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第2話

聖騎士(せいきし)とは 全世界魔力階級制度のトップの力を持つ者の事を言う。 魔力階級制度上位しかなれず魔法使い達の憧れの存在である王都を守る騎士団。 その騎士達でさえ憧れの聖騎士になれるかもと希望を抱いている。 しかし聖騎士は潜在的な能力であり、努力してなれるものではない。 聖騎士の力は普段は身体の中に潜んでいて覚醒状態になると身体の何処かに薔薇の模様が浮き出て最強の力を手に入れる。 聖騎士は世界でも四人しかいなくて聖騎士がいる国といない国では立場も変わってくる。 だからか最近偽物の聖騎士が現れたりして本物は本当にいるのかと疑う者も増えてきた。 一部の人以外知られていない秘密があり、聖騎士は一人では覚醒する事が出来ない。 |共魔術師《きょうまじゅつし》、それが聖騎士には必要不可欠の存在だった。 共魔術師は聖騎士とは真逆で魔力がとても低くて聖騎士よりも見つけにくく、一人しか存在しない貴重な存在だった。 共魔術師は聖騎士に愛を与え、力を覚醒させる聖騎士のためだけが存在意義と言われている。 そしてその共魔術師はゲームのヒロインである少女の正体だ。 少女の愛で攻略キャラクターである騎士達を覚醒させて悪役の双子や黒教団と戦うストーリーだった。 何故、死んだ今…こんな事を思い出すのだろうか、身体が動かなくなる前までやっていたから思い入れが強かったのかもしれない。 何処を見ても真っ暗な闇の中ただただ落ちていく、今までの出来事が走馬灯のように流れている。 すると何も変わらなかった風景に一筋の光か見えた。 あぁ……そうか、生まれ変わるのか…暖かな光を見つめて死ぬ時出なかった涙がこぼれ落ちた。 光に向かって手を伸ばしながらふと小さな疑問が生まれた。 なんで俺はまだ生前の記憶を持っているのだろうか。 きっと転生したら全て忘れるのだろうか……この気持ちも全部… 大きな産声を上げる、悲しくない筈なのに…なんでこんな切ない気持ちになるのだろう。 そっと抱き抱えられて暖かな毛布にくるまれた、気持ちがいい。 生まれたばかりだからか目が開かない、周りを見れないと状況が分からない。 手足も上手く動かす事が出来ず、普通に喋る事も出来ず冷静に考える。 まだ生まれて間もない赤ん坊なのに俺はまだ生前の記憶を覚えている、中身は17歳だ。 何処かに寝かされた後、もう一人の産声が聞こえた。 もしかして双子なのか?兄弟がいなかったから何だか新鮮だ。 また病気が見つかり病院から出れなくなったらと思うと怖かった。 泣きつかれてとても眠くなった、うとうととしながら俺は再び夢の世界に旅立った。 次に目を覚ましたのは真っ白な病室の天井ではなく見知らぬ天井だった。 変な模様が描かれたテレビで見た美術館みたいな神々しいような雰囲気を感じた。 隣を見るとピンク色の服を着て寝る赤ちゃんがいた。 ピンク色だから女の子だろうか、俺より遅く生まれたみたいだから双子の妹だろうか。 動く事が出来ず、ただジッと見つめている事しか出来なかったら部屋のドアが開いた。 まだ首が自由に動かせないから誰が来たか見る事が出来ない。 すると俺と妹を覗き込み優しい笑みを向ける若い女性がいた。 母親だろうか、優しそうで何処か儚げな雰囲気の女性だった。 俺はこの家族と新しい家庭を作るのかと胸を高鳴らせていたら母の口から衝撃的な言葉が出てきた。 「…ごめんなさい」 俺に向かって何度も聞いたその言葉に鼻がツンとした。 なんで、なんで謝るんだ?…また、俺は望まれない子なのか? 感情に敏感な赤ん坊の俺は泣いた、自分では感情がコントロール出来ない。 母は俺の頭を壊れ物を扱うように優しく撫でられた。 いやだ、俺は今度こそ…普通の幸せを……感じたかっただけなのに… 母のこの言葉の真実を知るのは俺がもう少し大きくなってからだった。 そしてこの世界の事を理解するのも閉鎖された室内の中でだと情報が入らず遅かった。 母は忙しいのかずっと付きっきりで俺達双子を見ていられず部屋を出ていった。 入れ代わりで世話係のメイドの女性がやってきた。 メイドを雇うほどの裕福な家庭なのだろうか、服も和服で上品そうだった。 それにしてもここは病院ではないみたいだから身体の何処かが故障しているわけではなさそうだ。 母のあの言葉の意味はどういう意味なのだろうか、謝るほどの事があるのか? メイドは無表情で失礼だがまるで動く人形のようで怖かった。 触れられた手がとても冷たく身体が震えた、本当に人…だよな? …このメイド、何処かで見た事があるような…誰だっただろうか。 テレビ…?思い出せない、そもそも生前に見ていたら年齢が合わなくなると思う。 女性に着替えさせられて恥ずかしかった、赤ん坊だから当たり前なんだけど自我があるから余計に意識してしまう。 入院している時に看護士の人に世話を掛けた事はあるけど…何度されても慣れない。 妹の分の着替えも終わり、メイドは俺達を寝かしつけるように腹の部分を撫でた。 赤ん坊だから何もする事がなくて瞳を閉じて寝るだけだ。 すぐに睡魔が襲ってきて、そのまま身を委ねた…何処からか子守唄のようなオルゴールのあやす音が聞こえた気がした。 早く歩きたい、走りたい……健康に不安はあるが今悩んでも仕方ない。 前向きにならなきゃいけないと生前学んだじゃないか。 明るくやりたい事を考えるといろいろと溢れてくる。 まず学校に行って友達沢山作って、遊びたいな。 病室から聞こえる庭で遊んでいる子供達の笑い声がとても楽しそうで羨ましかった。 いろいろやりたい事を想像すると楽しくなった。 そして季節は暖かい春から熱い夏へと変わった。 部屋はクーラーもないのに適温になっていた。 赤ん坊は体温に敏感だからこの部屋は快適だった。 でも空気の入れ替えで窓を開けられるとむわっとした熱い熱気が襲う。 ちょっと汗を掻いた、するとメイドが俺の身体を触って冷やしていた。 どうしてこのメイドはいつも体温が感じられない手をしているのだろうか。 窓を閉められ、また部屋が適温になった。 この部屋も不思議だ、扇風機や冷風機なんてないのになんでこんなにすぐに適温になるんだろう。 天井を見つめると、なにかが天井を飛んでいるのが見えた。 虫?埃?こんなの今まであっただろうか。 目を凝らして見ると雪の結晶のような形のものが浮いている。 よくは見えなかったから本当に雪の結晶だったかちょっと自信はないがなんでこんな場所にあるのか不思議だった。 ……あれって本物…なわけないか、魔法の世界でもあるまいしきっと埃を勘違いしたんだろう。 そう思うことにして再び俺は目蓋を瞑り眠りについた。

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