14 / 146
口吻
舌を絡め取られ、誘い出され、吸われ、訳も分からず、唇を貪られる。
唇が離れる頃には、すっかり息は乱れていた。
自分が知識として知っている口吻とはまるで違う。
舌先がジン…と痺れている。
よく分からないけれど、何故だかいけない事をしてしまった様な罪悪感が湧き上がってくる。
そもそも、唇を重ね合わせるのだって、愛し合う者同士の行為なのに、ベリアル様が自分に好意を持っているとは思えない。
もしかしたら、魔界では違うのだろうかとぐるぐると考える。
そして、離れたベリアル様の唇から
「下手くそ…」
と、呆れた様な言葉が漏れ、見下す様な視線がこちらに向けられて、体が竦む。
「ミカエルに寵愛されていたのなら、男の喜ばせ方位熟知しているでしょう?それとも、私への反抗のつもりですか?」
苛立っている様子のベリアル様が、こちらを睨みつける。
きっと何か失敗をしてしまったんだ。
そう思い至り、慌てて頭を下げる。
「も、申し訳ございません…!反抗なんて、とんでもございません…!その、この様な事は初めてで…、大変申し上げにくいのですが…、わ、私が無知なばかりに、ベリアル様が仰っている事の意味が、その、分かりかねます…」
しどろもどろになりつつ伝えれば、ベリアル様の眉間の皺がより一層深くなる。
「ミカエルとのセックスの時に奉仕しているでしょう?」
「せ…?」
あまりの言葉に、一瞬思考が停止する。
「ととととんでもございません!!み、ミカエル様とその様な事…!」
「はぁ?では、ミカエルの屋敷にいて何をしているというのです?」
「その…、御掃除や御洗濯を…。身の回りの御世話をさせて頂いております」
「…………」
「あ、あの…」
また、自分がおかしな事を言ってしまったのだろうか。
ベリアル様の機嫌を損ねてしまったのだろうかと、狼狽える。
ともだちにシェアしよう!