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第8話

※ジョーカー視点 ジョーカー・アルバロ、10歳…上階級魔法一家で生まれ、俺も上階級の魔法使いだ。 アルバロ家は貴族階級の伯爵という位置にいた。 代々騎士の一族として国に貢献したと知られている、姉と4つ下の弟がいる…姉も女騎士として活躍している。 生まれた頃から右目が見えなくて隻眼だと医者に言われていた。 騎士として目は敵を見極めるために大切なものだと教えられていて、俺は騎士として絶望的だと周りの魔法使いに言われていた。 片目が見えないからなんだ、元々見えないのだからそこまで落ち込む事はない。 修行を重ねれば俺だって強くなれる、騎士になれる。 無理をしなくていいと母に言われたが俺はアルバロ家が騎士に誇りを持つというなら俺もその誇りを受け継ぎたい。 右目を黒い眼帯で覆い隠し、気を引きしめていた。 フリードとは赤ん坊の頃からの腐れ縁だが、お互い目と目が合った瞬間感じた。 あぁ、コイツとは気が合わないなー… 幼馴染み腐れ縁と一般的に言われる仲だがそれ以上でも以下でもない、お互いがお互いに興味がない。 騎士一族は王族ともそれなりに長い付き合いなのでパーティーに呼ばれる事が多々ある。 その時は決まってフリードと鉢合わせをする。 お互いの家族は挨拶を交わすが俺達は何も話さず一定の距離を保ちながらお互い目を合わさないようにそれぞれ別の方向を向いている。 嫌いというわけではないが、仲良くしたいわけではないからこのくらいの距離がちょうどいい。 人混みが苦手でついでにタキシードのネクタイが首を絞めて苦しい。 パーティーなんて参加してる暇があったら鍛えていた方が有意義な時間だと思うのは俺だけなのだろうか。 なんか向こうでざわざわと騒がしい声が聞こえた。 興味ないどうでもいいと壁に寄りかかる。 外に行けば軽く運動が出来るかもしれない、そう思った。 こんなところに居ても時間の無駄だろう。 騒ぎが落ち着いたところで俺は近くにいた婆様に外に出てる事を告げた。 家族の中で一番信頼しているのは婆様だ。 俺が隻眼でも騎士になりたいと伝えたあの日「人一倍努力して聖戦士に負けないほどの強い騎士になりなさい」と頭を撫でてくれた。 無理だと決めつけず俺の背中を押してくれた。 俺はそんな婆様の期待に応えたいと思っている。 外に出るとパーティー会場の熱気を冷ましてくれる冷たい風が吹いていた。 さてどうするか、パーティー会場はとても広いから周りを走るだけでいい運動になりそうだ。 そう思って少し軽く走り出した。 すると普通の人なら暗闇に同化して見えづらいだろうが俺は片目が見えない代わりに残った左目が異常に視力が高く、それが黒い布だと気付いた。 なんで布がこんなところにあるのか分からなかったがとりあえず拾う。 布を広げると上着のようで誰かの落し物だろうかと地面に落ちた時に付いたのか土や草を払い周りを見渡した。 するとベンチの上で小さくなるその姿を見つけた。 白いシャツしか着ていない、上着が子供用の小さなものだからきっと彼のだろうと思い近付く。 なんで外は寒いのに脱いだのか、変な奴だな……それが第一印象だった。 「これ、君の?」 そう言って目の前に上着を見せると少年は上着を受け取った。 少年が俺を見上げるとちょうど照明が当たりはっきりと少年を写し出した。 美とは程遠いほど没個性の平凡な顔、まず大勢の中に迷い込んだら見つからないだろう。 それほど俺にとって印象がない顔だった。 なのになんでだろう、こんなに目が離せないんだろう。 瞳から零れる涙がキラキラと真珠のように輝いて見えた。 「…ジョーカー」と自分の名前を呼ばれ現実に戻されたように目を見開き驚いた。 俺、自己紹介しただろうかと首を傾げる。 「なんで、俺の名前…」 「えっ、えーっと…さっき誰かが言ってるの聞いたから!」 「…そう、婆様かな」 俺を呼ぶのは家族だけだから一番俺を呼ぶ婆様が頭を過った。 婆様と言っても君はきっと分からないだろうから答えは分からないままだけど… 立ったまま話しても足を鍛えるのに良いが少年の隣に座りたい、なんとなくそう思ったから隣に座った。 少年は驚いていたが何も言わないから嫌ではないとそう思っておく。 俺は身体を動かしに来たけど彼は外で何をしていたんだ?しかも上着なしで… それにネクタイもしていないみたいだけど、どうかしたのだろうか…犯罪のような気配がするのは気のせいか。 「なんで君ここにいるの?」 「え…えっと、外の空気を吸いたくて」 「そっか、俺と同じだね…俺はあまり人混みが苦手で気分が悪くなって出てきたんだ」 「そうだったんだ」 そうか、良かった…てっきり変態オヤジに変な事をされたと思ってビビった。 俺は修行が第一で外に出たが、人混みで気分が悪くなったのも本当だからそう言う。 さわさわと風に木の葉が揺らされる。 家族以外の他人と二人っきりは初めてだった。 正直俺の話題なんて筋トレしかないから何を話した方がいいのか本気で分からない。 そういえば彼は俺の名前を知っているのに俺は知らない。 何だか不公平だと思い名前を聞いた。 彼の名前はイリヤだと言った、イリヤ…うん…いい名前。 それから特になにかするわけでもなく二人でボーッとしていた。 修行しているより彼と居たいと思うなんて初めてだった。 なんだろう……この気持ち、ふわふわする。 不思議な感情の正体を考えていたら遠くからイリヤを呼ぶ声が聞こえた。 きっとイリヤを探しに来た家族の誰かだろう。 もっと一緒にいたかったがイリヤは嬉しそうな声を上げていたから家族のところに戻りたいのだろうと立ち上がった。 俺は笑顔を作るのが苦手だ、姉には表情筋が死んでると言われるほどだ。 だけど最後くらい笑って見送りたいと思い一生懸命笑顔を作った。 手を差し伸ばすと強く握った。 しかしなにか様子が違うとすぐに気付いた。 もしかして足が痺れたのか?足が震えている。 支えようと一歩踏み出そうとしたらイリヤは俺のズボンのベルトを掴んだ。 簡単にズボンがずり落ちたりはしないが、冷静な判断が出来ないほどに慌てていた。 よりにもよって一番見られたくない彼に失態を見せる事はどうしても避けたかった。 離してほしくてイリヤの手を掴んだらバランスを崩した。 一瞬、なにが起きたか理解出来なかった。 俺の足の間にイリヤがいる、しかも口を付けて…… アルバロ家は硬派な一族で性行為そのものは知っているがそういう事をするのは伴侶のみだと決まっている。 だからこんな……こんな…… 頬が赤くなった、自分がとても恥ずかしく思えた…反応してしまった自分自身が……煩悩に支配されそうになって怖くなった。 今まで身体を鍛える事にしか興味はなかったのに……こんな、興味… イリヤに浅ましい自分を見られるのが嫌だった。 顔を手で覆い隠す。 もう一度イリヤを呼ぶ家族の声が聞こえた。 動かないイリヤを立たせて軽く背中を押した。 「…呼んでる、早く行った方がいい」 「俺を………捕まえないの?」 「………………それは俺達が大きくなってからな」 俺は決めた、そうそれは初めて人に抱いた興味。 大きくなったらイリヤを捕まえにいく、何処にいたって…… そして俺は……イリヤには責任を取って伴侶になってもらう。 そう、この時決めた。 それが愛か恋かはまだ知らない、だってこれは俺の初恋だったから…

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