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25カラット~夜の音~

温室の中へ入ると  俺は大きな噴水の前まで来た  この広さの中 夜を探すのは大変そうだな・・  まあ・・この時間帯に俺が来る事知ってんだし 歌でも歌って待ってれば夜が気づいて来てくれるだろう・・ 歌い出して暫くすると  右の木々の間から一匹の黒い狼が出てきて 右足を引きずりながら此方に歩いてきた 「―――!?お前!夜か!?どうした!?」 俺は車椅子を夜の前まで動かし 血だらけの身体を治しながら  何があったのか聞いた 「こういう場所に来ると 例え同じ奴隷同士でも俺のような黒い獣は こうやって他の獣達から攻撃されるんだ・・だから出来るだけ見つからないように やり過ごすしかないんだが・・この狭い空間では見つからないように・・なんて・・無理だな・・」 「そんな・・・【黒】ってだけでそこまで・・なあ、この中にお前の他にも黒い獣って居るのか?」 「・・一人だけ居る・・奴は体がデカイから よく標的にされている・・俺よりも酷いだろうな・・」 「夜、そいつ何処に居るか分かるか?」 「・・・此処に来ている・・人間が奴隷置き場に入って来た事で皆警戒して此方の様子を隠れて見ている・・探して連れて来るか?」 「おう、頼む」 「わかった・・少し待て」 そう言って夜は辺りを見回しながら匂いを探って  勢い良く木々の間をすり抜けて行った 「おい!連れて来たぞ!・・・っ!?イッ!・・テェな!暴れんじゃねぇ!」 木々の間から人型になった夜と全身傷だらけの大男が出て来た 「こりゃ・・ひでぇな・・・あれ?急に大人しくなったな」 「俺達奴隷は人間が居る場所では大人しく待機してるのが決まりだからな・・命令でもない限りは人間の前で勝手に動く事は出来ない」 大男が大人しくなったのを見て夜が男から手を離し言った。 「そうなのか・・いや、悪かったな無理やり連れてきて」 俺は大男の全身の怪我を治した後 「もう行って良いぞ」と告げると 大男は戸惑った素振りを見せたが  此方を何度か振り返りながら去って行った 「あっ!そうそう夜!俺さメシ持って来たから一緒に食おうぜ!飲み物は熱いのと冷たいのどっちがいい?」 俺は噴水の淵に座ろうと車椅子を横に着けると  それに気づいた夜が俺を抱き上げ俺を噴水の淵へと座らせた 「おっ!悪いな、お前も座れよ・・で?どっちにする?」 「・・・冷たいの」 「わかった、今ミルクティー作ってやるから待ってろ」 「お前よく一人でこれたな・・さっきの様子だとあの騎士が一緒に付いて来ると思ってたんだが・・」 「ああ、俺もそう思ってな・・受付係の奴に『あの柱に隠れて居る騎士2人に狙われているんです!先程も人気のない場所に連れて行かれて・・僕・・!やっとの思いで逃げてきたんです!!・・お願いです!どうか!僕の部屋の場所を聞かれても教えないでいただけませんか!?僕・・もう怖くて・・』って震えながら言ったらな・・あの騎士二人その場で従業員5~6人に囲まれてどっか連れてかれちまったからな・・まあ大丈夫だろ・・ほら、出来たぞ飲んでみろよ」 「そりゃまた・・気の毒に・・・ん?何だこれ・・美味(うま)い」 「こっちも温かいうちに食えよ」 俺は出来たてのまま収納用の宝石に入れて来た料理を宝石から出して 夜に進めた後、俺も食べ始めた 「これは?魚か?凄く美味い!」 「あー・・それは唐揚げで・・その・・『鶏肉』だ・・」 「・・は?・・と・・り・・?」 「そうだ・・鶏の肉を油で揚げたんだ・・」 「う・・そ・・だろ?」 夜は口を押さえながら、隣で唐揚げを食べている俺を見た 「お前らって肉食わないもんな・・でも美味いだろ?リオンも・・獣の王も最初は抵抗あったみたいだけど・・今じゃ肉類はアイツの好物だぞ・・後こっちは鶏の卵で作った卵焼きだ」 「・・鳥・・のたまご・・」 「・・まあ・・抵抗あるなら無理して食わんでもいいが・・食えそうならちゃんと食っとけ」 俺がガツガツ食ってるのを見た後  夜は暫く何かと葛藤(かっとう)していたが  耐え切れなかったのか喉を鳴らし勢い良く食べ始めた 「食べた事ない味だったが、凄く美味かった」 「そうか、そりゃ良かった・・ところでお前の寝床ってどこよ」 「いや、特に決めてはいないが なるべく他の獣が来ない場所を探そうと思ってる」 「よし、じゃあ行くか」 俺は食べ終わった器(うつわ)を宝石へ仕舞(しま)うと 車椅子についている宝石を3つ手に持って夜に向かって両腕を伸ばした 「・・何だ?」 「何だじゃねーよ、このポーズ見りゃわかんだろーが!抱っこだ・・車椅子は此処に置いていく」 「ぽー・・ず?・・って何だ?一体どこへ行く気なんだ?」 「寝る場所探すんだろ?食後の散歩がてらに一緒に探してやるよ!ほら早く行こうぜ!」 隣に座っている夜が中々抱きかかえようとしないので  俺は自力で夜の膝に乗ろうと服を掴んだ 「わかったから!そんなに服を引っ張んじゃねぇ!」 夜に抱きかかえられて  どんどん密林の中へと入って行く 「まるでジャングルだな・・ここは・・」 虫が出そうな場所に俺がギュッと夜の首にしがみ付くと 夜は俺の頭をそっと撫でて来た 「怖いか?この辺は真っ暗だからな・・お前は余り子供らしくないと思ってたが・・暗闇に怯える姿を見るとやはり・・まだ小さな子供なんだな・・この辺でいいか」 そう言って夜は、その場に座った 「お前明日あのジジイに何とか うまい事言って勝負の話はなかった事にしてもらえ・・じゃないとお前、あとで後悔する事に」 「嫌だね」 「オイ!最後まで聞け!あのジジイが持ちかけてくる勝負だ!絶対にお前に勝ち目は・・って!お前!俺の話聞いてるか!?さっきから何してやがる!」 俺は宝石の中から大きめの膝掛けを出して地面に敷いてその上に横になり  小さい膝掛けを自分の上に掛けた 「もう寝るんだよ、お前もサッサと寝ろよ・・んじゃおやすみ~」 「まて!?お前此処で寝る気か!?噴水の場所まで連れてってやるから自分の部屋行って寝ろ!」 「やだ」 「ガキみてぇな事言ってねーで起きろ!」 「ガキみたいじゃなくて、今は本当にガキだからいいんだもん」 「馬鹿言ってねーで!さっさと起き上がれ!人間が奴隷置き場で寝るなんて信じらんねぇぜ!しかも!お前王子だろうが!お前の教育係は一体なに教(おし)えてやがんだ!」 「ったく・・うるせぇな・・夜!此処へ来て狼の姿でお座りだ!・・・いいか夜、見知らぬ場所で 周りを見ても知らない大人達ばかり・・そんな一人ぼっちで心細い思いをしている幼い少年が!あのだだっ広い部屋で一人で寝なきゃならないなんて・・!お前は可哀相だと思わないのか!?思うよな夜!?お前はそんなに冷たい奴じゃねぇよな!?」 「・・え?・・ああ・・そう・・か・・な・・?」 「だろ!?んじゃ!ハイ!横になってチャッチャと寝る!おやすみー」 俺は狼になった夜を隣に寝かせ膝掛けを掛けて寝た  少し経ってから夜がガバッと起き上がった 「・・・・・・・・・・・・・いや!ダメだろ!危ねぇ流される所だったぜ!?話がまだ終わって」 「黙って寝ろ!!話なら明日聞いてやるから!」 「--------っ!?・・・わかった・・」 俺が怒鳴ると夜は耳を後ろへ倒し ゆっくりと俺の隣に横たわった 「・・・お前がさっき歌っていた歌は誰から教えてもらったんだ?切ないが、いい歌だったな」 「あぁ・・・あの歌は俺が作った・・」 「お前が!?・・・そりゃ・・たいしたもんだな・・誰か探し人(びと)でもいるのか?」 俺が噴水で歌っていたのは27歳の時 アルバムを出すのにマネージャーから  あと一曲欲しいと言われて作った曲だ・・ 『突然自分の前から消えてしまった 大事なあの人にもう一度会いたい 俺だけはずっと諦めずに貴方を探している』 そんな内容の歌詞だ・・ 「ああ・・ずっと・・探してる人がいる・・」 「そうか・・その人に会えるといいな・・なあ・・もう一度歌ってくれないか?さっきの歌・・もう一度聴きたい・・」 俺は歌いながら、あっちの世界の事を思い出していた・・・ 世界中に俺の名が知れ渡れば・・もしかしたら俺に気づいてくれる そう思ってずっと芸能界で頑張っていた・・ 音楽も大事な人に、いつか届くと信じて色んな場所で歌い続けたが・・ 結局最後まで・・ 俺が死ぬまで会う事は叶わなかった・・・。 ------------------------・・・ 「オイ、夜そろそろ起きねぇか?・・・・・・・・・うーん・・・お返事が返って来ませんねー・・・よーるーくんっ♪あっさでっすよ~」 ガブッ!! 「--------!?いっっってぇ!!!!?」 俺は早朝(そうちょう)声をかけても中々起きない夜の鼻に噛みつくと 夜は勢い良く飛び起きた 「お!やっと起きたか!おーはー♪」 「何て起こし方しやがる!もっと別の起こし方があるだろうが!ったく・・人間が獣に噛み付く何て信じらんねぇ!」 夜は狼の姿のまま両手で鼻を押さえながら文句を言っていたが 「うん・・そのポーズ中々可愛いぞ」と、一言だけ言って 宝石の中から食事を出し俺は朝食の用意をした。 「・・・昨日はお前のおかげで良く眠れた・・礼を言うぞ、ありがとう」 「んあ?・・ん~・・ああ!子守歌の事か!」 「違う!!あ・・いや・・それも確かに感謝してるが・・お前・・ここで寝たのは俺を他の獣達から守る為だろ?人間が側に居れば他の獣は俺に攻撃出来ないからな・・一度他の獣が近くに来たがスグに去って行った・・それで気づいた・・俺は今お前に守られているのだと・・悪かったな気づくのが遅くなって、おかげでよく眠れた有難う」 「やめてくれ・・俺に感謝する必要なんてねぇんだよ、昨夜も言ったろ?一人で寝るのが嫌だったんだ!ただ、それだけだ・・ほら!メシにするぞ」 「これは、何だ?」 俺はホットドッグを夜に渡してから  自分の分を出して食べ始めると  その様子を見てから  夜も同じように食べ始めた 「この長いのが凄く美味い・・もう無いのか?」 「やっぱソーセージとかも好きなんだな・・あと四つあるから全部食っていいぞ」 俺の分のホットドッグも夜に渡すと 夢中でホットドッグを頬張っていた  その時だった・・突然札が 『リン・・リン・・リン・・リン』と鳴り出した。 俺はどうして良いか分からず  札を夜の前に差し出した 「おい、鳴ってるぞ!どうしたらいいんだ?これ・・」 「札の中央に石があるだろう?それを擦れば良い」 俺は言われた通り 札についてる石を擦ると  石から『ポンッ』と手紙が出てきた 「おっ!?・・・すげーなー・・なんか出てきたぞ」 「手紙・・?多分あのジジイからだろ、その封筒には見覚えがある・・読んでみろよ」 手紙の内容に俺はニヤリと笑みをこぼした 「今日の午後2時にエロジジイの息子と剣技で勝負だとよ・・まあ・・大体こんな事だろうと予想はしてたが・・・息子ってのは強いのか?夜知ってる・・か・・どうした?」 振り向くと夜が険しい顔をしていた 「・・・・・今すぐ帰れ!具合が悪いとか何とか言って今すぐお前は家へ帰るんだ!!」 「・・・なんでさ」 「あのジジイの息子は第一騎士の団長をやってんだが・・昨日の騎士二人なんかより ずっと強いんだぞ!それだけじゃねぇ・・弱いものを甚振(いたぶ)るのが趣味で・・街へ行っては何人か人を甚振って殺している・・お前は殺される心配はないだろうが、アイツにとってお前みたいなのは面白そうな玩具(おもちゃ)でしかない・・今すぐ此処を離れるんだ・・!頼むから・・俺のせいで お前が騎士に甚振られ玩具にされた後、あのジジイにも弄(もてあそ)ばれると思うと・・俺は」 「なあ、夜・・俺ってそんなに弱そうか?」 「・・・え・・?・・ああ・・少なくても俺よりはな・・」 「そっか・・でもな俺ってこう見えて、お前らの王様よりは強いんだぜ!」 顎を少しあげ、俺は親指を立てて自分の方へ向けた 「・・・・王様って・・まさか」 「そう!『獣の王』!」 「・・・また、それか・・そいつ本当に本物か?お前騙されてんじゃねぇ?」 夜は溜め息をついて首を横に振った 「そんなに信じらんねぇなら、この金幸際が終わったら確かめに一緒に森に行けばいいだろ?それとな、これだけは言っとくわ・・少なくても俺はお前よりも強いぞ・・まあ、お前は何も心配しないで特等席で俺の舞台を見てろ・・この試合、俺が面白くしてやるからよ!」 また、この世界でも大勢の前に立てる事に 俺はワクワクしていた。

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