしゃん!ぎょめんにゃしゃい!(カルトさん!御免なさい!)」 「チッ!帰るぞ!」 俺を小脇に抱えヴァレリーとナディアに挨拶をした後カルトは馬車に乗り 門の前で馬車を降りて今度は普通に俺を抱き上げて歩き出した  ずっと無言のまま不機嫌な顔をしたカルトの顔をチラチラ見ながら恐る恐る声をかけた 「・・・カルトまだ怒ってる?」 「・・・いや」 やっと俺の顔を見たカルトは、ため息をついた後そう答えた。 「あの、明日はタイラー家に行った後 ちゃんと今度はカルトの家にも行くからね」 「わかった、明日は街の入り口で待っている・・・少し赤くなってるな俺の指の後がついてる」 俺の頬を人差し指で撫でるカルトに痛かったと言うと 「そりゃ悪かった、だがああ言う事はするな」 「はい・・・ゴメンなさい、そんなに嫌がるとは思わなかったから」 「別に嫌というわけじゃ・・・」 「カールとか喜んでたから・・・でも、もうカルトにはそう言う事しないから安心・・」 「ちょっと待て!ああいう事をカールの奴にしてんのか!?」 「うん」 「あの白髪野朗(しらがやろう)!白髪(はくはつ)の特権を使ってルーク様の側近になった理由はそういう下心があったからだったんだな!ルーク様!いいか!これからはカールの奴にもするんじゃねぇぞ!アイツが一番危ねぇ!」 「ねえカルト、2人の時は何か違和感あるから様はつけなくていいよ」 「いや、流石にそう言う訳には・・・」 「じゃないと、もうカルトにお菓子は作らない」 「ヒデェ事言うじゃねぇか、わかったから菓子は寄越せルーク」 「うん、明日カルトに僕の自信作をあげるから楽しみにしててね」 「おう・・・で?カールの件はわかったのか?」 「うーん、わかった!必要な時以外はしない」 「何だ!必要な時って!」 「まあ、色々あるんで・・・それに今日カールと口付けしてるのをケルに見られてカールスッゴイ怒られてたから多分大丈夫だと思うよ」 「何!?口付けってどこに!?どこにされたんだ!」 「え?口だけど」 「あの野朗・・・どうやら、金幸際の時の件があったってのに懲りてねぇみてぇだな!次会ったらまたブン殴ってやる」 わあ、カルト君の顔こっわ~い! カールがんばれっ! 俺には、お前がカルトに会わない事を祈る事しか出来ん。

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