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大悪魔ベリアル
「…あ、貴方は…」
絞り出した声は、酷く掠れていた。
「我が名は、大悪魔ベリアル」
「……悪魔…ベリアル……」
その名前に愕然とする。
ベリアルといえば、魔界の中で最も恐ろしい三大悪魔の一人。
今更ながら、自分がとんでもない所へ迷い込んでしまったのだと、ようやく理解した。
「貴様の様な下級の天使でも、私の名前位は聞いた事がある様ですね」
「あ…、そんな…」
これ程までに美しい御方が、まさか悪魔だなんて…。
悪魔は皆、恐ろしい容姿をしているものだと思っていた。
それが、どうだろう。
目の前の悪魔は、まるでこの世の者とは思えない程に美しい。
「私の庭に無断で入り込んで、生きて此処を出た者はいません。
何、心配しなくても、貴方ももうじき殺してあげますから。
すぐに痛みも恐怖も感じなくなりますよ」
優しい声で歌でも歌うかの様に軽やかに囁かれ、恐ろしい事を言われているというのに、何故だか心のどこかが誘惑をされている様な、何ともいえない心地良さを感じる。
悪魔に惑わされるという事は、こういう事を言うのかもしれない。
目の前の悪魔は、美しい顔で優しく微笑んだ。
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