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27カラット~金幸際の音~

部屋に着くと3人は俺の部屋を見て驚いていた 「えっ!?ここ!?この部屋がルーク王子のお部屋ですか!?」 「なんて事!?気づかなくて申し訳ございません!今すぐ新しいお部屋をご用意致しますので!そちらにお移り下さい!」 フェルドと白髪の男がロフト付の階段の多いこの部屋を見て 他の部屋へ移ろうと俺を部屋から出そうとした 「いえ!もう慣れましたし僕はこの部屋がいいんです!」 そう言って俺は車椅子を押しているフェルドを止め、 4人にソファーへ座るように言うと 一緒にソファーに座ってる夜に3人は何だか不満そうな顔をしていた。 夜はそんな3人の視線を気にもせず、 ずっと俺の方を見ていた。 白髪の男は俺の治療を終えると懐から札を出した 「やはり今回の試合で上位の順位がだいぶ変わりましたね、フェルド様カルト様ルーク様おめでとうございます。今回の賭けでかなり上位の方に入っておられますよ、ご自分の札を確認してみて下さい」 俺達は言われた通り自分の札を確認した 俺はやり方がわからなかったので男に出してもらってランキングを見てみると 「あ!僕12位ですね、フェルド団長は19位、カルト副団長は・・・凄いですね6位ですか?・・・一体 僕に幾ら賭けたのですか?」 「何を仰っているのですか?王子が言ったのではありませんか、『僕に全額かけろ』と・・・」 カルトはそう言うとニヤリと笑い俺を見た。 まさか、本当に全額賭けるとは思わなかったよ・・・ 「そういえば試合前にカイザー様に資金集めに参加してると仰っていましたが・・・たくさんお金を集めてもこの札の中のお金はもらえないのですよね?なのにどうして・・」 「・・・・・もしかしてルーク王子・・・この『金幸際』の説明文をお読みになってないとか・・・ないですよね?」 男は自分の札の画面を俺に見せてきた 「あ、読んでませんね・・・そもそも札の使い方がわかりませんでしたし・・・」 「なっ!?受け付けで札を貰う時に説明を受けるはずです!まさか!?受付係が説明を怠(おこた)ったのですか!?」 「・・・いや、多分忙しくてそれどころではなかったんだと思いますよ。ちょうど僕が札を受け取る時にご夫婦らしき方達が凄い剣幕でやってきて札を出せ!中に入れろ!とか騒いでいたので受付の方が慌てて其方(そちら)の対応に行ってしまったので」 「・・・・そういえば、確かに今年もそんな報告が来ていましたね・・・出入り禁止になったご夫婦が毎年文句をつけにくるんですよ・・・ルーク王子私でよろしければ札の操作の仕方をお教えいたしますが」 「本当ですか!良かった、助かります」 「いえ、こちらの不手際ですので・・本当に申し訳ございませんでした。この件に関しましても上に報告し何かしらの形でお詫びさせていただきます」 「そんな、僕は気にしてませんので札の使い方を教えてくださるだけで十分です」 俺は男に頭を下げた後 「ちょっと、失礼しますね」と、その場を離れキッチンから食器をとって 飲み物とお菓子を出そうとした・・・ そして、思い出した・・・ 車椅子に乗ってる状態では食器に手が届かないことにぃぃ――!!! 俺が困っている事を察して夜が俺を抱きかかえてくれたので 俺は夜に礼を言おうと振り向くと・・・ 夜の首に剣が当てられた 「今すぐ王子を離せ!獣の奴隷が主人の命令もなしに勝手に動くんじゃねぇ!」 「フェルド団長!止めてください!僕が困っていたので助けてくれただけです!彼は昨日もこの部屋で僕の手伝いをしてくれてたので僕が困っているのに気づいて・・」 「ルーク王子、貴方は少し奴隷の扱い方を学ばれた方がよろしいかと…まずは獣の奴隷に触れるのはお止めくださいコイツ等獣に触れると病気になったり呪われて命を落とす事になりますよ」 「・・・何ですかそれは?・・・僕が子供だからってそんな嘘」 俺が言うとフェルドが首を左右に振り 「嘘ではありません!!うっかり獣に触れて何人か体に赤い斑点が出て呪われた後、亡くなったと言う報告もあります!」 え?・・・いや・・それって たまたまソイツ等が酷い動物アレルギーとかだったんじゃ… 「・・・っ!」 フェルドの剣が夜の首にあたり少し血が滲んでいた 「どうやら奴隷の扱いを学ぶより騎士の躾け方を学ぶほうが先のようですね・・・一応僕は王族なんですけど王族のモノにキズを付けた騎士をどう処分するのかを教えて下さいますか?」 俺は夜に突きつけられている剣を握り 夜の首から離した 「ルーク王子!?何をして・・・!血が!剣を離して下さい!」 フェルドの声に驚きカルトと白髪の男も台所に駆けつけてきた 「何をしてるのですか!?・・・ルーク王子!手から血が!早く離して下さい!」 男は俺のところへ駆け寄り カルトはフェルドの横に立つと この状況にどうして良いかわからずオロオロしているフェルドに言った 「おい!フェルド!そのまま!絶対に剣を動かすなよ!動かしたら王子の指がなくなる!」 「お、おう・・・わかった」 フェルドが縋る様にカルトを見て返事をした。 「ルーク王子、ゆっくりと剣を離して下さい治療いたします」 男が剣を握っている俺の手にそっと触れたと同時に俺は更に強く剣を握った、 その手から勢いよく血がポタポタと落ちるのを見て 4人が焦りの表情を見せた所で俺はゆっくりと口を開いた 「今後、僕のやる事に口を出すのはやめてもらえますか?特に奴隷の扱いに関して・・・それをお約束していただけるのなら、この手を離しましょう・・・出来ないのであればこのまま指を切り落とします・・・その場合って治療出来ますか?」 俺は白髪の男に顔を向けると 「え・・・あ、私の力では切り落とされた指の治療までは無理です・・・」 「その場合、王族に傷をつけたと言う事で貴方も」 「約束します!!!だから早く手をっ・・・!!治療をっ・・・!!血が出すぎているっ!」 俺の言葉をさえぎってフェルドが焦った声で言った。 オイオイ・・降伏するの早くね? これくらいで戦場を潜り抜けてきた騎士がオロオロするかね・・・ まあ、騎士って殆どが貴族のボンボンの集まりらしいからな・・・ 甘ちゃんが多いのかもな、 ちぇ・・・ これからが良い所だったのにな、 この傷を理由に色々難癖付けて ジワジワ追い詰めてやろうと思ってたのに・・・つまらん。 「そちらのお2人もお約束していただけます?」 俺は白髪の男とカルトに言うとその場に跪いた 「「お約束いたします」」 2人の返事を聞き俺は剣から手を離した。 白髪の男がすぐに俺の手の治療をしている間、 俺も夜の首の傷を治療していた、 余程怖かったのか夜は少し震えて金色の瞳から涙が零れていた 「えっと・・・怖かったですよね もう、大丈夫ですから安心して下さい」 俺は夜の涙を自分の袖で拭ってやると、 夜は俺の手を掴み何か言いたげに俺を見たが  何も言わず左右に首を振っただけだった 「あの・・・喋っても大丈夫ですよ?」 俺がそう言っても夜は首を横に振るだけで話そうとしなかった。 俺は手の治療が終わると夜に飲み物を運んでもらい 俺はケーキとクッキーを持ってソファーの前のテーブルに置いた 「どうぞ、よろしければお召し上がり下さい。」と言ったが 夜は自分から手を伸ばしそうじゃなかったので 俺は夜の膝に座って5種類のケーキの中から イチゴショートと色々な種類の果物が乗ってるタルトのケーキの2皿を取った。 ノアールと同じように甘いものは余り好きじゃなかった時の為に 俺の分のケーキは果物のタルトにした。 イチゴショートを乗せた皿を持ち、 一口サイズをフォークでとって夜の口へと持っていったが、 夜は少し身を引き他の三人の視線に居心地悪そうに顔を背けてしまった。 とりあえず味の感想を聞きたかった俺は 夜の口に無理やりケーキをギュッツギュッツっと押し付けていたら ケーキが夜の口に入った瞬間目を見開いて俺を見た 「これ・・・なんだ?」 おっ!喋った! 「イチゴのケーキですよ?どうですか?味は?美味しい?それとも甘すぎて美味しくないですか?」 さあ! 夜はどっち!? 今のところ黒虎のノアールだけが甘いのが苦手だが・・・ 夜はどうだ? 「・・・うまい・・・これ食べていいのか?」 夜が俺の持っている皿を指差した 「あ、どうぞ食べて下さい」 そうか~・・・夜くんは甘いの平気かぁ良かった良かった、 これで皆と一緒に仲良く森でスイーツが食べられるな、 いつもノアールだけ甘いもの食べる時間はつまんなそうにしてるからな。 俺がそんな事を思いながら夜にケーキが乗った皿を渡そうとしたら、 ケーキを素手で掴み食べ始めた 「えっ・・・」 随分とワイルドな食べかたデスネ・・・ 俺は空の皿とフォークを持ったまま 目の前で勢いよくケーキを頬張る夜を呆然と見ていた。 食べ終わって自分の口元とクリームの付いた手をペロペロ舐めているのを見て、 俺は自分の車椅子に手を伸ばし宝石から濡れタオルを出して口と手を拭いてやった。 「もう無いのか?」と夜がテーブルのケーキに視線を向けると、 食われる!と思ったのかジッとこちらを見て動かなかった三人が 慌てて自分の近くにあったケーキの皿を掴んだ。 「あの、ルーク王子これは食べれる・・・の・・・ですよね?」 白髪の男が丸い形のチョコレートケーキを凝視しながら聞いてきた 「へ?もちろん・・食べられますよ?」 コイツ!何て事言うんだ!! 『職人泣かせの金城(きんじょう)』とまで言われたこの俺に向かって・・・!! 【説明しよう!『職人泣かせの金城(きんじょう)』とは、 金城光希(きんじょうこうき)が13歳の頃レギュラーで決まった仕事で 『コウ君と楽しく学ぼう!』と言う子供向けの  ほのぼのしたタイトルで始まった番組だった。 内容はその名の通り、色々な職人さんの所へ行って コウ君が色々学んでいくと言う企画のものだった。 しかし・・・『それでは、コウ君も早速体験してみよう!』のコーナーで 毎週ことごとくプロ顔負けの物を作り上げてしまっていた為、 このままじゃ駄目だ!・・・けど・・・これはこれで面白い!と、 この番組の関係者達がバタバタと新たに動き始めた。 この時すでに視聴率がかなり良かった為、 開始半年で企画内容とタイトルが変更になり 『Kouの果てし無き挑戦!』で番組は再出発し、 職人から学んでは、最後はその道のプロと対戦すると言う企画内容になった。 Kouに敗れた職人は ある者は自信をなくし泣く泣く店を畳んだ者・・・ そして、ある者はKouの作品・技術を見て悔しさや感動のあまり涙し、 その後は更に技術を追求していき大成功をおさめている者も居た。 その内SNSなどでも世界中にこの話題が広まり挑戦状なども番組宛に来るようになってしまい、 それも返り討ちにしていたら数年後には 『職人泣かせの金城(きんじょう)』と世間で呼ばれるようになっていた・・・ スタッフ達も金城光希自身もこの番組がまさか、こんなに話題になるとも  42歳になるまで続くとも思ってはいなかった。 そんな更に有名になり忙しくしているKouの姿を満足げに見つめるこの人物を除いては・・・・ 殆どの関係者達も、光希も最近まで知らなかったが、 実はこの番組の企画に一枚かんでいた、 そう・・光希のマネージャーただ一人を除いては・・・】 俺が丹精込めて作ったケーキだぞ!! 食べれるに決まってるじゃないか!! 見た目も味もどこに出しても恥ずかしくない仕上がりになっている! 「申し訳ありません、このような食べ物は初めて見たもので・・・どうしてよいか・・・コレも初めて見るもので・・・」 白髪の男がコレと言って手に持ったものはフォークだった。 城の食事も【キイの街】の酒場でも スプーンとナイフしか見た事がなかったので 予想はしていたが、フォークはこの世界にないらしい。 俺が持ってる食器は全部無属性で以前出した物だ。 そして今日気づいた! ケーキ一個分を乗せられるサイズの皿がない事に! 森ではリオンとノアは大皿で食べている、 アゲハは玩具の小さい食器を出してやった 俺も大き目の皿を使っているので 普通サイズの食器って 皿も湯のみもサラスだけしか使ってないので 数が2個ほどしかなかった。 今度時間がある時にでも食器そろえよう・・・。 「あ!えっと、こうやって・・・」 隣に居たフェルドが持っているカボチャタルトの乗ってる皿から フォークを取りゆっくりと見せるように一口サイズに切って持ち上げると、 待ちきれなかったのかフェルドは顔を寄せて パクッと俺が持ったままのフォークに食いついてきた。 「オイ!!フェルド!何やってんだお前!」 カルトの声にフェルドも『ハッ!しまった!』と言う顔をして 慌ててフォークから口を離し ケーキを持っている反対の手で自分の手で口を覆いモグモグと食べた後、 勢いよく皿の上のカボチャタルトを手で掴んで食べだした。 お前もかよ!? わんぱく小僧か! 俺のフォーク講座何だったのよ!! この後、再びカルトがフェルドを怒鳴りつけるが  カルトもフォークで抹茶ケーキを3口ほど食べた辺りで面倒だったのか  結局カルトも手づかみで食べていた。 それを隣に座っている白髪の男が唖然として見た後、 自分の皿の上で光に当たってツヤツヤ光っているチョコのケーキを見て喉をならした。 「本当にこんな宝石のように輝いて美しい物が食べ物なのですか?」 「甘くて、美味いぞ」 白髪の男にカルトが手に付いた抹茶チョコを舐めながら答えた。 恍惚として指を舐めているカルトは・・・エロかった・・・ 見かねて俺はカルトに濡れタオルで手を拭くようにと渡すと  クッキーの皿を指差して 「こちらも、頂いても宜しいですか?」と熱っぽい視線で見つめられた。 「ええ、どうぞ・・・」と俺がカルトに言うと、 そのカルトの隣で意を決した様にチョコケーキにフォークを刺して一口くちに入れた後、 涙を流している白髪の男が視界に入った。 え?何・・・この部屋・・・ ケーキ手掴みで食べる大の大人の男が3人と (仮にも王族の前でそんな食べ方しちゃ駄目じゃね?) ケーキ泣きながら食ってる男が1人・・・ もうヤダ・・・何か早く帰りたくなってきた・・・。 夜の膝の上で俺がそんな事を考えていると 夜が遠慮しがちに口をひらいた。 「それは…どんな味がするんだ?」 夜の顔を見ると視線が俺のフルーツタルトを物欲しそうに見つめていた。 「こちらも、食べますか?」 俺の言葉に嬉しそうにコクコクと頷いて尻尾も嬉しそうに揺れていた。 「でも、今度は手で食べたら駄目ですよ」 「わかった」 俺は夜の膝から降りて夜とフェルドの間に座った。 そろそろ札の操作の仕方を教えてもらおうと 白髪の男を見ると3人とも此方を見ていて ちょっと驚いた。 よく見ると夜の食べているケーキをジッと見ている・・・ 白髪の男は俺の視線に気づいて 少し恥ずかしそうに少し俯(うつむ)きメガネを取ってハンカチで涙を拭いた。 「・・・宜しければまだ、ありますけど・・・食べられますか?」 俺が少し呆れて言うと 「「「いただきます!」」」と直ぐに返事が返ってきた。 先程は宝石からケーキ15個乗っている大皿を出して小分けにしたが、 台所に行くのが面倒になった俺は 宝石から残りの10個入ってる大皿をそのままテーブルに出した。 3人とも「失礼します」と言いながら大皿のケーキに手を伸ばし 自分の皿に一個置いて夢中で食べ始めた。 夜の分のケーキを1個お皿に入れて俺はため息を付き紅茶を飲んだ、 俺も食べようと紅茶を置くと  食べ終わった空のお皿を持ったまま夜が反対の手で俺の太ももを揺すった。 「ん?どうしました?もう一つ食べますか?」 「・・・ない」 「え?」 「・・・もう、俺の分がない・・・」 夜が少し悲しそうな視線を向けている大皿へ視線を移すと。 大皿は空っぽだった・・・  なっ!?んな馬鹿なっ!? いくら何でも、こんなに早くなくなるわけがっ! 3人の皿を見るとシッカリ3個ずつ確保していた・・・。 ケーキが皿からハミ出てんじゃねーか! 俺だってまだ食ってねぇのに! 俺はため息をついた後、 空(から)の大皿を宝石にしまい  新たにケーキ15個乗ってる大皿を出した。 俺が自分の分のチョコケーキを取って、 夜が自分の皿には3個入れてくれと言うので取ってやってると ケーキを確保していた3人もまだ皿に2個乗っているのに手を出してきた。 どうやらケーキ1個食べたら1個補充しているようだ。 オイオイ!?まだ食うのかよ! いい加減にしろよ!!【ケーキバイキング】じゃねぇんだぞ!! カルトが甘党なのは知っていたが、 まさか他の奴までこんなに食うとは思わなかったぜ・・・・・・------っクソ!! コイツら結局全部食いやがった! 俺が苦労して俺の為に作った 俺が食う筈だった俺のケーキが・・・クスン。。 俺は心の中で泣きながら再び空になった大皿をしまうと、 ラスト1個を噛み締めながら食べている白髪の男に札の説明を求めた。 「その前に宜しいですか?ルーク王子!これはどこでお買い求めになられたのですか!?それからこの紅茶も!とても美味しいです!」 「是非!私にもお教えいただきたい!」 白髪の男に続いてカルトも前のめりになり聞いてきた。 もう!!ケーキなんか出すんじゃなかったぜ!! 全然話が進まねーじゃんよ!!! 「残念ですが、それはお教えすることは出来ないのです・・・申し訳ありません」 俺の言葉にカルトが食い下がった 「ルーク王子!お願いいたします!決して口外しないとお約束しますのでどうか!!」 ええっ~・・必死すぎじゃね? 「ルーク王子、カルトは甘い物の為なら命を賭けても良いと思ってるほどの甘い物中毒なんですよ・・・ここで教えておかないと、きっと王子に聞くまで毎日付きまとって離れませんよ?」 「フェルド団長はカルト副団長の上司なのですから、もちろん止めて下さるんですよね?」 「あー・・・一応努力はしますが・・・まあ無理でしょうね・・・」 苦笑いするフェルドの言葉に俺は諦めた様に溜息をついた 「わかりましたよ・・・そのかわり誰にも言わないとお約束してください、ケルベロスにも言わないで下さいね」 「わかりました」 「はい」 「お約束いたします」 フェルドに続いてカルトと白髪の男の返事を聞いて俺は答えた 「・・・ケーキも紅茶も僕が作りました・・・なので、どこにも売ってはいません」 「・・・作った?ご自分でですか?」 「ええ」 「それは、凄いですね驚きました・・・ですが、どうしてワザワザご自分で?言えば給仕の者が作ってくれるでしょうに」 白髪の男は少し驚いた後、不思議そうに聞いてきた 「そうでしょうね・・・」 「では、何故?」 「・・・ご存知かと思いますが、僕は昔毒を飲まされて死にかけました・・・その後も数回飲み物や食事などに毒を入れられいるので、自分で作った方が安全なんですよ」 「…ちょっと待って下さい・・毒!?そんな・・・私が聞いた話ではルーク王子はご病気で命が危なかったと・・・その時の後遺症で足を悪くされたと・・・」 白髪の男が言うとフェルドが軽く手を上げた 「チョット待ってくれ、俺の聞いた話では高い場所から落ちて死に掛けたって聞いたぞ!」 「なんだ?どうなってんだ・・・俺は庭で散歩中に悪魔に攫われかけたって聞いたんだが・・・」 カルトがフェルドに視線を向けて言うと 「オイオイ、どうなってんだ??!」 オイ!コラ! どうせ犯人あたりが真実を隠す為に嘘の噂を流したんだろうが、 せめて統一しとけよなっ!たくっ!いくら何でも雑過ぎんだろうがっ! 「・・・はぁ・・・まったく」 俺が小さくため息をついて呟いたのを聞き取った隣のフェルドが俺を見て 「ルーク王子は何かご存知なのですか?一体どうなっているんですか?」 「えっと、まあ・・・その話はまた次の機会にでもお話いたしますので、今はとりあえず札の説明をおねが・・」 「ルーク王子わかっておられますか?もしルーク王子が言うように毒を飲まされたのだとしたら、これは大変重大な問題なのですよ?しかも毒を食事に入れていると言う事は城に居る者で、王子のお命を狙っているのですから国王に伝え早く犯人を見つけ罰せねばなりません」 俺の言葉を遮り白髪の男がそう言うと  もうちょっとイラついて面倒になった俺はヤケクソ気味に言った 「すみませんでした、僕は毒を飲んだんではなく病気とうっかり高いとこから落ちて、それから、攫われ掛けて死にかけたんです、毒を飲んだってのは間違えでした」 「ふざけないで下さい!そんなわけないでしょう!!ルーク王子!真面目に答えて下さい!命を狙われいるんですよ!!!」 フェルドが俺の両肩を掴んで言ってくる 「あの・・・すみませんが、この件に関して僕はこれ以上お話しする気はありません、自分で何とか出来てますし・・それに国王もこの件はご存知の筈ですよ・・まあ、僕が居なくなった方が厄介事が一つ減って国王も喜ぶんじゃないですか」 「・・・そんな」 「息子が毒を盛られたと言うのに国王が知っていて何も処置しないはずは・・」 白髪の男とフェルドが困惑しているとカルトが紅茶を飲みほした後ゆっくりと口を開いた 「・・・まあ、あの国王様じゃあ有り得ない話じゃないな・・だいたい悪魔の討伐になんて普通自分の息子を行かせるわけがねぇ、結局は悪魔討伐に選ばれるなんてのは要らない人間だって事だ、俺達も騎士の間じゃあ厄介者扱いだしな まあ次の戦争死んでやるつもりはないがな」 「・・・そんなのは、噂でしかないと思っていましたが・・・まさか本当に必要のない人間を・・・?」 白髪の男が口元を手で覆い信じられないと言う顔で考え込んでしまった。 「あの・・・それより僕は早く札の説明を聞きたいんですが・・・それと、宜しければお名前をお教えいただけますか?」 「え!?あ、申し訳ございません!まだ名乗っていませんでしたか!?これは大変失礼いたしました私は【グランツ・エール・カール・ミイ】と申します。毎年この『金幸祭』で進行役を勤めさせていただいております 改めまして、どうぞ宜しくお願い致します」 「ハハハッ!まあアンタはこの会場じゃあ有名人だからな、あまり自分から名乗る事はそうそうねーよな!」 「名乗らずとも『金幸祭』に毎年来ている者ならば、まずお前の名を知っているしな」 白髪の男【カール】が俺に名乗った後フェルドとカルトが言った。 「そんなに有名な方なんですねカールさんは」 「いえ、そんな私など大した事はないのですが・・・」 「よく言うぜ!毎年客からだいぶ絞り取ってるそうじゃねーか!しかも!従業員の中でアンタだけ今だ、負けナシって聞いてるぜ」 「もう、お前に挑む奴など居ないんじゃないか?」 「いえいえ、皆様今年こそはと挑んでこられますよ・・・ではルーク王子今から札(ふだ)の説明を致しますので札を出して下さい・・・まずは此方を見ていただきます・・・・・・・」 ---------------1時間30分後----------------- 話が長い・・・ 途中、面倒になって殆ど聞いてなかった・・・ フェルドは説明開始30分位前から夢の中へと旅立ってしまった。 夜も気づいたらいつのまにか夢の住人になっていた。 カルトはお菓子と紅茶のおかわりを繰り返していた。 「えーと…つまり・・客同士の勝負は3回までで、ディーラーとは25回勝負出来る…と言うわけですね」 「「でぃーらあ?」」 カルトとカールが聞き返してきた 「あ、いや!えーと、その胸の赤い宝石を付けた従業員とは掛け金が無くなるまでか、最高25回まで勝負することが出来るんですね」 俺は慌てて言い直し、カールの胸に付いている 金の羽のブローチの一番下に付いている赤い宝石を指差した 「はい、この金の羽を付けている従業員ならば25回の勝負が可能です・・と、言ってもそんな25回も勝負なさる方は滅多にいませんが・・・」 「王子、ちなみに赤い宝石を着けてるのはこいつだけですよ」 「え?そうなんですか?」 カルトは紅茶を片手に持ちながら反対の手で隣のカールを指差した。 「その羽に付いている宝石の色で従業員の強さが決まってるんだが、黄→緑→青→赤の順で一番最強の赤の宝石を着けてるそいつは従業員の中で一番強く・・・て・・あー・・・勝つと何倍だ?」 カルトがカールを見て聞いた 「宝石の色が黄色い従業員に勝てばお金が2倍、緑が3倍、青が5倍、赤は・・今年は50倍になりました」 「「なっ!?」」 少し困った様にそう答えたカールに俺とカルトは驚いた・・・ってアレ? 何でカルトも驚くんだ? 毎年この祭りに出て・・・ん?『今年は?』って言ったか? 「おい!ちょっと待て!去年!去年は何倍だったんだ!?」 「去年は確か…20倍でしたね・・いや、実は私も上に今回はちょっとヤリ過ぎなのではないかと申し出たんですが…このほうが挑戦者が増えるし、お前はどうせ負けんからいいだろう…と言われ 押し切られまして…ハァ~・・これで負けたら私の懐が大変な事に・・・この『金幸祭』でしっかり稼いでおかないと一年間生活に困ってしまうので…私としても余り危険な賭けをしたくはないのですが・・・」 「これは・・・本当に負けたら大変だなお前・・ここの従業員ってのは勝負に勝ち続ければそれだけ給料が良くなっていくらしいじゃねーか、ただし負け続けると金を支払う事はないが給料無しって事があるらしいな、お前だけ他の従業員より一試合一試合が重い勝負になるな」 そうカールに言うとカルトは面白いなとクククッと笑った 「カルト様こちらとしては笑い事ではないんですがね・・・」 「って、事は今上位に居る僕達がカールさんに一回でも勝ってカールさんがその後 誰にも負けなかったら1位確実・・?」 「おや?ルーク王子、私と対戦致しますか?喜んでお受け致しますよ」 カールは本当に嬉しそうにニッコリと微笑んだ  まあ、上位の俺と勝負して勝てばコイツの給料恐らく大幅にアップするだろうからな… そら嬉しいだろうよ、 だが!そう簡単にはいかねーぜ? 「王子、止めておけ今までソイツに勝った奴なんて居やしないんだ せっかく王子のおかげで俺達は上位に食い込んでるんだ危ない橋を渡る事もない、確実に稼いでいった方が無難てもんだ」 カルトがカールと勝負するのを止めたが  俺はカールにニッコリ微笑み返した 「では、僕と必ず対戦して下さいね。約束ですよ」 「今からでも私は構いませんが、いかが致しますか?」 「いえ、最終日にお願い致します。恐らく毎年カールさんは最終日が一番お忙しいのではありませんか?」 「ふふっ…その通りです一攫千金 (一発逆転)を狙って上位に入れなかった者達が毎年最終日に押し寄せてきますからね」 「では、貴方の最後のお相手は僕にして下さいませんか?」 「ええ、よろしいですよ それでは、もう時間も遅くなって来ましたので私はこの辺で失礼させていただきます…お菓子と紅茶ありがとうございました 大変美味しかったです。最終日、ルーク王子と対戦出来るのを楽しみにしておりますので、どうぞ遊び過ぎて私との勝負の前に賭け金が無くならないようお願い致しますよ。それでは、皆様この後も金幸祭を楽しんで行って下さい 失礼致します」 カールが部屋から出て行きカルトがゆっくりと口を開いた 「王子…本気であの男と勝負する気ですか?」 「はい、それより少しお話・・・というか提案があるのですが」 「何でしょうか?」 「フェルド団長とカルト副団長は」 「ルーク王子、私達の事はどうかフェルドとカルトとお呼び下さい」 「え?・・わかりました、ではカルトさん達は今回、今度の戦争の為の資金を稼ぐ為にこのお祭りに参加なさったのですよね」 「はい、そうです・・何か問題が?」 「いえ、ですが先程のカールさんの説明からすると1位の人は国王様から金(きん)が貰えるのと後は札の中の金額全て・・・2位が札の中のお金半分で3位の人から下の人は何もいただけないのですよね?そうなると、このお祭りが終わっても使えるお金を手にするには2位までには入らないといけないですよね?」 「ええ、まあ駄目もとで来てはみましたが今回は王子のおかげで上位に入ったので希望が見えてきましたよ」 「では、カルトさん1位・・とって貰えませんか?」 「あ゛!?っんなの!無理にっ!!・・・・えっと・・・・ああ・・まあ取れるものならば取りたいとは思ってますが・・さすがに1位は厳しいのでは・・?」 俺の言葉に一瞬素に戻って少し困った顔をしているカルトに俺はニヤリと笑みを浮かべ言った 「そこで、提案なのですが・・・」 -------------------------------- 「・・・本気ですか王子?それは・・・いくら何でも無理がありますよ」 俺がカルトに提案を持ちかけると その内容を聞いてカルトは呆れたように溜め息をついた 「では、早速今から僕は会場へ行ってまいりますので」 「王子!お待ち下さい!私も一緒にお供いたします!オラッ!フェルド!いつまで寝てやがるんだ!とっとと起きろ!行くぞ!」 カルトが寝ているフェルドに蹴りを入れると椅子が動いて 夜も起きてしまったので俺は夜に声をかけた 「僕達は会場へ行って来るのでココで待っていて下さい」 夜は少し躊躇ったようにゆっくりと頷いた 「あれ・・・?アイツは?」 「カールならお前が寝てる間にとっくに出て行ったぞ、いいから早く立て!王子と一緒に会場へ行くぞ!」 寝ぼけながらキョロキョロと辺りを見回してカールを探していたフェルドにそう答えた後、 剣の柄頭(つかがしら)でフェルドの後頭部を後ろから突き刺すように思いっきり当てた・・・ あ、あれ絶対痛いヤツだ・・・ 思った通りかなり痛かった様で フェルドは「イッッッ-----テェェッ----!!?」と叫びながら暫く後頭部を抑えていた。 会場へ来るとルーレットやカードやダーツに似たゲームで遊んでいる人達が多かった ココに居る殆どが胸に金の羽をつけた従業員と勝負しているようだ。 まずは一番弱い黄色の宝石をついている従業員とダーツで勝負する事にした 「何回勝負に致しますか?」 従業員の男が笑顔で言った 「え?勝負の回数とか決められるのですか?」 「あ!そういえばカールの奴そこんとこの説明してなかった気がするな・・・ルーク王子、一度勝負をした従業員とはもう出来ませんよ?」 そう言った俺の左に立っていたカルトを驚いたように見上げると 「えっ!?ですが何度でも勝負が出来るってカールさんが・・」 やっぱりなという表情で説明してくれた 「同じ従業員とは二度は勝負出来ません・・ただ勝負の回数は此方で決められます、但し最高25勝負までです」 「そうなんですね・・えーと・・では・・っ!?」 「邪魔だどけ」 俺が勝負の回数を言おうとした時だった 横から車椅子に蹴りを入れてきた馬鹿がいた。 中学生くらいの年の少年と騎士が3人・・・ 「おい、5回だ」 「申し訳ございません、こちらのお客様がお先でしたので その次にお相手させていただきます。それまでお待ちいただくか、他の場所へとお移りください」 俺に蹴りを入れてきた少年と従業員が会話を始めた。 「お前・・俺が誰だか知らないのか?」 「存じ上げております、ですが・・・この【金幸際】では たとえ王族だろうが何だろうが決まり事を守っていただかなくては・・・」 コイツ誰だかわかんねーけど この偉そうな態度からすると  どっかのお偉いさんのガキだな多分 フェルドとカルトも跪いてるし・・・ 何か面倒な事になる前に・・・ 「あのっ!僕はこの方の後で構いませんので・・」 「ですが・・・」 「あっ!でしたらカールさんがどこに居るか教えていただけませんか?お聞きしたい事があるので・・・」 「わかりました、では此方で呼び出しておきますので彼が来るまで 其方でお待ちください」 「はい、ありがとうございます」 テーブルと椅子が置いてある場所まで移動すると カルトが飲み物を持ってきてくれたが・・・ 「さっき王子の部屋で飲んだ紅茶のがいいな・・」 うん、俺もそう思う・・・ フェルドが一口飲んで呟いた言葉に心の中で賛同した。 「カルトさん入れ物だけ持って来てもらえませんか?」 カルトがコップだけ持ってくると俺は3人分紅茶を入れて一息ついた 「ところで、あの方は誰なんですか?」 「「えっ!?」」 「え?」 俺がさっきの少年を指差して聞くと二人とも何故か驚いていた 「え!?会ったことないのですか?ルーク王子のお兄様ですよ!?」 「・・・え?」 「第一王子のベノム様です」 「・・・では僕の一番上の兄ですか?随分年が離れてませんか?」 「確かベノム王子は16歳だったと思いますルーク王子とは12離れていますね」 そこへ、ベノム王子に付いていた腰まである金の長い髪をミツアミにした緑色の瞳をした騎士が 一人こちらへやってきた 「久しぶりだな2人共元気にしてたか?」 「アルト団長!」 「アルト様、お久しぶりです」 「フェルド・・私はもう団長ではないよ」 「あ!すみませんつい」 そう言ってハハハっと笑うフェルドと 少し困ったように微笑んだ第一王子といた騎士は俺へと視線を向けて跪いた 「先程は失礼いたしました。私は【タイラー・ガードナー・アルト・ヴァレリー】第一王子専属の騎士でございます。お怪我はございませんでしたでしょうか?ルーク王子」 「はい、大丈夫です・・ところで・・お2人は顔見知りなのですか?」 俺はフェルドとカルトに向かって言うとフェルドが嬉しそうに 「俺とカルトはアルト団長に憧れて騎士を目指したんですよ」 「カイザーなんか足元にも及ばないほど強いですよ、元々は第七騎士団の団長をしていたのですが・・第一王子に引き抜かれて今は第一王子の専属の騎士に・・」 「では、フェルド団長の前の団長さんなのですか?」 「・・・・・あ、いや・・俺の前の前がアルト団長です・・」 う~ん・・・何だか余り聞いちゃいけなかったかな? 3人とも微妙な顔してる 俺は話を反らそうとカルトにコップを二つ持って来てもらい アルトにも紅茶を勧めた 「アルト様よろしいのですか?此方に来ていて・・・」 カルトが第一王子の方を見て言うと 「ああ、大丈夫だろう・・ありゃ、暫く始まらんよ」 アルトの言葉に俺がベノムをの方を見てみると 何やらまだ従業員とゲームを始めずもめていた。 「私は2人が羨ましいよ、こんなに可愛らしい王子に付けて、その上こんなにも美味しいお茶をいただけるなんてね」 アルトは少し悲しげな表情を見せた。 「ルーク王子こちらはどうするのですか?」 カルトが余ったコップを1つ持ち上げた 「ああ、それは・・・ほら来ましたよ」 遠くからでも目立つ白髪の美しい男が此方へ向かって歩いてくるのが見えた 「ああ、カールのですか」 カルトが納得したように空いてる席へコップを置いた 「お待たせして申し訳ございませんルーク王子」 「いえ、お忙しいのに此方こそ申し訳ありません 少しお話があるので、とりあえず座って飲んで下さい」 「はい、では失礼いたします・・・それで話とは?」 「その前にカール・・お前ルーク王子に同じ従業員とは一回しか勝負出来ない事を説明してなかったろ・・・勝負の回数は言ってたけどな」 「えっ!?そんな筈は・・・」 カールは焦った表情で俺を見た 「ええ、先程カルトさんから聞いて驚きました・・」 「俺も一緒に説明聞いてたからな、お前その説明してなかったぞ」 カルトの言葉にカールは慌てて俺に頭を下げてきた 「申し訳ございません!度々こんな失態を犯すなんて・・・っ!こちらの件も兼ねてお詫びを・・」 「その件なのですが・・・・・ランキング表の名前を変えていただきたいのですが・・」 「「「「らんきんぐ?」」」」 4人が不思議そうに一斉に俺を見た 「あっ!えっと順位表の名前です!変えて貰うことは可能でしょうか?」 「ああ、まあ出来なくはありませんが・・・【金幸際】が終了して最後の発表の時は名前を戻す形になりますけど・・・それでも宜しければ可能ですが・・一体何故そんな事を?」 「僕は余り目立つ行動はしたくないので・・・貴方に勝てば嫌でも名前が上位にいくでしょうから・・」 俺がそう言ったとたん眼鏡の奥くの黄緑色の瞳がギラリと光った 「ほう・・名前を変えた事が無駄にならなきゃいいですけどね」 少し好戦的にカールが俺に微笑む 「まあ、それは大丈夫です無駄になる事はないと思いますが・・それと貴方との勝負も観客が居ないほうがいいのですが・・せっかく名前を変えても僕と貴方との勝負を観戦していたら一発で僕が1位だとばれてしまいますからね」 騎士が3人とも呆然と俺を見ていたが カールは少し引きつった笑みを見せ 「・・・凄い自信ですねルーク王子・・何か私が負ける根拠でもおありですか?」 「貴方がた従業員はこの【金幸際】で【ある】事をしている・・・だから負ける従業員など恐らく殆どいませんよね?」 「!?・・・何を仰っているのかは解りませんが名前の変更は直ぐにでもおこないましょう・・・何か希望はございますか?」 「では、【ジュエル】でお願いします」 「承知致しました・・・それでは私との勝負の場所は特別室の赤い宝石の付いた部屋を空けておきます、場所は其方のお二方がご存知かと思いますので」 「わかりました、フェルドさんカルトさん案内お願いできますか?」 「「はい、お任せください」」 「先程から気になっていたのですが、どうして彼はここにいらっしゃるんですか?確か第一王子の・・」 「ああ、私か?私はアチラの話が長引きそうだったんでな、挨拶もかねてコッチに非難してきたのだよ」 アルトが指差した方をカールが視線を向けると、 まだ第一王子と従業員が言い合っていた 「・・・何をしているのですか?あの人達は」 俺が説明するとカールは眉間に皺を寄せて溜め息をついた 「まったく・・・どうしようもないですね」 「どっちがだ?」 「どっちもです!」 フェルドの言葉に即答で返したカールは俺の右手を取り手の甲にキスを落とした 「ルーク王子・・・貴方に幸運がありますように・・せめて最終日の私との勝負までは負けないでいただきたいですね」 「おおっ!ルーク王子良かったですねぇ白髪の人間に口付けしてもらうと運気が上がるらしいですよ、特にカールはこの祭りじゃ負けなしですからねご利益ありますよ」 暢気にアルトがそんな事を言っていたが カールの目は挑発的な目をしていた、 そう・・この目は、ウチの従業員に勝てるものならば勝ってみろと・・ 運がよければ勝てるかもしれませんねって 喧嘩売ってる奴の目だよ!! その喧嘩買ったろーじゃねーかっ! 俺はカールの胸の位置にあったクリップが付いたスカーフをグッ!と引っ張り 近づいてきた頬にキスを落とした後  耳元で小さな声でささやいた 「ここにいる従業員全員不器用なんですかね?色々とヘタ過ぎて見てられませんよ・・やるならもっと上手くやるように教育し直した方がよろしいかと思いますよ」 そう、ここの従業員は皆イカサマしてやがる! カールから手を離して俺はニッコリ微笑み言い返した 「カールさんにも幸運がありますように、僕との試合まで頑張ってくださいね」 カールは驚いて一瞬固まっていたがニヤリと笑みをつくり俺を見下ろした 「・・・ええ、それでは私はアチラの仲裁に行ってまいりますので、この辺で失礼させていただきます」 「あのルーク王子さっきの順位表の事ですが・・目立ちたくないと仰いましたが、逆に目立ったほうがいいのでは?他の王子達は目立って国王の目に留まろうと必死ですよ?」 カールがこの場を去った後アルトが俺に問いただしてきた。 「目立つとどうなりますか?」 「へ?あー・・国王だけでなく周りからも一目置かれるかと思いますが・・」 「一目置かれるとどうなります?」 「ええ!?そうですね~・・期待されて・・次期国王になるんですかね・・」 「次期国王になる可能性が出てくると、他の王子はどうすると思いますか?」 「・・・!?」 このアルトの表情を見て確信した 第一王子は自分が王になる為に他の王子達に何をしているのかが・・・ 「貴方は知っているのですね?」 「あっ・・・あの・・私はっ!」 「あ!いえ、第一王子の事を問いただそうとしているのではなくてですね、その目立(めだ)てばそう言う事もあるという事をいいたかっただけなんです」 「・・・ルーク王子貴方は凄いですね、まだ幼いのに賢明に戦ってらっしゃる・・それに比べて私は・・」 「貴方も戦っているのではないですか?第一王子と居るのはとても辛そうに見えました。それなのに耐え忍んで己と戦っている印象を受けました、それに貴方はとても強くて尊敬出来る人なんだと思いますフェルドさんとカルトさんが貴方を目指して騎士になるくらいですから」 「ありがとうございます。ルーク王子はまだ幼いのにしっかりしておられますな、こんな事を言っては何ですが第一王子などよりもよっぽど大人のようだ・・・フェルド、カルト・・ルーク王子のそばに居られる君達が本当に羨ましいよ・・・そう、本来ならば私が守るはずだった・・・」 辛そうな表情をしたアルトが俺に手を伸ばし その手が俺の顔の横まで来くると 俺の頬に触れる前に彼は堪える様にグッと拳を握り自分の方へと手を戻した 「守るはず・・とはどう言う事ですか?アルト様」 カルトがアルトに聞くとアルトは俺を見て少し笑みを向けて話始めた 「私はルーク王子の母親のグローリア様の友人であり、そして彼女の専属騎士を志願していたのですが・・・その時 彼女はもうすでに病で弱りきってしまっていて彼女は俺に何度も『この子が産まれたら、この子を守ってあげてお願いよ・・・もし私が死んでしまったらこの子は一人になってしまうわ・・ケルベロスとアルトで私の代わりにこの子の成長を見守ってあげて・・お願いよ・・せめてこの子が大人になるまでは・・・そばに居て守ってあげて』と、だから私はグローリア様がお亡くなりになられた後、国王へルーク王子の専属の騎士にしてもらえるように志願したのですが・・・【専属騎士】は騎士と王子、双方の了承がないと認められないので第七王子はまだ赤子だから本人の意思がとれないと言う事で認めてもらえませんでした・・・それを」 「おい!アルト!何をしている行くぞ!」 そこへダーツが終わったらしい第一王子が遠くから怒鳴りつけてきた 「すみません、ルーク王子お話の途中ですが私はこの辺で失礼させていただきます。ルーク王子・・・私は無力で貴方に何もしてさしあげられませんが、貴方の幸せを心から願っております、本日はお会い出来てよかったです・・2人共これからも、しっかりルーク王子をお守りするんだぞ!では失礼いたします」 そう言って早足でアルトはその場を去っていった。 その後ろ姿を悲しそうな表情で2人の騎士が見つめていた 「ヒデェー話・・・」 フェルドがポツリと言葉を漏らした。 それを聞いてフェルドに顔を向けるとフェルドは俺の視線に気づいて少し困ったように微笑んだ 「アルト団長は第一王子の騎士なんてなりたくなかったんですよ」 「・・・でも双方の了承と言うことは・・」 「そうです、アルト団長は了承せざるおえない理由があったんです・・・家族を人質に捕られ脅されていたらしい・・アルト団長の母親は病人(やまいびと)でな・・アルト団長の妹が面倒を見ているらしい、父親は国王様の専属の騎士なんだが・・・アルト団長の話によれば【ガードナー】様も・・あ!アルト団長の父親の事なんですが、ガードナー様も国王様の専属の騎士には望んでなっているわけではないらしいです」 「まったく・・アルト様もガードナー様も素晴らしい騎士だと言うのに・・・2人共その強さに加えて無駄に顔がよかった為に王族の装飾品にされちまった、騎士なんてのは戦場・・・そう、戦ってこそ価値があるというのに【王族の専属騎士】なんて・・・っ!クソッ!だから王族はイヤなんだ!」 「落ち着けよカルト・・気持ちはわかるが・・ルーク王子が居るの忘れてるだろお前・・」 確かに王族の専属騎士なんてなったら戦いから遠ざかるもんな・・・ 王族が戦いに参加する事はまずないからな・・・ あ!俺を除いてな(笑) そして、俺はダーツ勝負を終えた後 呆然と立ち尽くす対戦相手だった従業員を後にして 次のゲームへと移動するとフェルドが「俺も一勝負行って来るかな!」と言ったので、 俺は慌てて止めた 「どうしてですかルーク王子?少しでも増やさないと・・・見て下さいよあの台の奴ずっと調子が悪いみたいで、さっきから負けが続いてるんですよ!俺アイツと一勝負してきますよ!あの調子だったら誰でも勝てそうですよ」 「あの緑の宝石の付いた従業員ですよね・・・あれは駄目です、ああやってワザと負けて客が金額を増やしたところで最後には必ず自分が勝って全額持っていってます」 「へっ!?そうなんですか・・・?最後たまたまアイツが勝ってるだけじゃ・・・」 「よくお気づきになられましたね・・ルーク王子・・俺もフェルドと一緒でアイツなら行ける気がしたんですが・・・そう言われて見れば一見(いっけん)負けている印象を受けますが・・最終的に彼は損はしていませんね・・・」 「お2人に忠告しておきます。確実にお金を手に入れたいのならば絶対に賭けに参加してはいけませんいいですね?」 「「・・・わかりました」」 「では!次に行きましょうか!」 そして、次々と従業員を負かして勝ち進んでいく俺に  負けた従業員達が信じられないものをみるように呆然と俺を見つめていた。 フェルドとカルトも驚いた表情をしていたが、 俺の気が散ってはいけないと遠慮していたのか  俺の部屋へつくまで黙って俺についてきてくれた。 「おいおい・・・嘘だろ!?会場にいた従業員全員倒しちまったぞ・・信じらんねぇ・・一体どうなってんだ!?」 「・・・もう後残ってるのは・・カールただ一人か・・アイツが一番厄介だな・・それにしてもルーク王子がこれ程お強いなんて驚きました」 フェルドとカルトが俺の部屋へ戻ってくるなり騒ぎ始めた。 「ありがとうございます。あの、もう僕はもう休みたいのでまた明日来ていただいても宜しいですか?」 「そうですね、もう遅いですし俺たちも部屋へ戻ります。明日またこちらに伺いますので」 「ごゆっくりお休み下さいルーク王子それではまた明日、失礼いたします」 「はい、今日はありがとうございました。おやすみなさい」 フェルドとカルトが退室した後、 浴室の方から夜が現れた 「おう!夜ただいまーイイ子にしてたか?」 「・・・風呂を入れておいた」 「お!気が利くなぁ ありがとな!じゃあ早速・・」 「お前は何であんな事をした!」 「へ?」 「俺の為に戦って、お前を助けようとした俺をお前はまた助けやがって・・・っ!しかも!あのデカイ方の騎士の剣を握るなんて!本当に指がなくなってたかもしれないんだぞ!何なんだお前は!いいか王子よく聞け!あの試合の時カールとか言う男が助けに入らなかったら死んでいたかもしれねぇんだぞっ!」 「いや、それは有り得ないんだけど・・・夜、お前また泣いてんのか?」 夜は怒鳴りながらも その目からはボロボロと涙がこぼれていた 「・・・っ!うるせえ!泣いてない!」 「いや・・・そんな分かりやすい嘘ついてもしょうがねぇだろうが・・はぁ~・・いいか?俺は別にお前の為にやったわけじゃねぇんだよ・・戦いも面白そうだから参加したんだ、お前なんか そのついでだ、ついで!だからお前は全然気にする必要なんて全くないんだよ!わかったか?・・とにかく風呂に入るぞほら来いよ」 俺は夜を風呂へ連れて行き洗った後、 夕飯を食べて狼姿の夜を枕にして寝た。 そして、【金幸際】最終日までダラダラと騎士達と部屋で過ごし、 俺は今、赤い宝石の扉の前にいる。

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